最も株高・株安になりやすいのは何月? 意外と知らない株式相場のパターンとは【2024年最新版】

岡田禎子
2024年8月13日 9時00分

「儲けるチャンスは一体いつやって来るのか?」

株式投資の世界では「この先」に思いを巡らせることが不可欠ですが、だからと言って、相場の未来は誰にもわかりません。では、どうすればいいのかと言えば、実は、株式相場には年間スケジュールに沿った「アノマリー的なパターン」があるのです。

アノマリー」とは相場における経験則のこと。理論的な根拠がないものも多いのですが、その実、非常によく当たる場合もあり、相場格言として長く言い伝えられているアノマリーも数多くあります。

また、毎年恒例のイベントにあわせた「恒例の値動き」と呼べるパターンも存在します。「麦わら帽子は冬に買え」という相場格言からもわかるように、相場独特のカレンダーを知っていることで〝先回り〟して投資することができるのです。

上昇しやすい1月相場

1月は「上昇しやすい月」として知られています。機関投資家などが年末年始にリスクオフしたポジションを新年にあらためて買いに入る「新年効果」が期待できるほか、個人投資家が年末に節税対策で売却した分の買い戻しが年初に入りやすいためです。

それとともに、1月相場は、その年を占う上で重要な月です。「1月の株価が強いと、一年を通じて好パフォーマンスになる傾向が強い」という高確率のアノマリーがあります。

なお、1月から2月はIPOの閑散期。そのため個人投資家の短期資金は、前年末に上昇した新興株中小型株に向かう傾向にあります。

【1月相場でひとこと】

「1月が強いと、その年は上昇で終わる」

閑散となりやすい2月相場

2月は8月とともに「ニッパチ」と呼ばれ、株式相場でも閑散となりやすい月です。その反面、過去には2016年のチャイナショックや2018年のVIXショック、2020年のコロナショックなどで日本株が急落したのも2月のことで、海外発のニュースに警戒したい月でもあります。

また、1月の新興株祭りから一転して、2月は大型株が選好されやすくなります。これは、短期トレード中心から3月期末決算を意識した動きへと相場の空気が変わるためです。そのため、好決算が予想される銘柄に注目が集まります。

そんな2月相場では、3月期末に向けて配当利回りの高い銘柄人気の株主優待銘柄を先回りしてチェックしたいところ。小売には2月期末決算の企業が多く、配当・優待取りの動きや春節(旧正月)によるアジア旅行客のインバウンド期待によって、小売株が上昇しやすい月でもあります。

【2月相場でひとこと】

「春節大移動に期待」

上下に振れやすい3月相場

よく聞かれる相場格言「節分天井・彼岸底」とは、2月の春節から盛り上がり上がった相場が3月下旬に底をつけることを指します。

ただ、機関投資家や3月期決算企業による決算対策の売りは出やすいものの、配当・優待狙いの買いのほか、企業やファンドのドレッシング買いなども入りやすく、3月は売り買いともに材料豊富で、株価が上下に振れやすい月です。

3月上旬には中国の「全国人民代表大会(全人代)」が開催されます。中国政府の政策運営方針が示され、終了後は株価の変動率が高まる傾向にあります。

【3月の相場格言】

「節分天井・彼岸底」

最も上昇傾向が強い4月相場

4月は名実ともに「新年度相場」の始まり。そして、最も上昇傾向が強い月です。

機関投資家や企業が3月の年度末にかけて決算対策のために売却した株式を買い戻す「4月効果」が追い風となるほか、国内外ファンドのニューマネーが流入しやすい月でもあり、株価が上昇しやすいといわれています。

また、春(3〜4月)は学会シーズン。企業が開発中の新薬や新製品などの情報がメディア等でも取り上げられ、関連銘柄が上昇しやすい傾向にあります。さらに、4年に1度の「統一地方選挙」が実施される年には、選挙関連銘柄が賑わいをみせます。

【4月の相場格言】

「4月効果」

厳しい展開になる5月相場

「5月は売れ(セルインメイ)」──アメリカ市場で有名な相場格言ですが、日本株も同様に、5月は厳しい展開になりやすい月です。

5月は、3月期決算企業の決算発表(通期)が本格化します。決算発表を控えて投資家が買い控えする中、日本企業は通期での業績予想を保守的に出す傾向にあるため、期待の多くが失望に変わり、株価は軟調に推移しやすくなるのです。

ゴールデンウィークの前後では、旅行関連銘柄が注目されやすい傾向にあります。5月後半には、気象庁による夏の長期予想(3か月予報)が発表されますので、猛暑関連銘柄を先回りしてチェックしたいところです。

【5月の相場格言】

「Sell in May」

強い上昇傾向がある6月相場

軟調の5月を抜けると、3月期決算企業の決算発表も一段落し、売られた株式の買い戻しが行われます。好決算の企業は買い・いまひとつの企業は売り、と銘柄の整理が進む月でもあります。その結果、6月相場には強い上昇傾向があります。

ボーナス時期でもあり、個人投資家が新興株を中心に意欲的に取引を行うため、新興市場が活況となりやすい傾向にあります。加えて、月末の配当・優待取りや、7月のETF分配金狙いの買いなどが入り、株価にとっては追い風が吹きます。

