年末年始にオススメの投資本 「勝てる力」が身につく5冊 

岡田禎子
2018年12月28日 8時00分

世に投資本は星の数ほどありますが、やはり現場でしっかりと実績を残している“名人”に直接教わるのが一番です。そこで、ピーター・リンチ、ウォーレン・バフェットなど世界が誇る著名投資家の本を集めてみました。

彼らはどのような哲学やテクニックでマーケットにのぞんでいるか。本の紹介だけでなく、株に欠かせない5項目について、それぞれの投資家の理論をご紹介します。「勝てる力」をぜひ吸収してください。

アマの知恵でプロを出し抜く

『ピーター・リンチの株で勝つ——アマの知恵でプロを出し抜け』
ピーター・リンチ/ジョン・ロスチャイルド 著

ピーターリンチは1990年に引退するまでの13年間で、マゼラン・ファンドを2,000万ドルから140億ドルへと世界最大規模のファンドに育て上げたアメリカを代表する投資家です。

そのリンチ本人が「個人投資家に基本的な情報と勇気を与えるために書いた」という本書は、「投資を始める前に」「有望株の探し方」「長期的な視野」の3部からなり、20年以上にわたって株に携わってきた彼のノウハウを惜しげもなく開陳しています。

Lesson1:銘柄選び 〜リンチ流「10倍株」の探し方〜

10倍株テンバガー)」とは、買値から5倍、10倍と株価が大化け株する銘柄のことです。リンチは「10倍株は日常生活の中で探せ」といいます。例として、ダンキン・ドーナツやメキシコ料理のタコ・ベル、ヘインズなどの事例をあげています。

毎日好きなコーヒーを飲む、旅行先で美味しいメキシコ料理を食べる、妻がヘインズ社の容器入りパンストを買ってきた……など、実際に店舗に行って商品をテストすることは、ウォール街のアナリストのファンダメンタルな調査と同じなのです。

むしろ、消費の最前線にいる個人投資家のほうがウォール街が気づくよりずっと前にすごい銘柄を見つけることができる、とリンチは説きます。

テンバガー(10倍株)を見つけるには、まず自分の家から始めること ——ピーター・リンチ

高く買って、より高値で売り抜ける

『ミネルヴィニの成長株投資法——高い先導株を買い、より高値で売り抜けろ』
マーク・ミネルヴィニ 著

マーク・ミネルヴィニは、USインべスティング・チャンピオンシップで優勝経験を持つ、生きる伝説的トレーダーです。その彼が編み出した成長株投資法が「SEPAトレード投資法」。本書では、この成長株投資法を、数多くのケーススタディで解説しています。

Lesson2:ファンダメンタルズ分析 〜注目すべき「第2ステージ」〜

ミネルヴィニは株価のサイクルには、次の4つのステージがあるといいます。

  • 底固め局面(第1ステージ)
  • 上昇局面(第2ステージ) 
  • 天井圏(第3ステージ) 
  • 下落局面(第4ステージ) 

それぞれのステージは利益に結びついていて、冴えない業績(第1)からポジティブサプライズや利益成長の加速があり(第2)、やがてその成長が減速し(第3)、失望売りにつながる(第4)……といった具合です。

投資家が注目すべきは第2ステージ。なぜなら、「株式市場で投資家に最大級の利益をもたらした銘柄の九割以上は、株価の大幅な上昇前かその間に利益が加速していたから」です。

100円ショップで超一流の商品は見つからない ——マーク・ミネルヴィニ

「投資バカ」になろう

『投資バカの思考法』
藤野英人 著

著者の藤野氏は2003年にレオス・キャピタルワークスを創業した、日本を代表する投資家のひとりです。その藤野氏本人が「これまで磨き上げてきた投資、つまり本職の仕事の手の内を全て明かした」という本書。

