年末に向けて相場の空気が変わる? 気になる10月相場の特徴とは【今月の株価はどうなる?】
《株式市場には、一定の季節性や、法則というわけでもないけれど参考にされやすい経験則(アノマリー)など、ある種のパターンが存在します。過去の例からひもとく10月の株式相場の特徴とは?》
10月の株式相場は空気が変わる?
10月の株式相場は、9月末の中間配当権利取りや日経平均株価の定期入れ替えなどの需給イベントを通過し、年末に向けて相場の雰囲気が切り替わるタイミングでもあります。
例年では、中旬以降の日米の決算シーズンに向け、企業決算の関心が高まる時期です。しかし今年は、世界的なインフレや利上げなどの外部要因で波乱の相場展開となっています。過去のデータ、定例イベントなどを見ながら10月相場を読み解くヒントを探っていきます。
10月の日経平均株価はどう動く?
そんな10月相場で、株価が「強い日」「弱い日」はいつになりそうでしょうか?
それを知るために、10月の日経平均株価の過去データを振り返りましょう。日経平均株価についての公式データを公開している「日経平均プロフィル」を参照します。戦後、東京証券取引所が立ち会いを再開した1949年5月から直近までの日経平均株価の日々の騰落率が掲載されています。
このデータを確認してみると、10月に日経平均株価が上昇した確率(勝率)が高いのは「20日」で、騰落率は64.3%でした。
反対に、10月で最も日経平均株価の上昇する確率が低い(=下がる確率が高い)のは、「13日」の40.7%となっています。
過去20年の10月は上昇と下落が半々
次に、日経平均株価の月間の騰落状況(前月末終値と当月末終値の比較)を、2000年から見てみます。9月末比では月間で上昇したのが11回、下落が11回で、上昇・下落がきれいに半々となっています。2000年からの平均騰落率も−0.4%と、やや下落が優勢です。
下落率が最も高かったのは2008年10月で、日経平均株価は月間で23.8%も下落しました。
2008年9月15日、アメリカの低所得者向け高利回り住宅ローン「サブプライムローン」に多額の焦げ付きが発生し、大手投資銀行リーマン・ブラザーズが連邦破産法11条の適用を申請しました。この「リーマン・ショック」により、世界同時株安の動きとなったのです。
翌10月には主要6カ国が協調し、金融市場の動揺を抑えるために緊急利下げを行いました。アメリカでは不良債権処理のため最大7000億ドルの公的資金を注入する緊急経済安定化法が成立。
しかし、この議決にあたって、巨大な投資銀行や金融機関に税金を投入して救済することに反発した下院議員によって法案が一度否決されたことから失望売りが殺到し、株価はさらに下げ幅を広げました。その後の修正を経て無事可決されると、ようやく金融市場は下げ止まりの動きとなりました。
対して、この20年で上昇率が最も高かったのは2015年10月で、日経平均株価は9.7%上昇しました。
この年は、「チャイナ・ショック」と呼ばれる中国株の暴落がありました。8月には突如として中国人民銀行が人民元の対ドルレートを切り下げたこともあり、金融市場の動揺が広がりました。
しかし、中国当局の積極的な財政による経済対策もあり、先進国を中心に株式市場は戻り歩調となり、10月の日経平均株価は前月比で約1割の上昇となったのです。
直近3年の10月の日経平均株価は?
