テクニカル分析とファンダメンタルズ分析、結局どっちが最強なのか?

山本 勧
2019年5月21日 8時00分

テクニカル分析 vs. ファンダメンタルズ分析

投資判断を下すための分析方法に「テクニカル分析」と「ファンダメンタルズ分析」があります。さまざまな意見があるなかで、いったいどちらが投資判断の基準として優れているのでしょうか? 両者の基本を抑え、最終的にどちらがいいのかについて考えてみたいと思います。

テクニカル分析とは?

テクニカル分析とは、株式の値動きや相場の先行きをデータや経験則から分析・予測する手法です。代表的なものとしてはチャート分析があります

テクニカル分析のメリット

テクニカル分析のメリットのひとつは、短期的な変動の予測に役立つことです。チャートの形状やテクニカル指標の値をもとに、短期的なトレードするための客観的な判断に役立てることができます

株式投資では、どうしても主観が邪魔をして、冷静な判断ができないことがあります。「この会社の社長は人柄がよく、きっと株価も上がるはずだ」と思ったとしても、チャートがあきらかに買う時期でない形状をしていれば、一旦立ち止まって冷静に考えることができます。

「社長がいい人だから」というのは、実際の株価の動きに対しては何ら根拠のない主観に過ぎません。そういうときに、テクニカル分析は客観的な評価を得る手掛かりとなります。

反対に、チャートの見方を知らないと、勘などの当てずっぽうに頼ることになりがちです。それでは、一度失敗しても、理由がわからないままで次に進むことになり、また同じ失敗を繰り返してしまうかもしれません。

長期的な予測は難しくとも、短期的な変動の予測がある程度できれば、勝率を少しでも上げることができます。

・機関投資家と同じ土俵に立つことも可能

テクニカル分析のもうひとつのメリットは、個人投資家と機関投資家との情報の取得スピード差が小さくなることです

機関投資家は、個人投資家に比べて会社の財務情報を掴むスピードが格段に早いです。様々な情報源をもっており、会社の決算内容などの情報はいち早く手に入れます。

一方で、個人投資家に入ってくる情報はどうしても一歩遅れたものとなり、その意味で、機関投資家よりも個人投資家は不利と言えるでしょう。

しかし、テクニカル分析では、株価というデータをもとにしているため、個人投資家も機関投資家と同じ情報を、同じタイミングで得ていることになります。

株価は誰もがリアルタイムの見ることのできる共通データですから、分足でのローソクチャートを確認していけば、機関投資家と同じ土俵に立つことができます。

テクニカル分析のデメリット

テクニカル分析のデメリットとして挙げられるのは、心理的なコントロール力が必要になることです

テクニカル分析では短期トレードになることが多く、仕掛け後の値動きに動揺して、精神が乱されてしまうかもしれません。特に、デイトレーダーのように日に何度も売り買いをするには、相応の精神力が必要です。

さらに、自分の思った通りの値動きにならない場合は迷わず損切する必要もあり、柔軟な姿勢も求められます。

テクニカル分析に絶対はありません。チャートの有効性についても絶対というものはなく、また、テクニカル分析の解説書もうまくいった例を載せているだけで、そのパターンが100%当てはまるというわけではありません。

テクニカル分析を活用するのであれば、自分自身で繰り返し経験を積み、何度も検証する必要があります。

テクニカル分析が向いているのはこんな人

このように見てみると、テクニカル分析が向いているのは、辛抱強く何度でも検証することができ、失敗しても落ち込まない、あるいは、それを失敗だと思わない人ではないでしょうか。

心理的なコントロールができないと、テクニカル分析で勝ち続けることは難しいです。たとえ失敗しても淡々と損切りを行い、なぜ失敗したかを冷静に分析・検証できるドライスティックな人ほど、テクニカル分析が合っていると言えそうです。

ファンダメンタルズ分析とは?