この激動の時代に投資に勝ち続けるには、7つの未来を読む力が必要だと明かし、人生観にまで踏み込んで投資哲学を語っています。

Lesson3:損切り 〜心を痛めずに株を売る極意〜

保有銘柄の株価が下がってしまったとき、損を覚悟で株を売ることを「損切り」といい、株式投資する上で最も重要ともいわれています(「ロスカット」とも)。

多くの人は損をすると心が痛む、だから保有株が下がっても売却することがなかなかできません。ここで大切なのは「買った時の値段を忘れること」だと藤野氏はいいます。

例えば3年前に100万円で投資した株が、30万円まで値下がりしたとします。「あの時100万で買ったのに」と買値を覚えていると、人は売却ができません。70万円の損が確定してしまうことに心が痛むからです。

そうではなくて、「手元に30万円あったとしたら、私はこの株を買うのだろうか?」と自問するのです。買値を忘れ、この銘柄を30万円で買う価値があるのだろうかと考え、その価値がなければ即売却すべきだと藤野氏は強く述べます。

幸せにしてくれる人を探している限り幸せにはなれない ——藤野英人

億万長者になりたければ

『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術』
メアリー・バフェット/デビット・クラーク 著

投資の神様ウォーレン・バフェットの銘柄選択術を伝授するために書かれた本書。長年バフィットと生活を共にしてきた著者たちによる、個人投資家向けの実践的な手引書としてまとめられています。

本書はワークシート形式をとっており、ゲームのように繰り返し解くことで、バフィットの銘柄選択の考え方と方法論が身につきます。

Lesson4:ROE 〜バフェット流「収益性」の測り方〜

バフェットは一貫して高いROE自己資本利益率)を上げている企業に投資をしていました。ゼネラルフーズ(ROE16%前後)、コカコーラ(33%)、マクドナルド(18%)など、どれも高ROEをマークしていました。

ROEとは、株主が出資したお金で企業がどれだけ利益を上げるか、という「収益性」を測る指標です。外国人投資家が最も重視している指標といわれます。

ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100

アメリカの過去40年間の平均ROEは12%(本書参考)であり、大企業は株主が出資したお金を毎年12%ずつ増やしたことになります。つまり、企業が毎年安定的に高いROEを出し続けるならば、複利効果で利益が膨らんでいくことを意味しています。

バフェットが関心を持つのは、平均より上のROE15%以上、それも高いほど良いとしています。

年間のROEが15%以上有る限り、四半期の業績を見てうろたえる必要はありません

個人投資家 vs コンピューター

『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』
マイケル・ルイス 著

著者のマイケル・ルイスは、アメリカの投資会社ソロモン・ブラザーズで債券セールスマンとして勤務した経験をもとに、1989年に『ライアーズ・ポーカー』で作家デビュー。その後に発表した『マネー・ボール』はベストセラーとなり、ハリウッドで映画化されました。

そのルイスが、超高速取引HFT)業者の実態を明らかにしたのが本書です。

「株式トレーダーのカツヤマは、先ほどまで画面に出ていた売り注文が、買いボタンを押すと、蜃気楼のように消えてしまうことに気がついた」で物語は始まります。謎解きの面白さと超高速取引(HFT)のからくりが自然と理解できる一冊になっています。

Lesson5:HFT 〜プレデター乱用への警鐘〜

HFTとは「High Frequency Trade」の略で、1秒間に1万近くの株取引を行うこともある、コンピュータープログラムを駆使した「超頻度取引」のことです。超高頻度で何度も売買することで、薄い利ザヤを積み上げていきます。

ルイスは本書で、HFT業者をプレデター(捕獲者)と呼び、HFTが乱用されると一般投資家の利害が阻害され、市場の信頼を損なうと警鐘を鳴らしました。

時は金なり ——ベンジャミン・フランクリン


株で安定した利益を出すには、しっかりとした「自分の投資スタイル」を身につけることが欠かせません。何の制約も受けない個人投資家こそ勝てる時代となった今、これらの名著が来年のスキルアップの一助となれば幸いです。

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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