半導体株はこの先どうなる? 知っておきたい2つの指数と今年上がった株

佐々木達也
2024年11月19日 15時00分

半導体株の値動きは指数で把握する

生成AI(人工知能)や自動運転、IoTなどにより、半導体の市場拡大が続いています。

世界半導体市場統計(WSTS)の予測では、世界の半導体市場は2024年度に前年比16%増の6112億ドル、2025年度には13%増の6873億ドルとさらなる伸びが予想されています。

こうした中で、ボラティリティー(変動率)は高いものの、アメリカのエヌビディア<NVDA>や日本の アドバンテスト<6857>など代表的な半導体関連銘柄は、投資家の成長期待を反映して新高値圏で推移しています。

一方で、ディスコ<6146>やSUMCO<3436>などは同じ半導体株でも冴えない値動きとなっています。

半導体株は今後どんな展開となるのか? 日米の半導体株の値動きを把握するのに役立つ代表的な指数を紹介します。

フィラデルフィア半導体指数とは?

フィラデルフィア半導体指数SOX指数)とは、アメリカの代表的な半導体銘柄の株価パフォーマンスを示す指数です。ナスダック証券取引所によって1993年から時価総額加重平均方式で算出、公表されています。

組み入れ銘柄数は30銘柄で、四半期に一度、ウエートの調整や銘柄の入れ替えが行われます。組み入れ銘柄のうち上位10銘柄で指数全体の時価総額の約6割を占めています。

今年4月時点の時価総額上位銘柄は、GPU(画像処理半導体)のエヌビディア<NVDA>やブロードコム<AVGO>、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)<AMD>など、AI向けの先端半導体の設計・製造する半導体メーカーが並んでいます。

SOX指数を牽引したビッグテック企業

SOX指数は、半導体の長期にわたる需要増加で中長期で上昇基調が続いています。

2020年3月の安値1286ポイントから今年7月の最高値5904ポイントまで約6倍に上昇。2023年の4175ポイントから10月30日の終値までを比較しても2割弱の値上がりです。

・エヌビディア<NVDA>

この間、指数の上昇を牽引したのは、エヌビディア<NVDA>です。エヌビディアの株価はこの間に約2.9倍に値上がりしました。

エヌビディアは、AIの推論や学習に欠かせないGPUを設計・販売しています。AMDやインテルなどもAI向けの半導体を提供していますが、付随ソフトの使いやすさや充実度などが障壁となり、一人勝ちの様相です。

今年10~12月期には最新のGPUプラットフォーム「ブラックウェル」が発売される予定です。アマゾンやグーグル、メタ、マイクロソフト、OpenAIなど世界の大手テクノロジー企業に採用されるとみられます。

今後何年にもわたってエヌビディアの技術的優位性を維持・拡大するのに役立つ可能性があるとされています。

・TSMC<TSM>

次に値上がりしたのは台湾の半導体の受託製造大手、TSMC<TSM>です。株価は昨年末から約1.9倍になりました。

半導体メーカーには、設計などを担う「ファブレス企業」と、製造を担う「ファウンドリ企業」があり、TSMCは後者のファウンドリ企業に該当します。大量の先端半導体チップを量産でき、現在の世界シェアは約6割。価格決定力も強く、値上げによって収益性も伸びています。

半導体チップは、回路線幅が狭ければ限られたスペースに多くの回路を組み込むことができますが、この微細加工には高度な技術力が不可欠で、容易にできるものではありません。加えてシェアを拡大するには供給力も必要で、微細加工による製造を大量に行う工場を所有することが求められます。

TSMCが巨大な企業に発展した理由は、高い技術力だけでなく、経営面での成功において大規模な投資サイクルを実践してきたからです。高い売上を大きな投資に再投資し、そのサイクルを迅速に回すことで急速な成長を遂げたのです。

・ブロードコム<AVGO>

ブロードコム<AVGO>も約5割の値上がりとなりました。

ブロードコムは、AIデータセンター向けネットワークや特定用途向けのカスタムICで、今後大きなシェアを獲得すると予想されています。過去5年間でグーグルやメタなどのテクノロジー大手と連携し、先端カスタムICのリーダーとしての地位を確立しています。

日経半導体株指数とは?

