ダウやナスダックより伸びた小型株 知っておきたい「ラッセル指数」とは
《2020年末からの世界的な株価上昇において、アメリカの株価指数の中でも特に大きな上昇を見せているのがラッセル指数です。日本ではそれほど知名度がありませんが、このアメリカの代表的な小型株指数をフォローすることで、アメリカ株投資の〝打ち手〟を増やすことができます》
ダウやナスダックよりも伸びた小型株指数
2021年1月21日、アメリカでバイデン新大統領が誕生しました。様々な物議を醸したトランプ政権は、株価が伸びた4年間でもありました。そのトランプ政権のフィナーレを飾るように、2020年11月から株式市場は世界的に上昇して、ダウ平均株価は節目の3万ドルを上回り、過去最高値を更新しています。
ただし、アメリカ株式市場の各指数を見ると、やや異なる姿も見られます。ダウ平均株価とS&P500は11月初旬の急騰後の上昇は緩やかで、ナスダック総合指数は11月半ば以降も早いペースで上昇。その一方で、ナスダック指数以上の上昇を見せているのがラッセル指数です。
ラッセル指数は11月初旬の1,500ポイント台半ばから、2021年3月には2,300ポイント台に上昇しており、4カ月で50%を超える上昇となりました。
ラッセル指数とは?
ラッセル指数の正式名称は「ラッセル2000(Russell 2000 Index)」で、米ラッセルインベストメント社が1984年に開発した、アメリカの代表的な小型株指数です。ニューヨーク証券取引所やナスダックに上昇している銘柄のうち、時価総額が上位1001位〜3000位の2,000銘柄で構成されています。
日本での知名度は高くありませんが、ほとんどのアメリカ小型株ファンドがこのラッセル指数をベンチマークとして採用しており、アメリカでは広く知られる存在です。
トランプ政権下の株価上昇はGAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)などのハイテク銘柄が主導しました。その結果、ハイテク銘柄中心のナスダック指数は急騰しましたが、時価総額が低く、バリュー株中心のラッセル指数は出遅れを余儀なくされています。
実際、ラッセル指数が2018年8月の1,700ポイント台の高値を更新したのは2020年11月の急騰後です。他の指数はコロナショック前に高値を更新しており、出遅れ感は否めません。
アメリカ市場を理解する4つの指数
アメリカの株価指数をさっくりと分けると、次のような分類ができます。
- ダウ平均株価=一部ハイテク銘柄も入った大型株指数
- S&P500=アメリカの大型株全体の指数
- ナスダック総合指数=ハイテク銘柄の指数
- ラッセル指数=中小型株の指数
トランプ政権下の株式市場の上昇はGAFAに代表されるハイテク銘柄中心の上昇であり、アメリカの株価指数の中ではナスダック指数が最も恩恵を受けました。極論すれば、トランプ政権下ではナスダック総合指数のインデックス投資だけで株価上昇の恩恵を享受できたといえます。
しかし、2020年11月以降はラッセル指数主体の株価上昇となっています。
今後のアメリカはバリュー株が来る?
株式市場は様々なタイミングやサイクルで上昇と下落を繰り返します。その観点では、バイデン新政権が発足したこのタイミングから、ダウ、S&P、ナスダックに加えて、これまで出遅れていたラッセル指数もフォローすることで、今後のアメリカ株投資のパフォーマンス向上につなげられるかもしれません。
というのも、これまではグロース株(成長株)メインのナスダック総合指数が大きく上昇してきましたが、今後はバリュー株(割安株)メインのラッセル指数の上昇が期待できるかもしれないからです。
同じくラッセル社が算出する「ラッセル1000グロース指数」と「ラッセル1000バリュー指数」で比較してみても、2020年のアメリカのバリュー株がグロース株に対して出遅れていることは明らかであり、過去の両者の関係からすると、今後はバリュー株の出遅れ解消へと向かう可能性があります。
ただ、2000年のITバブル崩壊や2008年のリーマンショックといった金融ショックが発生すると、グロース株の下落によってバリュー株の出遅れ解消がなされるケースもあるので、その点の留意は必要です。
ラッセル指数が日本株に与える影響
日本では2020年春のコロナショック以降、マザーズ指数の上昇が話題となりました。ただ、10月までは上昇が続きましたが、年末の上昇相場には乗れず、その後は横ばいで推移しています。
そんなマザーズ指数とラッセル指数は、どちらも小型株中心であることから類似のイメージもありますが、足元の値動きはそれほど相関していません。
それに対して、ラッセル指数に相関する値動きを見せているのが日経平均株価です。ラッセル指数と日経平均株価はともに、2018年の高値を2020年11月の急騰で更新しており、類似した値動きを見せています。
ラッセル指数と日経平均株価の値動きの相関係数(1.0に近いほど値動きが近い)を見ると、期間40日(2カ月に相当)では、2020年は7月から11月半ばは0.8以下でさほど相関は見られませんでしたが、11月半ば以降は0.8を超える状態が続いており、値動きに相関が見られます。
なお、両者は逆相関(相関係数は−1.0で真逆の値動きとなる)の関係から相関関係に戻る際に大きなトレンドが発生する傾向があり、2020年10月以降の逆相関から相関への復帰は、このパターンに該当しています。
日経平均株価の採用銘柄には、アメリカのGAFAのようなグロース株(成長株)は少なく、PBR(株価純資産倍率)も1.34倍しかありません(2021年4月6日時点)。PBRが1倍を切ると割安と見なされるので、日経平均株価はバリュー株(割安株)指数ともいえるのです。
その意味でも、アメリカのバリュー株指数であるラッセル指数と日経平均株価との相関は高いと考えらます。
もっとアメリカ株を理解する
トランプ政権下での株式市場の上昇を受け、個別のアメリカ株やアメリカ株価指数への投資が個人投資家の間にも広まっています。その中で、日本ではそれほど知られてないラッセル指数を押さえておくことは、ダウやナスダックだけでは見えてこないアメリカ株の動きが、さらによくわかるようになります。
ラッセル指数は他のアメリカ株価指数の上昇に対しては出遅れの一面がありますが、現在はそれまでの出遅れを取り戻すように上昇しています。
アメリカ株といえば大型株にばかり目が向きがちですが、中小型のバリュー株も含めた数多の株式によって相場は形成されています。また、そうした銘柄群の動きを示す指数も各種ありますので、もっと視野を広げて、アメリカ株への理解を深めてみるのも面白いのではないでしょうか。