ファンダメンタルズ分析とは、財務状況や業績をもとに企業の本質的価値と市場価格とのギャップを分析する手法です。PERPBRROEなどが代表的な指標として使われます

企業の本来あるべき価格がいくらなのかを割り出し、現在の株価がそれよりも安ければ割安、高ければ割高と考えます。そのうえで、基本的には割安のときに購入し、将来的に企業価値に見合う価格まで上昇するのを狙う、というのがファンダメンタルズ分析の考え方です。

ファンダメンタルズ分析のメリット

ファンダメンタルズ分析のメリットは、短期的なトレンドに惑わされずに判断ができるので、心のゆとりをもつことができる点です

テクニカル分析のように短期的なトレンドを中心にすると、先ほど述べたように、精神のコントロールが求められます。しかしファンダメンタルズ分析では、長期投資になることが多いため、短期的に株価が下がっても、いずれまた上がるまで「待つ」ことができます。

また、どんな企業であれ、時には不祥事や大きな事故に見舞われることで、株価が大きく下がる局面も訪れます。もちろん全ての企業がそうなるわけではありませんが、そのような時こそ、ファンダメンタルズでは買いのチャンスです。

高い価値があるはずの企業の株価が、事故や国の政策などで大きく低下していれば、割安の状態で購入することができます。そして、いずれ企業本来の価値に近づいた時に売却をすれば、その差額が利益となります。

ファンダメンタルズ分析のデメリット

ファンダメンタルズ分析のデメリットは、個人投資家と機関投資家との情報の取得スピード差が大きいことです。割安と思って購入した株が、情報の取得が遅かったせいで、実は割高で掴んでしまった……という失敗になる可能性があります。

また、チャートを見ればある程度わかったことが、ファンダメンタルズ分析に集中してしまったせいで状況を見落とし、損失を出してしまう可能性もあります。

もうひとつのデメリットは、ファンダメンタルズ分析は長期投資になることが多く、利益を上げるには時間がかかるということです。一日でも早く利益を上げようと思っている場合には、なかなか難しいです。

ファンダメンタルズ分析が向いているのはこんな人

テクニカル分析のように精神力が求められるものと違い、じっくり構えて投資をすることが好きな人に向いています。特に、一度購入した後も何年も待つことが可能な人は、ファンダメンタルズ分析がいいのではないでしょうか。

また、何度も売買をすることが少ないので、時間のない会社員などにもおすすめです。

どちらがより投資の際に使えるか?

テクニカル分析もファンダメンタルズ分析も、どちらか一方に頼りすぎると、思っている以上の成果を残すことは難しいでしょう。例えばテクニカル分析だけに頼ると、赤字続きの倒産寸前、もしくは上場廃止の可能性の高い企業に投資をしてしまう可能性があります。

また、それぞれにはふさわしい投資スタイルがあります。テクニカル分析なら短期トレード、ファンダメンタルズ分析なら長期投資に活用するのが、より適切な使い方だと言えます。

どちらがより優れた分析なのかと言えば、それぞれメリット・デメリットがあるので決めることはできない、というのが結論です。特徴を理解したうえで、メリットを活かし、デメリットを補いながら活用するのが得策ではないでしょうか。

株の世界は何が起こるかわからない

株において「絶対」はありません。どんなに優れた投資家・トレーダーでも必ず失敗を経験しています。何が起こるかわからないからこそ柔軟に対応し、様々なテクニックや手法を使いながら、自分に最も合ったスタイルを確立していくことが大切です。

[執筆者]山本 勧
山本 勧
[やまもと・すすむ]不動産投資会社、会計事務所を経て独立。ファイナンシャル・プランナーとして、単にプランを作るだけでなく、具体的にどう生活すればいいかといったアドバイスを積極的に行う。個人投資家としては、生活を豊かにするため投資を実践。「お金がお金を生むシステム」をいかに早く作るかが生活を楽にする一番の近道と考え、余剰資金は基本的に投資に回している。ファイナンシャル・プランナー(AFP)、宅地建物取引主任士。ホームページ:てんせんまる
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