いま人気の株を「一目で見分ける」ことができるたったひとつの方法(後編)

岡田禎子 2021/01/30

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出来高は「投資家心理」を映す鏡

誰だって「他の人が買っている株」「みんながいま注目している銘柄」は気になるでしょう。それを一目で知ることができるのが「出来高売買高)」です。

株式取引では、売り手が売りたい株数と希望価格、買い手が買いたい株数と希望価格とが合致することで取引が成立します。この成立した取引の数を表したのが出来高です。売り手と買い手の間で「500株を1,000円で売買」という取引が成立したとすると、その出来高は「500株」となります。

たとえば、2021年1月28日の東京証券取引所全体の出来高は24億9235万6000株。この日、最も出来高の大きかった三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>では、6221万1900株が売買されました。

出来高から「人気急上昇」の銘柄を選ぶ

出来高は日々増減を繰り返していますが、ある日突然、急に増えることがあります。これは、何らかの理由で取引が活発化したことを意味しています。その銘柄に一気に投資家たちが集まってきた、ということです。

さらに、こうした出来高の急増からは「投資家心理」を読み解くこともできます。

話題になって注目が集まり、どんどん取引が成立するようになることで、より多くの人が集まってきて、もっと高い値段での売買がされるようになり、それを見た人がさらに高値の取引をめがけて集まってくる……こうして、出来高急増とともに株価が押し上げられていくのです。

出来高は、株式市場における「人気度」と「投資家心理」を測ることのできる重要な指標であり、出来高の急増は、相場のエネルギーが高まって「いずれ株価が大きく動き出すシグナル」と言えます。

出来高が急増する2つの理由

出来高をうまく活用するには「出来高が急激に増えたとき」に注目する必要があります。

でも、そもそもなぜ出来高は急増するのでしょうか? それまでさほど注目を浴びていなかった銘柄が、いきなり株式市場で大きな人気を集め、活発に取引されるようになる背景には、投資家たちを売買へ駆り立てる「何らかの理由」があるはずです。

その理由は、大きく次の2つが考えられます。

  • 大きな材料が出た
  • 「そろそろ株価が動き出すのでは?」とみんなが思った

大きな材料とは、サプライズの決算発表や、企業買収や業務提携などの大型の経営施策、自社株買いや配当金の増額、株主優待といった株主還元策などが挙げられます。ひとたびこれらの情報が流れると、それが大きな材料となって投資家たちの注目を一斉に集め、出来高が増加します。

〈参考記事〉株価に影響を与える「材料」にはどんなものがあるのか?

また、長い間、株価が同じような価格帯にとどまっている銘柄では、多くの投資家が「そろそろ動くのでは?」と思うようになるタイミングというものもあります。

たとえば、「決算が良さそう」「何かIR情報(リリース)が出そう」という推測が広がったとき、あるいは、テクニカル分析によって株価チャート上に何らかのサイン(トレンドの転換点など)が出たとき、または、過去の経験則という場合もあります。

こうした材料は、通常であれば大きな動きにならないこともあります。しかし、長く株価が停滞しているような銘柄においては、「これがきっかけで大きく動くのでは」「今度こそ上がるのでは」といった投資家たちの思いが膨らんで、出来高を大きく押し上げることがあるのです。

逆に言えば、出来高が急増した場面というのは、普段よりも多くの投資家が「そろそろでしょ」と思った瞬間だということにもなります。そういう目でチャートを見てみると、大きく飛び出した出来高の棒グラフから、そこに群がる投資家たちの雄叫びが聞こえてくるかもしれません。

話題の銘柄に見る、出来高と投資家の注目

出来高の急増は、何らかのきっかけで投資家たちがその銘柄に群がったことを示しています。そして、その原動力である「材料」とは何なのかを知れば、その人気が短命で終わってしまうものなのか、それとも、長く続いていくものなのかまで把握できるようになります。

2020年に実際に出来高が急増した銘柄の場合で見てみましょう。

・ブイキューブ<3681>

これは、ビデオ会議サービスを運営するブイキューブ<3681>の2020年の株価チャートです。8月から出来高が目立って増えていますよね。まさに、投資家の間で人気度が高まった証拠です。さらにその後、株価が大きく上昇している点にも注目です。

では、この出来高急増+株価上昇の「材料」は何だったのでしょうか?