また、通常年2回(6月、12月)に開催されるOPECは原油価格に与える影響が大きく、注意が必要です。

【6月の相場格言】

「バスに乗り遅れるな」

閑散としやすい7月相場

夏枯れ相場」に入り閑散としやすい7月。初旬に行われる、機関投資家による配当の再投資やETFの分配金拠出売りなどが一巡すると、相場は新たな材料難となるため積極的な買いが入りづらく、株価は下落する傾向にあります。

その一方で、「サマーラリー」と呼ばれる大きな上昇相場が発生したことも、過去にはあります。サマーラリーとなるか? 夏枯れとなるか? その大きな鍵を握っている要因のひとつは、アメリカ企業の中間決算の内容です。

国内では、3年に一度、参議院選挙が実施され、その年には選挙関連銘柄が人気を集めます。

【7月相場でひとこと】

「サマーラリーか? 夏枯れか? それが問題だ」

下落しやすい8月相場

7月に続き8月も、個人投資家・機関投資家ともに夏季休暇に入ることでポジションを手仕舞う動きが出やすく、出来高も薄い、いわゆる「夏枯れ相場」となります。

さらに8月は為替が円高方向になりやすく、大型株には手を出しにくい中で、個人投資家メインで中小型株が物色されやすい傾向があります。

そして、毎年8月に開催の「ジャクソンホール会議」(米カンザスシティ連邦準備銀行主催の経済シンポジウム)は、株価に大きな影響を与える可能性があるイベントのひとつ。特にFRB議長の発言が注目されます。イベント通過後の株価の動きには注意しましょう。

【8月相場でひとこと】

「円高とジャクソンホールに気をつけよう」

最も下がりやすい9月相場

年間を通じて最も下がりやすい月、それが9月です。

3月期決算企業にとって中間決算の月とあって、企業だけでなく、自身も中間決算を控えた機関投資家の大規模な売りがお彼岸の頃に最も集中しやすく、いわゆる「彼岸底」となりやすい傾向にあります。中間決算前に企業の業績下方修正が出やすいことも、株価が軟調になりやすい要因です。

また、アメリカの金融政策を話し合うFOMC(連邦公開市場委員会)は、9月に大きな政策転換を出す傾向にあり、株価にも多大な影響を与えるため警戒が必要です。

初旬には日経平均株価の構成銘柄の入れ替えが発表され、思惑で株価が動く傾向があります。秋の学会シーズンで「秋のバイオ祭り」が発生しやすい時期でもあり、さらには「東京ゲームショウ」が開催され、年末年始商戦に向けた目玉商品や新作ゲームなどが発表されて投資家の注目を集めます。

【9月相場でひとこと】

「暗黒の9月相場」

株安となりやすい10月相場

10月は株安となりやすい月ですが、「ハロウィン効果」(ハロウィンの時期から6か月は株価が上昇しやすい、というアノマリー)に期待するなら、むしろ仕込み時期ともいえます。3月期決算企業の中間決算発表が本格化し、その内容によっては株価が乱高下しやすい傾向にあります。

初旬に行われる「ノーベル賞」の発表で日本人の名前が上がると、関連銘柄に物色が集まる傾向があります。また、月末には気象庁の冬予報(3か月予報)が発表されますので、厳冬関連銘柄をチェックしておきましょう。

【10月の相場格言】

「ハロウィン効果」

上昇が見られやすい11月相場

3月期決算企業の中間決算発表も一巡して、好業績銘柄を中心に買われるなど株価の上昇が見られやすい11月。

ただ、ここから年末までは節税目的の「タックス・ロス・セリング」(損益通算のため含み損の株を売却すること)が出やすく、大きく株価を下げている銘柄はさらに下落が加速する可能性があります。日本株では、個人投資家が中心的に売買している中小型株で特に注意が必要です。

11月11日は中国の「独身の日」。超大規模なオンラインセールイベントが行われ、関連銘柄に人気が集まります。

【11月相場でひとこと】

「叩き売りに要注意」

一気に買われる12月相場

12月に入ると、「掉尾の一振」と表現されるように、年末に向けた株価上昇の動きが見られます。

前半は個人の節税対策の売りが集中し、株価は下落しやすいものの、中旬のメジャーSQを通過した後は、一年の最後の取引日となる大納会に向けて一気に買われる展開になりやすい傾向にあります。

機関投資家がクリスマス休暇入りとなるため、薄商いの中、個人投資家中心に中小型株を物色する動きが盛んになります。

【12月の相場格言】

とういっしん

カレンダーでチャンスをつかむ

一年を通じて「株価が上がりやすい月」や「下がりやすい月」、株価に影響を与える恒例の重要イベント、さらには、月によって特徴のある機関投資家や個人投資家の動きなど、相場独特のカレンダーを知っておけば、株価の動きを先読みすることもできるようになります。

また、恒例のイベントには必ずセットとなって動く銘柄があります。相場全体としては下がる傾向にある月でも、個別に見れば買われる銘柄はあります。イベントとあわせて関連銘柄を頭に入れておくことで、儲けるチャンスを大いに手に入れてください。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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