いま株式市場で大注目の「政策銘柄」 リスキリング、GX、防衛力強化で上がる銘柄とは
《世界景気の不透明感が強まる株式市場で注目を集めているのが「政策銘柄」。その背景と具体的な注目銘柄、そして注意点を解説します》
「政策に売りなし」は本当?
世界の景気後退懸念やアメリカの金融政策、ロシア・ウクライナ情勢などで、株式市場は一段と不透明感を増しています。このようなときは、安全な投資先として「政策銘柄」に資金が向かいやすい傾向があります。
政策(国策)とは、国の重要課題に対して税金を投入するということ。投資家視点からみると、税金という巨額のお金が動くことで世の中が大きく変化し、結果として恩恵を授かる企業があるということがわかります。
昔から「政策に売りなし(国策に売りなし)」という相場格言もあるように、株式市場は政策による世の中の変化が大好物。なぜなら政策に関するニュースが出ると、関連する銘柄の株価は業績アップへの期待感から上がりやすくなるためです。
特に現在のようにリスクが高い相場では、国という追い風があるために投資家の矛先が向かいやすくなる、というわけです。特に現政権のスローガンとなる政策は世の中へのインパクトも大きく、投資家の高い注目を集めます。
岸田政権の主要政策は?
8月10日に第2次岸田改造内閣が発足しました。次の大型国政選挙は2025年で、衆議院の解散さえなければ岸田首相が国政に専念できる「黄金の3年間」となるとの見方は多く、首相が打ち出す政策に、株式市場からも熱い視線が注がれています。
岸田内閣は主要政策として次の4つを掲げています。
- 新型コロナウイルスへの対応
- 未来を切り拓く「新しい資本主義」─成長と分配の好循環─
- 外交・安全保障
- 災害対応
また、6月には内閣の基本方針として、「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)」と「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画」を閣議決定しています。その中で計画的な重点投資として挙げられているのは、次の4つです。
- 人への投資と分配
- 科学技術・イノベーションへの重点的投資
- スタートアップの起業加速及びオープンイノベーションの推進
- GX(グリーン・トランスフォーメーション)及びDX(デジタル・トランスフォーメーション)への投資
これらの政策と関連銘柄を知っておくことで、先回りして投資することが可能となるのです。
「人への投資」で上がる株は?
岸田政権のスローガンは「新しい資本主義」。これを推し進めるための重要課題である「人への投資」に対して、政府は、2024年度までの3年間で4000億円を投じるとしています。
日本企業の人への投資額は、GDP比でわずか0.1%程度(2010〜2014年)。アメリカ(2.08%)やフランス(1.78%)など他の先進国に比べて最低水準となっています。
これは、日本企業ではこれまで人件費を「コスト」と見なす傾向があったため。背景には、日本企業が製造業中心に発展してきたことがあり、安易な労働力供給に依存し、コストカットで生産性を高めたことが原因です。
しかし近年の大きな変革の波の中では、ひとりひとりのスキルや生産性を高めなければ世界の成長に乗り遅れてしまいます。そこで「人への投資」に路線変更し、付加価値を生み出せる人材を育成することで、デジタルなど成長分野への労働移動を円滑化し成長軌道に乗せていこう、というわけです。
キーワードは「リスキリング」「リカレント教育」
株式市場では、この「人への投資」の関連銘柄として、「リスキリング」「リカレント教育」関連のテーマ性が浮上しています。
リスキリング(Reskilling)とは、経済産業省によると「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に対応するために必要なスキルを獲得する/させること」と定義されています。単なる「学び直し」ではなく、付加価値を創造する必要なスキルを学ぶということです。
リスキリングによってデジタル技術の力を使いながら付加価値を創造でるよう、従業員の能力やスキルを再開発させることが、企業のDX時代の人材戦略、と強調されています。
たとえばアメリカでは、アマゾン・ドット・コム<AMZN>は2025年までに7億ドルを投じて従業員10万人をリスキリングする計画を発表しています。ウォルマート、AT&Tといった世界的大企業も、すでに多額の投資によってリスキリングを本格化させています。
一方のリカレント教育は、「働く→学ぶ→働く」のサイクルを回るように、新しいことを学ぶために「職を離れる」ことを前提としています。学び直しによる収入増や生産性の向上による成長分野への就職・転職支援に向けた教育プログラムなどがあります。
いずれにしても、デジタル化と同時に生まれる新しい職業や仕事の進め方の変化が変わるであろう職業に就くためのスキル習得を目指すことは共通です。
・インソース<6200>
これらの関連銘柄としてすでに注目を集めているのが、講師派遣型の研修事業および公開講座の運営を主力とするインソース<6200>です。企業研修、公開講座など社会人向け教育サービスを行う企業で、リスキリング関連銘柄の代表格といえます。
今年7月に、2022年9月期の業績予想の上方修正を発表。同時に発表された第3四半期決算は、四半期として過去最高の利益となりました。主力の講師派遣型研修事業のうち、高採算のDX研修が大幅に増加したためです。上方修正を受けて株価は大きく上昇し、強い上昇トレンドとなっています。
このほかに、社会人向けの通信教育を手掛けるビジネスブレイクスルー<2464>なども関連銘柄として注目されています。
「GXへの投資」で上がる株は?
