暴落は忘れた頃にやって来る? 過去の教訓を未来の相場に生かすには
記憶に残るあの暴落に学ぶ
コロナショックからアフターコロナへ──。株価は、一時の乱高下からは落ち着いたように見えるものの、その一方で、いやいや「二番底」はこれからだ、という警戒は続いています。
いつ、どれくらい暴落するか、それは誰にもわかりませんが、相場では過去に何度も、様々な暴落が演じられてきたことは紛れもない事実。アメリカ発の4大ショックのほかにも、多くの教訓を与えてくれる暴落の事例はいくらでもあります。
沸き立ったバブルは爆発とともに|チャイナショック
2015年6月に発生した中国株の大暴落、いわゆる「チャイナショック」は、その後の世界同時株安へとつながりました。
目覚ましい経済成長を遂げていた中国は、個人投資家の巨額の株式投資が過熱したバブル状態でした。株価の下落が始まると同時に、信用買いを利用していた個人投資家は追加保証金を請求される憂き目にあい、持っている株式を強制的に売却させられることに。そのため、株価は一気に急落したのです。
その後、中国政府によってさまざまな対策が講じられますが、8月に入って天津で大爆発事故が発生。株価は再び暴落することになり、これがきっかけで世界同時株安が発生することになります。
日経平均株価は、8月18日から26日にかけてマイナス14.2%を記録。これは、ブラックマンデーやニクソンショックに匹敵する暴落でした。
欧州の小国がもたらした世界株安|ギリシャショック
2010年にヨーロッパの小国、ギリシャで発生した「ギリシャショック」でも、世界同時株安が発生しました。
2009年の政権交代によって、それまで財政赤字がGDPの5%程度とされていたのが、実際には12.7%に達していたことが発覚。2010年1月にそれが世界中に報道され、問題が表面化した後もなお楽観的な姿勢のギリシャ政府に対して、格付け会社がギリシャ国債の格付けを引き下げる動きに出ます。
これをきっかけに、ギリシャ国債の暴落からユーロの下落へとつながり、世界中の株価へも影響を及ぼすことになりました。
日経平均株価は、4月27日に終値で11,212円66銭を付けたのを最後に、6月9日に9,439円13銭を付けるまで下落。約1か月強の間に15.8%も値を下げることになりました。
突然の強制捜査は社会現象に|ライブドアショック
近年、日本で発生した「○○ショック」といえば、2006年1月16日にライブドアが強制捜査を受けたことをきっかけとした「ライブドアショック」が挙げられます。
前年の2005年当時の日本は、輸出産業が好調なこともあり好景気。株価もそれに伴って上昇傾向にありました。ライブドアを率いていた堀江貴文氏のカリスマ性に加え、株式分割による株価の急騰もあり、多くの投資家がライブドアへの投資を行なっていたといわれています。
しかしながら、強制捜査によってライブドア関連の株価が暴落。その影響もあって東京証券取引所では、全銘柄の取引停止措置が取られるという非常事態に陥ります。1月17日・18日の2日間で、日経平均株価はマイナス5.7%も下落することになりました。
ただし、一企業の不祥事が市場全体に大きな影響を与えることは多くありません。これほどの混乱が生じたのは、マネックス証券のある発表が大きく関係しています。
・落ち着きを見せた相場への強烈な冷や水
実は、1月16日のライブドア強制捜査による相場への影響という点では、翌17日の寄り付きには混乱が見られたものの、前場の引けには比較的落ち着きを取り戻していたのです。
しかし、後場になってマネックス証券が突然「ライブドア及びライブドアの子会社の株式の信用担保能力評価をゼロにする」と発表。
これにより、ライブドア株やライブドア関連株を担保に信用取引をしていた投資家は、「保証金を補填するための換金売り」に迫られることになり、さらに他の証券会社で取引していた投資家たちも、ライブドア関連株の売却に殺到することになりました。
その結果、東証1部上場銘柄の90%以上が下落する事態となり、全銘柄取引停止という事態になったのです。
このことから、一連の暴落は「ライブドアショック」ではなく「マネックスショック」と呼ぶべきだという意見もありますが、いずれにせよ、株式市場に大混乱を起こした事案として記憶されています。
事態の把握とともに遅れて暴落|東日本大震災
2011年3月11日、午後2時46分、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生。宮城県内で最大震度7、東京都心でも最大5強を記録しました。東日本大震災です。
各取引所が閉まる直前であり、また、日本各地で大規模な停電が発生したことから、震災当日の株価にはそれほど大きな影響はありませんでした。
しかし、その後に発生した福島第一原発の事故によって原子力緊急事態宣言が発表され、甚大な被害が出ていることが認識されたのちに、週明けの3月14日(月)に東京市場が開場されると、日経平均株価は633円94銭安に。
さらに翌日には1,015円34銭安の8,605円まで暴落。ブラックマンデーやリーマンショックに次ぐ10.55%の下落率を記録することになりました。
次の暴落は明日にでも?
リーマンショックのような世界経済に直接的なインパクトをもたらす暴落もあれば、ライブドアショック……もといマネックスショックのような連鎖反応による暴落も。株価が上がる理由が千差万別であるように、下落の理由もまた様々です。
そう考えると、何があっても「ここから暴落するかもしれない」という認識を持てることが、次なる暴落に備えるために必要な要件なのかもしれません。