銘柄選びには公開情報が役に立つ 新聞を使った新たな銘柄探しとは?

千葉 明
2025年1月21日 16時00分

《東京証券取引所が立つ日本橋・兜町。かつての活気はなくとも、そこは紛れもなく日本の株式取引の中心地だった。兜町を見つめ続けたベテラン記者が綴る【兜町今昔ものがたり】》

公開情報から銘柄を知る

 株式投資関連の記事を書く際に重宝している公開情報がある。

 一つは、当該銘柄の過去10年間の株価動向。日本経済新聞の電子版で調べることができる。脈路なく頭に浮かんだ長瀬産業<8012>で検索してみると、画面には「株価修正:あり」の但し書きがあった。この間に行われた株式分割を反映した株価というわけだ。長瀬産業の場合、修正済みの10年間の株価パフォーマンスは、2.2倍強だった(執筆当時)。

 一つは、IFIS目標平均株価。当該企業の担当アナリストが先々の株価を算出している。アナリストは企業の業績や市場動向を勘案し、株価の上昇・下落を予測、その結果を目標平均株価として収斂する。目標株価が時価を大きく上回っており、会社計画・予想で好決算が見込める場合などは「株価は上値追いになろう」と読み、そうでない場合は真逆になる。

 ……が、そう単純にはいかないケースが決して稀ではない。例えばエクシオグループ<1951>。今期の通期計画は「2.6%増収(6300億円)、5.5%営業増益(360億円)」としっかり。第2四半期の実績は売上高こそ予想比でほぼ横ばいも、営業利益は103億円超。大納会の終値1732円に対し、目標平均株価1825円。

 100円近い差はあるが、これはアナリストたちは担当企業の収益動向を早め早めに読み込むための結果といえよう。ちなみにアナリスト7人のうち2人は「強気」も、5人は「中立」の姿勢を示している。

 一つは、日経連続増配株指数の採用・導入銘柄の活用。新NISA人気でも注目を集めている。手元に一覧表があるが「10年以上増配続いている」かつ「連続上位70以上」がその条件。要件を満たさなくなった時点で差し替えが行われる。昨年末時点で総計70銘柄。

 ここでは例えば、タイヤなど自動車用品の売上高は2位も営業利益率トップのイエローハット<9882>(13期連続増配)に出会う。過去10年間の修正済み株価パフォーマンスは2.2倍強。売上高トップのオートバックスセブンのマイナス24%に差異を示す。「パフォーマンス銘柄の巣」といった感を覚える。

新聞から投資対象を探すには

 ところで、新聞の販売減が深刻、という指摘が続いている。日本ABC協会の発表にあらためて、「新聞の販売減」を痛感した。昨年9月の平均販売部数は全国紙ベースで、こんな状況とか(ABC協会の発表は各社の報告に基づいて行われている)。

  • 1位:読売新聞…………578万2000部(前年同期比43万6732部減)
  • 2位:朝日新聞…………334万9780部(同22万3898部減)
  • 3位:毎日新聞…………142万7361部(同20万2143部減)
  • 4位:日本経済新聞……135万4962部(同6万7692部減)
  • 5位:産経新聞………… 83万9219部(同7万6012部減)

 かつて1000万部を誇っていた読売がいつの間にか600万部を割り込み、1年間で約43万部を減らした。朝日も毎日も1年間で20万部以上を減らしている。このトレンドは今後とも続くと予想されている。日本新聞協会が2021年末で「一般紙が3000万部割れ手前」と発表したが、その最大の背景とされるが「ネットメディア人気」。新聞の定期購読者の半分近くが65歳以上の高齢者とされる。

 こういう状況は、読売新聞にしても広告収入なくしては経営が成り立たない状況にある、として決して過言ではあるまい。象徴的と感じたのは、元旦の読売新聞。総40ページのうち19ページが、全面広告で埋め尽くされていた。ある種、妙な寂しさを覚えた。のち、天邪鬼な気持ちが蠢く──これほど幅を利かしている広告を活かす方法はないものか。

 「全面広告を打つぐらいだから『金はある』ということだろう」と一方的に判断し、広告主である上場企業が投資対象として価値があるか否かの篩(ふるい)にかけてみた。❶2024年終値ベースの予想配当利回り(税引き後)と、❷過去10年間の株価パフォーマンス(修正済み)、❸IFIS目標平均株価と時価の乖離で見てみる(数字はいずれも執筆当時)。

広告出稿企業予想配当利回り株価パフォーマンス現在株価:目標株価
トヨタ自動車<7203>約2.3%2.08倍3146円:3195円
積水ハウス<1928>約2.7%2.38倍3782円:4194円
大和ハウス工業<1925>約2.7%2.10倍4858円:4992円
三井住友海上
(MS&AD<8725>)
約3.4%3.60倍3449円:4083円
アシックス<7936>約0.5%4.36倍3110円:3389円
キヤノン<7751>約2.3%1.42倍5161円:5295円
サントリー食品<2587>約1.8%2.49倍5013円:6150円

 さて、ここから何を読み解くべきか。判断は各自に委ねたいと思うが、新聞はいずれ「読むもの」から「投資対象探しの媒体」に変っていくのかもしれない?

[執筆者]千葉 明
千葉 明
[ちば・あきら]東京証券取引所の記者クラブ(通称・兜倶楽部)の詰め記者を振り出しに、40年以上にわたり、経済・金融・ビジネスの現場を取材。現在は執筆活動のほか、講演活動も精力的に行う。『野村證券・企業部』『ザ・ノンバンク』『円闘』など著書多数。
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