突然の株価乱高下… 慌てないために投資家が知っておくべき「恐怖指数」とは

山下耕太郎
2024年6月6日 12時00分

近年、株式市場ではボラティリティ(価格変動性)の高い展開が続いています。2024年4月には、日経平均ボラティリティ・インデックス(日経平均VI)が約3か月ぶりの高水準を記録し、投資家の間で不安心理が広がりました。

ボラティリティの基本知識から上昇局面で投資家が注意すべきポイントまでを解説します。

ボラティリティとは

ボラティリティとは、金融商品の価格変動の大きさを表す指標で、一定期間における価格変動率を示します。ボラティリティが高いほど価格変動が大きく、低いほど価格変動が小さいことを意味します。

ボラティリティには、実際の価格変動から算出される「ヒストリカル・ボラティリティ」と、オプション価格から算出される「インプライド・ボラティリティ」の2種類があります。前者が過去のデータに基づくのに対し、後者は将来の予想変動率を指します。

ボラティリティは価格変動の大きさを表しますが、上昇または下落の方向は示しません。また、ボラティリティが高い局面では大きな利益を狙えるチャンスがある一方で、リスクも高くなります。

ボラティリティは相場環境によって変化し、景気の先行きに対する不透明感が強まるとボラティリティが上昇する傾向があります。

《参考記事》投資家たちの不安心理を測る、2つのボラティリティの活用法

VIX指数と日経平均VI:投資家心理を読み解く重要指標

2種類のボラティリティのうち投資家の関心が高いのは、当然、将来の変動率を示すインプライド・ボラティリティでしょう。このボラティリティを示す代表的な指数として、VIX指数と日経平均ボラティリティー・インデックス(日経平均VI)があります。

VIX指数は、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、アメリカの代表的な株価指数であるS&P500種株価指数のオプション価格から算出しています。一方の日経VIは、日本経済新聞社が、日経平均株価のオプション価格から算出しています。

これらの指数は投資家心理を反映していることから、「恐怖指数」とも呼ばれます。指数が上昇すると、投資家が先行きの相場変動リスクを警戒し、リスク回避姿勢を強めていると考えられます。例えば、VIXが20を超えると不安心理が高まっていると解釈されます。

過去を振り返ると、2008年の金融危機時にVIXが終値で80超の高水準に達したほか、コロナショック時の2020年3月には日経平均VIが50近くまで急上昇しました。

このように、株式市場の急落局面では、これらのボラティリティ指数が大きく上昇する傾向にあります。ボラティリティ指数は投資家のリスク許容度を測る重要なバロメーターであり、市場の変動性を予測する上で重要視されます。

なお、VIX指数はCBOEのホームページで、また、日経VIは日経の指数公式サイト「日経平均プロフィル」で、それぞれ確認できます。

《参考記事》暴落を予想できる? 集団心理からなる「恐怖指数」が教えてくれるもの

2024年4月、日経平均VIが急上昇した3つの理由

2024年4月、日経平均株価の予想変動率を示す日経VIが、一時25を超える水準まで急上昇しました。

日経VIの上昇は投資家のリスク回避姿勢の強まりを示唆しており、今回の上昇には3つの要因が背景にあったとみられます。

1. 中東情勢の緊迫化

イスラエルとイランの対立激化を受け、中東情勢が緊迫化しました。イスラエルがイランの拠点を攻撃したことで、イランが報復攻撃に踏み切る可能性が高まりました。地政学的リスクの高まりを警戒し、投資家心理が悪化しています。原油価格の上昇も懸念材料となりました。

2. アメリカの利下げ期待の後退

米FRB当局者から利下げを慎重にする姿勢が示されたことで、利下げへの期待が後退しました。これまで株高を支えてきた金融緩和期待が剥落したことで、投資家心理が冷え込みました。米長期金利の上昇も株式市場の重石となりました。

3. 半導体需要の鈍化懸念

半導体需要の先行き不透明感から、半導体関連株が大きく売られました。日経平均株価を牽引してきた半導体株の下落が、相場全体の下押し圧力となりました。需要鈍化懸念から業績悪化を警戒する見方も広がっています。

以上の3つの要因が重なったことで、日経平均VIは急上昇しました。今後も、中東情勢の行方やアメリカの金融政策、企業業績などが注目されます。日経VIの動向からも投資家心理の変化を見極めていく必要がありそうです。

投資家が注意すべき3つのポイント

市場のボラティリティが高まると、投資家は不安になりがちです。しかし、こうした局面でこそ冷静な判断力が求められます。ボラティリティの高い時期を乗り切るために、次の点を肝に銘じておきましょう。

長期的な視点を忘れない

ボラティリティの上昇は一時的な現象であることが多いです。目先の値動きに一喜一憂するのではなく、自身の投資方針を守ることが重要です。特に、長期的な資産形成を目指して投資をしているのであれば、なおさら長期的な視点を忘れないようにするべきです。

なお、株式のように値動きの激しい金融資産は、長期で保有することでボラティリティを平準化できます。

分散投資を怠らない

特定の資産や銘柄に偏重していると、ボラティリティ上昇時のリスクが高まります。株式、債券、不動産、金など幅広い資産に分散投資することで、ポートフォリオ全体のボラティリティを抑制しましょう。株式などの場合、地域や業種の分散も有効です。

割安な投資機会を冷静に見極める

ボラティリティの上昇局面では、投資家心理の悪化から割安な水準まで値下がりする銘柄が出てくることがあります。しかし、むやみに飛びつくのは禁物。投資リスクとリターンを吟味し、ファンダメンタルズ分析に基づいて冷静に判断するようにしましょう。

ボラティリティは投資家にとって脅威ですが、上手く付き合えば味方にもなります。局面に流されることなく、自身の投資戦略を貫く姿勢が何より大切です。

ボラティリティを味方につけるには

ボラティリティの動向は、VIX指数や日経平均VIを参考にしつつ、グローバルな政治・経済情勢にも目を向けることが重要です。

ボラティリティは諸刃の剣です。上昇局面では株価が大きく下落するリスクがある一方、割安になった銘柄を買うチャンスでもあります。ボラティリティの特性を理解し、自身のリスク許容度に合った投資を心がけることが、市場の荒波を乗り越えるカギとなるでしょう。

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[執筆者]山下耕太郎
山下耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌
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