それでは、最近の10月の日経平均株価の値動きはどうだったのでしょうか? 過去3年間のチャートを見ながら振り返りましょう。
・2019年10月の日経平均株価
2019年10月の日経平均株価は月間で5.4%上昇しました。
この年は、米中の貿易摩擦が株式市場の懸念となっていましたが、米中の経済制裁を部分的に緩和する合意が成立するとの期待から、株式市場に安心感が広がりました。また、イギリスのEUからの「合意なき離脱(ハードブレグジット)」の懸念が後退したことも買い材料となりました。
・2020年10月の日経平均株価
2020年10月の日経平均株価は月間で0.9%下落しました。
欧米などで新型コロナの感染が再拡大していたこと、ワクチン開発を巡って不透明感が広がっていたことなどが、買いの手控えにつながりました。また、11月にアメリカ大統領選挙を控えていたことから、その結果を見極めたいとの動きにもつながりました。
・2021年10月の日経平均株価
2021年10月の日経平均株価は月間で1.9%下落しました。
前月に自民党総裁選が行われ、岸田文雄首相が誕生し、経済対策への期待感から上昇していた反動で下落しました。特に月末には衆院選の投開票を控えていたことも様子見ムードにつながりました。
過去3年間で見ると、日経平均株価の10月の勝敗は0勝2敗と下落が多くなっています。
株価を動かす10月のイベント
株価にも影響を与える10月のイベントには、どのようなものがあるでしょうか。
中旬から下旬にかけては、日米企業の決算シーズンが市場の大きな注目となります。3月期決算企業にとっては上半期(4〜9月)の決算発表となります。期初の見通しを保守的にすることが多い企業も、事業環境が好調な場合は、このあたりで通期見通しの上方修正を出すケースが多く、注目です。
今年はインフレやサプライチェーンの混乱などによるコスト上昇の影響で、日米ともにコストが圧迫されている企業が多く、下方修正するケースも予想されるだけに、企業ごとの明暗が分かれそうです。
中旬には、ITとエレクトロニクスのアジアで最大の国際技術見本市「CEATEC 2022」が幕張メッセで開かれます。 新型コロナで昨年まではオンラインでの開催でしたが、今年は10月18日~21日の日程で、3年ぶりにリアルでの開催となります(オンライン会場は10月1日~31日開催)。
富士通<6702>、 村田製作所<6981>、ソニーグループ<6758>などテクノロジー企業が多数出展しており、これまでも、株式市場でも展示などを手がかりに材料として注目される場面もしばしばありました。
10月は連休も多く、今年は国による観光支援策の「全国旅行支援」も再開されます。また、海外からの渡航制限も緩和され、足元の円安もあいまってホテルやレジャー、鉄道や航空などインバウンド関連、経済再開関連の株が買われていますが、秋の旅行シーズンではこうした流れが続きそうです。
値上げで分かれる企業の明暗
また10月は、制度や価格などの変更の節目となることが多い月です。世界的なインフレの進行や円安で輸入物価が上がっており、10月からは食品など6000品目以上の商品の値上げが予定されています。
そんな中、消費者の節約志向に後押しされてディスカウントストアや100円ショップ、ドラッグストアなどの来客数が増えています。値上げによって売上高を伸ばせる企業とそうでない企業の業績や株価の差が広がりそうです。
値上げや節約志向は思わぬ企業にも恩恵をもたらしています。
小麦の価格高騰で米食が見直され、「サトウのごはん」のサトウ食品<2923>の業績が好調です。また、節約志向で中古の家電や衣料などの販売が伸びたハードオフコーポレーション<2674>、トレジャーファクトリー<3093>などのリユース・リサイクル関連銘柄も期待値が高まっています。
個別銘柄の二極化はいつまで続くか
日経平均株価の過去データをもとに、10月相場の特徴をいくつかご紹介しました。
世界的にインフレが進行する中で注目された9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)はタカ派色の強いものとなり、金利が上昇し、ダウ平均株価などは年初来安値を更新しました。
日経平均株価はアメリカ株ほどには上がっていなかったこともあり、まだ年初来安値までには値幅がありますが、変動率の高い不安定な相場が続いています。金利の動向やインフレの情勢には不透明感があり、波乱の相場月が続きそうです。
ただ、日本の株式市場は全面安というわけではなく、インバウンド関連やリユース関連、内需成長株などに強い動きの銘柄も散見されます。指数全体では慎重な値動きながらも、引き続き、個別銘柄ごとに強弱が分かれる展開も想定されそうです。