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とあわせて近年重要なキーワードになっているのが、GX=グリーン・トランスフォーメーションです。日本政府は、2050年までにカーボンニュートラル実施を目指して脱炭素の取り組みを進めつつ、エネルギー自給率を向上させる、としています。
具体的には、今後10年間で官民協調で150兆円規模の投資を実現する計画を打ち出し、そのロードマップを年内に取りまとめることと、新たな国債(GX経済移行債)を発行して20兆円を支援することを表明しました。
7月にはGX担当相(グリーントランスフォーメーション実行推進担当大臣)を新設し、GX実行会議も開催。水素やアンモニア、電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの普及に欠かせない蓄電池、原子力の次世代炉の研究開発などが支援の対象として挙げられました。
関連銘柄としては、再生可能エネルギー関連銘柄の代表格であり再生可能エネルギー施設の開発事業を手掛けるレノバ<9519>があります。今春以降、株価は強い上昇トレンドとなっています。洋上風力発電の五洋建設<1893>、太陽光発電関連のウエストホールディングス<1407>なども注目です。
「防衛力強化」で上がる株は?
「防衛力強化」はロシアのウクライナ侵攻や、中国による台湾侵攻の緊張などからも、今後も注目される可能性が高い分野です。
政府は防衛力を5年以内に抜本的に強化するとしていて、2022年度当初予算の防衛費は5.4兆円ですが、GDPの1%程度から5年以内に2%以上への増額を視野に議論を進めていくもようです。実現すれば、2027年には10兆円規模に膨らみます。
防衛省が挙げている防衛力強化項目としては「スタンド・オフ防衛能力」や「弾薬の確保」、「ゲームチェンジャーとなりえる技術などの研究開発」などがあり、このあたりを中心に、ドローンやサイバーセキュリティなど関連銘柄が浮かんできます。
代表的な防衛関連銘柄は、その特殊性ゆえに供給サイドが限定されることから、三菱重工業<7011>やNEC<6701>といった、納入実績のある上位企業が挙げられます。防衛省のホームページに上位20社が掲載されていますので、気になる方はチェックしてみてください。
政策銘柄の注意点
8月末には、各省庁が翌年度のおおまかな予算を提示する「概算要求」が出揃いました。ここから政府の予算案を決定する年末までの4か月間は、各省庁が掲げた要求項目が材料視され、関連銘柄がもてはやされやすくなります。
ただし、政策に関連していれば何でも上がるというわけでは当然ありません。
政策をテーマに物色する際に注意したいのは、その企業の業績にどれくらい寄与するのか、という点です。政策によって市場が拡大したとしても、業績に対するインパクトが限られることもあります。また、政策への思惑だけで株価が上昇すると、その反動も大きくなるので注意が必要です。
最終的には個別銘柄ごとの吟味が重要になるのは、どのテーマでも同じなのです。これから先、話題を集めたりニュースになったりする企業は数多くあるでしょうが、このことはどうぞ肝に銘じておいてください。