改めて学ぶ日経平均株価 個別株投資にうまく活用する方法とは
《投資家であれば必ずチェックしているであろう株価指数のひとつが「日経平均株価」。しかし、あまりにも身近なため、具体的にどのような指数なのか深く考えたことがない人も多いのではないでしょうか。正しく理解すれば、個別株投資にも日経平均株価をうまく活用することができます》
そもそも日経平均株価とは?
日経平均株価とは別名「日経225」とも言われ、日本経済新聞社が東証1部上場企業の中から選んだ「225社の平均株価」です。「225社の平均株価」なので、「225社の株価合計÷225」で算出されるのが大原則です(より詳しく解説すると、225社の株価合計に「みなし額面による調整」と「除数の修正」を加えて算出されます)。
この225社は定期的に見直しがなされ、例年9月初めに入れ替え銘柄の発表がされます(実際の入れ替えは10月1日から)。近年は1~2銘柄の入れ替えとなることが多く、どの銘柄が新規採用・除外されるか、市場の注目が集まるビッグイベントとなっています。
なお、構成銘柄の一覧は「日経平均プロフィル」のサイトで確認することができます。
日経平均株価とTOPIXの違い
代表的な日本の株価指数には日経平均株価の他に「TOPIX」があります。2つの指数の違いから、日経平均株価の特徴を深堀りしてみましょう。
まず、日経平均株価が225社を対象に算出しているのに対し、TOPIXは東証1部に上場している全銘柄を対象に算出している、という大きな違いがあります。日経平均株価のほうが対象銘柄が少ないため、1社の株価が指数に与える影響は大きくなります。
また、計算方法は、日経平均株価が「株価」を基に算出する「株価平均型」であるのに対して、TOPIXは「時価総額」を基に算出する「時価総額加重平均型」となっています。
そのため日経平均株価は、ファーストリテイリング<9983>や東京エレクトロン<8035>など単純に株価の額が大きい「値がさ株」の影響が大きくなる一方で、TOPIXはトヨタ自動車<7203>やソニー<6758>など「時価総額」の大きな銘柄の影響を強く受けることになります。
日経平均株価の特徴を深掘りする
値がさ株の影響が大きい
日経平均株価の特徴である「値がさ株の影響が大きい」について、もう少し詳しく見ていきましょう。
値がさ株とは、株価の額が大きい銘柄のことです。日経平均株価の場合、2020年10月5日時点におけるウェート上位3銘柄は、値がさ株であるファーストリテイリング<9983>、ソフトバンクグループ<9984>、東京エレクトロン<8035>で、この3銘柄だけで日経平均株価の構成比率の20%強を占めています。
どれくらい値がさ株の影響が大きいかと言うと、例えば、低位株(株価の小さい銘柄)であるみずほフィナンシャルグループ<8411>の株価が1%上がっても、日経平均株価は約0.6円程度しか上がりません。一方、ファーストリテイリングが1%上昇するだけで、日経平均株価は約23円上昇します。
つまり、ファーストリテイリングの日経平均株価に対する影響度は、みずほFGの38倍に上ることになります。これは決して、ファーストリテイリングがみずほFGより38倍大きいということではなく、日経平均株価の計算方法の特徴によるものです。
このように日経平均株価は値がさ株の影響が大きく、特に海外投資家からは「市場全体の動きを反映していない」という声があるのも事実です。
しかし、市場を大きく動かすプレイヤーである機関投資家も日経平均株価を運用の目安にしているように、日本の代表的な株価指数であることには間違いありません。そのため、少なくとも「相場全体の動きを把握するために、代えのきかない指数のひとつである」とは考えることができるでしょう。
過去の日経平均株価と単純に比較できない
過去の日経平均株価と現在の日経平均株価では、構成銘柄が異なるため、単純比較をすることができません。
例えば、現在の価格との比較で、バブル期の史上最高値である38,915円がよく引き合いに出されます。しかし、バブル期から現在まで残っている銘柄は約3割ほど。7割はすでに入れ替わっており、そもそもバブル期とは算出されている対象銘柄自体が異なるのです。
そのため、過去の価格よりも、現在の日経平均株価のEPSやBPSなど業績を基に、現在の価格が高いのか、低いのかを判断したほうが実態に沿っていると言えるでしょう。
次に日経平均株価に採用されるのは?
2020年9月1日、日経平均株価の銘柄入れ替えについて、ソフトバンク<9434>の新規採用と日本化薬<4272>の除外が発表されました。発表の翌営業日、ソフトバンクの株価は上昇した一方で、日本化薬は10%下落。さらに、新規採用候補に挙げられていたカカクコム<2371>やZOZO<3092>にも失望売りが出ました。
このように日経平均株価の採用・除外に絡む思惑で、銘柄の明暗が大きく分かれることがあります。
日経平均株価は、セクターのバランスを取るため、採用銘柄数が妥当銘柄数より多いセクターからは除外、少ないセクターには追加採用します。今回は、妥当銘柄数を下回る消費セクターからの新規採用が期待されていました(結果はソフトバンクで技術セクター)。
こうした理由から、今後も、カカクコムやZOZO、スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>など消費セクターの採用期待は継続しそうです。
なお、任天堂<7974>も新規採用銘柄候補として名前が上がることがありますが、2020年10月5日時点での株価は56,920円。もし値がさ株の任天堂が採用されると指数に大きな影響を与えることになるため、選ばれにくいだろうという声も上がっています。
日経平均株価で相場の温度を測る
日経平均株価は値がさ株の影響を強く受けるため、それを見て参考になるのだろうかと思うかもしれません。しかし、日経平均株価は相場の「温度」を掴むために活用することができます。つまり、大まかに以下のように見ることができます。
・日経平均株価が低迷=相場全体も低迷している
・日経平均株価が上がっている=相場全体も強い傾向にある
そのうえで、個別株投資においては、日経平均株価が上昇・下落している原因を把握し、それが一過性のものなのか、それとも根本的でしばらく続きそうなのか、を見る必要があります。一過性の原因による下げの場合は、買いのチャンスと捉えることができるため、狙っている個別株を仕込む好機になるでしょうし、原因が根本的なもので長期間にわたって低迷しそうな場合は、もう少し様子を見たほうがいいかもしれません。
ふだんから日経平均株価をチェックしながらも具体的に活用できていないという場合は、このように相場の全体感を掴むとともに、個別株銘柄の仕込みのチャンスをうかがうために日経平均株価を活用することを考えてみてはいかがでしょうか。