GAFAM+テスラが牽引するアメリカ市場。2022年はついに潮目が変わる?
世界市場の6割を占めるアメリカ株
2021年、全世界の株式は18%上昇。ただし、アメリカ株が24%上昇したのに対し、アメリカ株を除く世界株の上昇は9%に留まる──これは、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)が算出する「オール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」で見た数字です。
ACWIは、23の先進国市場と27の新興国市場の約3,000銘柄に投資し、世界の投資可能なマーケットの時価総額の約85%をカバーする広範なインデックスです。連動する資金が4.2兆ドル(約480億円)と、国際投資で最も利用されている指数と言えます。
しかしながら、同指数に占めるアメリカ株の割合(時価総額ベース)は、2011年の43.9%から2021年には61.5%と、約16%も上昇しています。つまり、アメリカ株のシェアが6割を占めているため、この世界株式指数に投資したところで分散投資の効果は限られるのです。
GAFAMなどグロース株がアメリカ株を牽引
そんなアメリカ株の上昇を引っ張っているのは、一部の超大型ハイテク株です。
2022年1月3日、アメリカの株式市場でアップル<AAPL>の時価総額が3兆ドル(約340兆円)を突破しました。アップルの時価総額は、2018年8月に1兆ドルを突破し、2年後の2020年8月に2兆ドルの大台を超えています。そして、わずか1年4か月後に3兆ドルを突破。
2021年12月30日時点の東証1部の時価総額は約734兆円なので、アップル一社でその半分に迫っているわけです。
GAFAM(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)という上位5銘柄の時価総額シェアは、2020年8月に24.7%と全体の約4分の1に迫りました。2000年3月の18.4%を超え、1970年代以来の高い水準となったのです。
その後、フェイスブック(現:メタ・プラットフォームズ)<FB>の株価は伸び悩みましたが、入れ替わりにテスラ<TSLA>がトップ5に入り、2021年12月も上位5銘柄で23.9%のシェアを占めています。
2022年は「転機の年」になる?
ただ、2022年は「転機の年」となるかもしれません。2020年のコロナ禍への対応としておこなわれてきた金融緩和が終息に向かい、潮目が変わりそうだからです。
2008年のリーマンショック以降は積極的な金融緩和が行われ、低金利と低インフレが併存していました。しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)はテーパリング(量的緩和の縮小)を2022年3月に終了し、年内にも利上げを開始すると見られています。
アメリカだけでなく、景気回復が遅れている中国や日本を除けば、世界各国の中央銀行は金融政策を正常化し、各国の金利は上昇に転じると見られています。
「金融相場」から「業績相場」へ
これまでは金融緩和による「金融相場」が続いてきましたが、今後は「業績相場」へと移行する可能性が高いと考えられます。業績相場とは、景気が拡大して企業業績が好調な状態になり、株価が上昇することです。
業績相場では、個別企業の業績が注目されます。これまで低金利が続いていたので、高いPER(株価収益率)のグロース株にも買いが入っていました。しかし金利上昇局面では、グロース株の割高感が意識されるようになり、グロース株は調整し、反対にバリュー株に資金がシフトしやすくなります。
したがって、GAFAMといった一部の大型グロース株に資金が流入する相場環境が変わる可能性があるのです。
アクティブ・ファンドが優位になる可能性も
アメリカの調査会社EPFRグローバルによると、2021年は世界の公募型の投資信託の中で(ETF=上場投資信託含む)、インデックス型に過去最大の約8,300億ドルの資金が流入し、流入額全体の9割を占めました。
アメリカを代表する株価指数であるS&P500種株価指数が約27%上昇するなど、金融緩和が続く間は低コストのインデックスファンドで市場全体に投資するのがもっとも効率的だったからです。
しかし金融引き締め局面となると、市場全体が20〜30%も上昇するのは難しくなり、個別銘柄の選定が重要になってきます。つまり、これまではインデックス・ファンドが優位でしたが、今後は個別銘柄を選定するアクティブ・ファンドが優位になる可能性が高い、と考えられるのです。
スタグフレーションに要注意
業績相場は、景気拡大とともに企業業績が上向くことが条件です。
景気が後退していく中でインフレが進む「スタグフレーション」になると、株価は下落します。通常、景気が停滞すると需要が落ち込むことからデフレ(物価下落)になりますが、原油価格の高騰など資源価格の上昇によって、不景気でも物価が上昇することがあります。
景気後退は企業業績が上向かず、賃金も上がらないので生活者にとって極めて厳しい状況になります。そうしたことから、株価も下がりやすくなるのです。スタグフレーションは1970年代のオイルショック後に起こりました。
現状は景気が拡大しているのでスタグフレーションの恐れは少ないとは言え、依然として資源価格の高騰が続いていることから依然として注意が必要でしょう。