いま人気の「高配当株」 買う前・売る前に気をつけておきたいこと

山下耕太郎
2022年10月19日 12時00分

polack/Adobe Stock

《インフレ加速による金利上昇懸念からPERの高いグロース株が売られ、配当利回りの高いバリュー株が買われる傾向にあります。ただ、高配当であっても業績の悪化を受けて減配や無配になる企業も増えているので、注意が必要です》

いま、高配当株に資金が流入

高配当株に資金が流入しています。

高配当利回り銘柄を集めた「東証配当フォーカス100指数」は2010年の算出開始以来の高水準にあり、9月末の配当を見越した先回りの買いが入っていました。アメリカの金融引き締めなどで先行きが不透明な中、投資家はリスク回避のために資金を高配当株に集めているようです。

この「東証配当フォーカス100指数」は、TOPIX1000と東証REIT指数の構成銘柄の中から、時価総額と予想配当利回りに基づいて選定した100銘柄(株式90銘柄とREIT10銘柄)で構成されるインデックスで、過去の値動きは以下のようになっています。

2020年3月のコロナショック時に1,257.73ポイントまで下落しましたが、26日には2,074.85ポイントまで上昇。過去最高値を更新しました。9月末に配当金を受け取る権利を持つ銘柄が多く、投資家は高値掴みを避けるため、毎年8月末頃から権利を取り始める傾向があるからです。

一般に、高配当企業は財務が健全で、下げ相場にも比較的強い傾向があります。また、株価の値上がりは期待しにくい銘柄でも、配当金だけは確保しようとする動きもあります。

3月と9月の権利付き最終日に注意

配当金を期待して株式を購入する場合、とくに注意しなければならないのは、購入のタイミングです。

配当金を受け取るためには、企業が配当金を支払う株主を決定する日に、株主名簿に名前が載っている必要があります。月期決算の企業は、月末と月末の年回、株主名簿を確認し、多くの企業は期末配当と中間配当を行っています。

ただし、株を買ってから株主名簿に名前が載るまでに、ある程度の時間がかかります。そのため、配当金を受け取るには、月末の2営業日前までに株式を購入する必要があるのです。 

この配当金を受け取る権利がある最終日のことを「権利付き最終日」といいます。たとえば2022年の場合、9月末に決算を迎える企業については、9月28日(水)までに株式を購入することで、配当金を受け取る権利を取得することができます。 

権利付き最終日 権利落ち日 権利確定日
2022年9月 28日(水) 29日(木) 30日(金)
2023年3月 29日(水) 30日(木) 31日(金)

権利落ち日」とは、権利付き最終日の翌営業日のことで、「権利確定日」は株主名簿に記載されて権利が確定する日です。

なお、9月28日までに購入すると、11月中旬ぐらいに配当金を受け取ることができます。

高配当株でも減配・無配リスクに注意

高配当株は魅力が高いものの、減配リスクもあるので注意が必要です。素材や電力などコスト高に悩まされる業種の中には、減配(配当を減らす)や無配(配当ゼロ)を発表している企業もあるからす。

年初からの乱高下相場でも、コロナ禍で潤った手元資金を株主還元に回すとの期待から、高配当株に資金が流入してきました。しかし、配当という支えを失えば、日本の株式市場全体が大きく押し下げられる危険性もあります。

たとえば、日本製紙<3863>が8月5日に発表した今期第1四半期(2022年4~6月)の決算は不調で、新たに発表した通期業績予想で最終赤字、無配になる見込みを発表。これを嫌気した売り注文が増え、翌営業日に865円という年初来安値をつけました。

前期末の実績では4%弱の配当利回りがあったものの無配となったために、株価が大きく下落したのです。ほかにも、29日に無配を発表した東北電力9506>も、株価は大きく下落して年初来安値を更新しました。

売る前に、減配の理由に注意

減配した企業は「高配当の利回り」という投資の前提が崩れたわけですので、当然、株式の売却を検討することになります。しかし、減配の理由によっては、売りを急がないほうがいい場合もあります。

たとえば、買収先の会社が大きな損失を出したことによる減配であれば、将来的に配当が再開されるケースも少なくありません。そのような場合は、保有し続けてもいいわけです。

しかし、業績の悪化が続いていることによる減配や無配の場合は、手放したほうが無難です。

というのも、上で見たように、減配や無配になれば株価は大きく下がります。見込める配当金以上の損失が出るのであれば、株式を保有し続ける意味はありません。業績が悪化して株価が下がり続けるようであれば、早めに売却したほうがいいでしょう。

株価下落による高配当利回りに注意

また、業績悪化によって株価が下がり、配当利回りが上昇している株には注意してください。

株価の動きと配当金の動きは同じ時間軸にはありません。どういうことかと言うと、株価は将来の企業業績の予測に基づいてリアルタイムに動きますが、配当金は株主総会や取締役会で承認されるまで変わりません。 

つまり、配当金の動きは株価の動きよりずっと遅くなるのです。株価の急落で予想配当利回りが急上昇しても、その後に景気が悪化して企業収益が減少すれば、減配や無配となって、結局は利回りも低下し、元本も減少することになります。

高配当株を購入する場合は、配当利回りの高さだけに気を取られることなく、経済状況や企業業績も確認するようにしましょう。

[執筆者]山下耕太郎
山下耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌
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