変異株、インフレ、利上げ… 2022年の株式市場を取り巻くリスクを考える

山下耕太郎
2022年1月3日 12時00分

日本株は外の影響を強く受ける

2020年3月のコロナショックで日経平均株価は16,358.19円まで下落しましたが、世界各国の中央銀行による大規模な金融緩和と各国政府による財政出動によって、株価は上昇へ。日経平均株価も、2021年2月19日に30,714.52円まで上昇し、実に30年ぶりとなる3万円台を回復しました。

その後はアメリカでインフレ懸念が高まり、日経平均株価は上値の重い展開が続きましたが、9月17日には再び30,795.78円まで上昇し、年初来高値を更新。しかし、テーパリング観測が強まったことでアメリカ株が下落すると、日本株も10月から11月にかけて大きく下落しました。

このように日本経済は、アメリカをはじめとした世界各国の政治・経済と密接なつながりがあり、その影響を強く受けています。また、日本株は日本の会社の株でありながら、売買シェアの6~7割を外国人投資家が占めており、アメリカ株などの海外株式市場の影響も強く受けるのです。

2022年もコロナが鍵を握る

2022年も、新型コロナウイルスの動向が大きなリスク要因になると考えられます。

2021年後半は、変異株「オミクロン株」の感染拡大を受けて各国政府が渡航制限を強化し、株式市場を大きく揺るがす結果になりました。今後も、新たな変異株の出現によってマーケットのセンチメントが急激に悪化する可能性があります。

ただ、ワクチンの普及やマスクの着用、治療薬の開発などで、2020年の流行当初とは条件が大きく異なっています。たとえ感染拡大が起こったとしても、医療の逼迫は起こらず、大規模な経済活動の制限には至らないのではないか、と個人的には考えています。

2022年はインフレ懸念が高まる

新型コロナウイルスの感染拡大よりも注目されるのが、インフレ圧力の高まりとアメリカの金融政策の動向です。2021年は需要が予想以上に急拡大したことから、供給不足や物流システムの混乱を引き起こし、モノの価格急騰を招きました。

アメリカ労働省が1210日に発表した2021年11月の消費者物価指数は、前年同月比で6.8%も上昇しました。これは1982年6月以来、39年ぶりの高い伸びです。また、価格変動の大きい食料品とエネルギーを除いたコア指数は4.9%(同)の上昇となり、こちらも1991年6月以来最大となりました。

さらに食料やエネルギーなどの原材料価格も高騰し、賃金の上昇やサービス価格の上昇も起こっています。欧米を中心にインフレが進んでおり、低所得国では食品価格の上昇が景気回復を遅らせる要因となっているのです。

こうしたインフレ圧力の上昇を受け、12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、アメリカ国債、住宅ローン担保証券(MBS)の購入月額の削減ペースを、2022年1月から2倍にすると決定。テーパリング(量的緩和の縮小)の終了時期は、想定より早い2022年3月となりました。

2022年は利上げラッシュか?

さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長はテーパリング終了後に利上げに踏み切る構えを示し、FOMCの参加者は2022年に3回、2023年に3回、2024年に2回の計8回の利上げを想定しているとのことです。

英イングランド銀行はすでに1216日に政策金利を引き上げ、欧州中央銀行(ECB)と日本銀行も、コロナ禍で対応した緩和策の縮小を決定しています。

これまで新型コロナウイルス対策として金融緩和を積極的に行い、マネー供給を主導してきた4大中央銀行がそろって緩和縮小に前向きな「タカ派」に転じたことは、投資家心理を冷やしています。

主要国以外ではニュージーランドやメキシコ、ブラジル、ハンガリー、ロシアなども利上げを行っています。特にインフレが顕著な南米や東欧で利上げが目立っているわけです。

前回2013年の金融正常化局面では、バーナンキFRB議長によるテーパリング示唆によって長期金利が急騰。株式市場を中心に金融市場に大きなショックが起こりました。現在の長期金利は落ち着いていますが、景気回復や物価上昇を背景に、2022年には2近くまで上昇するとも見られています。

2022年の日本株はどうなる?

このように2022年相場では、インフレと長期金利の上昇が懸念材料としてマーケットの関心を集めるでしょう。そうした世界情勢のなかで、2022年の日本株は一体どのような展開を見せるでしょうか。

まず、日本株の上値を抑える懸念材料としては、次の3つが考えられます。 

  • コロナ変異型の感染拡大
  • インフレ懸念(世界的な供給制約による物価の高止まりや円安による物価上昇)
  • FRBによる金融政策の正常化

夏には参院選が行われますが、もし選挙前に国内でコロナ感染が拡大していても、政府が経済対策などの措置を講ずれば、日本株への影響は限定的かもしれません。

ただ、現政権が参院選に勝利し、国内景気が安定すれば、財政再建の姿勢を強めることも予想されます。金融所得課税の見直しなどの議論が出てくると日本株にとってはマイナス材料となるので、その場合には警戒が必要です。

日本株はアメリカをはじめとした海外情勢の影響を強く受けますが、当然ながら、国内の景気や政治にも大きく左右されます。アメリカだけ、国内だけ、を見るのではなく、常に幅広くアンテナを張りながら、日々のマーケットに向き合うことが大切です。

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[執筆者]山下耕太郎
山下耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌
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