2020年8月末、同業種でビデオ会議サービス「Zoom」を運営する米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ<ZM>の決算発表を控え、「コロナ禍でビデオ会議が急増した恩恵で好決算が出るだろう→つられてブイキューブの株価も上がるのでは」と連想した投資家が買い進めて出来高が急増しました。

そして実際に、ズーム社は、売上高が前年同期比で4.6倍という超のつく好決算を発表し、ブイキューブの株価も急騰したのです。

(参照)Zoom、5~7月の売上高4.6倍 ビデオ会議が定着|日本経済新聞

その後も、8月以前の出来高と見比べると相対的に棒グラフが高くなっており、好決算という材料に端を発した人気が継続していることが見て取れます。

出来高急増=株価上昇、とは限らない

取引が増えて出来高が大きく伸びたということは、「その株が買われている」ということですから、当然、株価は上がっていくもの……と思ってしまうかもしれません。しかし残念ながら、必ずしもそうとは限らないのです。

株価を動かす「材料」には良いものと悪いものがあります。悪材料が出た場合には、その株を売りたい人が圧倒的に多くなるために、どんなに取引が活発に行われて出来高が急増しても、株価はどんどん急落していく、ということもあります。2020年の実際の例で見てみましょう。

・ネットワンシステムズ<7518>

システム構築大手のネットワンシステムズ<7518>は人気テーマ「5G」の代表的な銘柄ですが、2020年1月、架空取引の疑いの報道が出たことで、まさに「投げ売り」という表現がふさわしい状態となります。1月27日にはストップ安となり、前年来安値を更新しました。

(参照)ネットワンが一時ストップ安 「東芝子会社巡る架空取引を主導」と伝わる|日本経済新聞

閉店間際のデパ地下の惣菜コーナーでは、「もってけ泥棒」とばかりの値引き合戦が始まります。すると、それを狙っていた人々が殺到して、売り場は活況に。あれと同じです。このように、株価の底値で出来高がさらに増えることを「セリングクライマックス」といいます。

しかし、上のチャートをよく見ていただくと、急落した後、株価が反転していることがわかります。出来高が急増して下がるところまで下がった株価が、底をついて上昇に転じています。このとき、出来高もまた急増しているのです。

投げ売りされている銘柄に投資家が群がると、出来高が急増します。すると、それを見た投資家が、我も我もとさらに殺到します。デパ地下の惣菜なら、一度値下げされた後に値上げされることはまずありませんが、株式の場合はやがて需給のバランスが変わって、株価は再び上昇を始めるのです。

このように出来高を伴って株価が急落した場面では、投げ売りによって下がりすぎた反動で、株価が反転する可能性が高まるのです。一時的に高まった人気度は、あくまでも投げ売り+それに投資家が群がった結果にすぎず、出来高はまた元の水準に戻っています。

まずは人気銘柄を手がけよう

このように出来高が急増した場面の裏側を知ることで、投資家たちが何に注目したのか、そこにどんな期待や失望を抱いて売買に向かっていったのかを理解することができます。それによって、大きな人気を集めている銘柄や、息の長い人気を獲得した銘柄を見つけることができるのです。

その一方で、こんな疑問を抱いている人もいるかもしれません。「人気銘柄を手がけるよりも、不人気な銘柄を安く買ったほうが儲かるのでは?」と。株を始めたばかりの頃は、「(損をしてもいいように)なるべく安い株を!」という意識から、あまり人気のない銘柄を買ってしまう人もいるようです。

でも、ちょっと考えてみてください。ここで言う「人気銘柄」とは出来高が大きな銘柄、つまり、取引が活発に行われている銘柄です。それに対して「不人気銘柄」は、あまり取引が行われていない銘柄ということ。

そして、どんなときも忘れてはならないのが、株式投資は相対取引だということです。売りたい人と買いたい人が出会って、両者の希望が合致してはじめて取引は成立します。

〈参考記事〉初心者が知らない「株価が上がる」たったひとつの理由

人気銘柄は売買が活発に行われているため、自分の希望と合致する相手を見つけやすく、取引が成立しやすい環境です。一方、不人気な銘柄は、ほとんど参加者のいないオークションと同じで、なかなか取引が成立しなかったり、時には、相手の都合で価格を歪められたりすることもあります。

こうしたリスクを回避するという観点からも、特に初心者の場合は、人気銘柄を手がけるほうが安全なのです。

「誰も知らない銘柄を密かに発見して、テンバガー(株価が10倍になること)を狙うぞー!」と意気込んでいる人もたまにいらっしゃいますが、誰も知らない銘柄は、そもそも売り手を見つけるのが難しい、ということをぜひ覚えておいてください。

取引が活発な銘柄は、出来高のランキングを見れば一目瞭然です。まずは手慣らしにそれらの銘柄を手がけて、日々動いていく株価の向こう側にいる無数の投資家たちの心理を思い描きながら、少しずつ腕を上げていっていただければと思います。

【おすすめ】なぜ明日上がる銘柄がわかるのか 元手30万円を数億円の利益に変えたプロの銘柄選び

[執筆者]岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP) 株窓アワード2020
 
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