アメリカのSOX指数に対し、日本株の半導体株の値動きをはかる指数として、今年3月から日経半導体株指数の算出が開始されました。

日本経済新聞社の業種分類で主力事業が半導体関連業種に属する銘柄の中から、基準日時点(10月末)の時価総額上位30銘柄を選定し、構成される時価総額ウエート方式の指数です。 毎年11月末に銘柄の入れ替えが実施されます。

時価総額ウエート上位には、半導体製造装置の東京エレクトロン<8035>やアドバンテスト<6857>、半導体の切削装置のディスコ<6146>、マイコンのルネサスエレクトロニクス<6723>などが入り、この4銘柄でウエートの6割近くを占めます。

今年値上がりした日本の半導体株

日経半導体株指数の遡って算出されたデータを振り返って見ると、2020年3月の安値から今年7月の高値までの上昇は5倍超となっています。

・デクセリアルズ<4980>

構成銘柄のうち今年値上がりしたのは、化学のデクセリアルズ<4980>で、昨年末から約7割の値上がりです。ちなみに、同じ期間の日経平均株価は約1割程度の上昇でした。

デクセリアルズは光学フィルムや導電膜、光通信用デバイスなど特殊化学品やデバイスを手がけています。

主力の異方性導電膜(ACF)は、電気信号を通す接着フィルムで、一度の接続作業で多数の電気回路を形成できる特徴があります。スマートフォンなどディスプレイを持つほぼすべてのデジタル機器で活用されています。

・アドバンテスト<6857>

半導体検査装置のアドバンテスト<6857>も6割ほど値上がりしました。半導体の製造で製品の良否を検査するテスターの世界大手です。AIの広がりにより、立体化など半導体の設計が複雑するなかで高性能のテスターの需要が広がっています。

値下がりした半導体株

一方で、値下がりした銘柄では、半導体の欠陥検査装置のレーザーテック<6920>が4割の値下がりとさえない展開となっています。ローム<6963>も同程度の値下がりとなっており、半導体株の間でも明暗が分かれています。

ETFの活用で半導体市場を買う!

これら半導体株の指数は、ざっくりと日米の半導体株の値動きをつかむのに役立ちますが、それでも個別銘柄への投資は内容の理解が難しい……と感じている個人投資家も多いでしょう。

そういう場合は、半導体株のETF上場投資信託)を活用することで、半導体市況の成長にベットすることができます。

日経半導体株指数に連動する代表的なETFには以下のようなものがあります。いずれも対象の指数は同一なので、基本的にはどれを選んでも大差はないと思われます。

  • NEXT FUNDS 日経半導体株指数連動型上場投信<200A>(野村アセットマネジメント)
  • 上場インデックスファンド日経半導体株<213A>(日興アセットマネジメント)
  • MAXIS 日経半導体株上場投信<221A>(三菱UFJアセットマネジメント)

アメリカのSOX指数に連動するETFにもさまざまなものがありますが、アメリカ系のグローバル・X・ジャパンが運用するグローバルX 半導体ETF<2243>は、円建てで、東京証券取引所で取引できるのが特徴的です。

ETFではなく通常の投資信託にも、SOX指数に連動するインデックス・ファンドとしてニッセイ・アセットマネジメントが設定した「ニッセイSOX指数インデックスファンド」や楽天投信投資顧問の「楽天・プラス・SOXインデックス・ファンド」などがあります。

半導体株を深掘りするなら

半導体関連銘柄は、半導体そのものの製造装置メーカーだけでなく、材料メーカーや検査装置メーカーなど、カテゴリだけでもさまざまに分かれています。

さらには半導体自体も、データを記憶するメモリーや演算に用いられるロジック、電流制御のパワー半導体など分野により大きく異なります。

企業のIRページなどを調べてみるとよりわかりやすい解説が掲載されていますので、興味のある方はさらに深掘りしてみると面白いでしょう。

指数の動きを参照しつつ、ETFや投資信託もうまく活用してみてください。

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[執筆者]佐々木達也
佐々木達也
[ささき・たつや]金融機関で債券畑を経験後、証券アナリストとして株式の調査に携わる。市場動向や株式を中心としたリサーチやレポート執筆などを業務としている。ファイナンシャルプランナー資格も取得し、現在はライターとしても活動中。株式個別銘柄、市況など個人向けのテーマを中心にわかりやすさを心がけた記事を執筆。
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