10月の株価はどうなる? 大暴落発生の月に注目したいのは上方修正と新NISAへの仕込み
《マーケットにはその月ごとに恒例のイベントやアノマリー(経験則)が存在します。それらを知っておけば、突発的なクラッシュさえもチャンスに変えることができます。上昇しやすいもののダークな側面も持ち合わせているという10月相場の特徴とは?》
10月相場は上昇しやすいけれど…
10月相場は株価が上昇しやすい季節性があるものの、突発的なクラッシュには注意したい月です。
上旬は、中国の国慶節による大型連休やノーベル賞発表などのイベントで関連銘柄が盛り上がります。中旬からは、12日に発表される米CPI(消費者物価指数)に注目が集まるほか、11月のMSCI定期銘柄入れ替えに向けた予想が各証券会社から出揃い、投資家の注目を集めます。
そして下旬になると、3月期決算企業の中間決算発表が始まります。また、今年は10月31日〜11月1日に米FOMCが開催されるため、その結果次第では波乱の展開も予想されます。
「クラッシュの月」と「ハロウィン効果」
10月相場の過去の騰落率を見ると、日米ともに勝ち月となることが多く、年末の株高に向けての弾みの月となりやすい傾向があります。これは、年間を通じて最もパフォーマンスの悪い9月を通過したことで、株価が上昇しやすい土壌が出来上がるためです。
その一方で、10月は「クラッシュの月」という悪名高い月でもあります。実際、過去には記録的な大暴落が10月に起こっています。たとえば、1929年の「暗黒の月曜日」や1987年のブラックマンデー、また2008年の10月もリーマンショックののちに急落した月でした。
つまり、10月は株価が上昇しやすい月ではあるものの、大暴落へと発展しやすいダークな顔も持ち合わせている、といえます。今年2023年でいえば、アメリカの金融政策や原油高、中国の地政学リスクや景気減速リスクなどに警戒が必要です。
また10月相場には「ハロウィン効果」と呼ばれるアノマリーもあります。これは「10月末のハロウィンの前後に株を買って翌年の春に売ると儲かる」というもの。過去10年では日本株は6勝4敗、アメリカ株は8勝2敗でいずれも勝ち越しとなっており、まずまず有効なアノマリーといえそうです。
10月の日経平均株価はどう動く?
では、実際の日経平均株価はどのように動いたのでしょうか。過去3年の値動きをチャートで確認してみます。
・2020年10月の日経平均株価
11月に控えるアメリカ大統領選の行方を見極めようとする中、ヨーロッパでは新型コロナの感染拡大による経済停滞への懸念が発生。主要企業の中間決算の発表待ちもあり日経平均株価は停滞が続きました。さらに後半にかけてはアメリカ株の軟調にも引きずられ、22000円台へ陥落してしまいました。
・2021年10月の日経平均株価
原油高によるアメリカの長期金利上昇の影響でグロース株が売られたことに加えて、日本企業のコスト負担増への懸念もあり、日経平均株価は冴えない動きが続きました。その後も、31日投開票の衆院選の結果を見極めたいというムードが相場を支配し、方向感を欠いた展開となりました。
・2022年10月の日経平均株価
米FRBの金融政策の方向感の見通しが定まらず、日経平均株価は揉み合いの動きが続きました。しかし、21日に「11月のFOMCで『12月会合での利上げ幅縮小について議論される』」との報道が出るとアメリカ株は大きく上昇、日本株も追随する動きとなりました。
過去3年のチャートを見てみると、総じて右肩上がりの上昇傾向ではありますが、月末にかけては失速気味となることが見て取れます。「魔の9月相場」を抜けた勢いで上昇となるものの、3月期決算企業の中間決算発表を控えて買い控えが起こりやすい、といった事情があるためです。
また、ここ数年は米FOMCの金融政策の動向にも大きく影響を受けています。2023年も10月31日〜11月1日に予定されている会合で「利上げが見送りになるかどうか」が焦点となりそうです。内容次第では株式市場を大きく揺るがす可能性もあるため、注視しておきたいところです。
今年の中間決算は上方修正ラッシュ?
10月下旬から、3月期決算企業の中間決算の発表が始まります。
中間決算の特徴としては、通期の業績見通しを変える企業が多いことが挙げられます。特に今年度は、9月に証券大手3社が主要企業の経常利益予想を6月発表時点の予想から4〜7%(前年度比)も上方修正したことで、企業業績の上振れ期待が一段と高まっています。
上方修正が相次げば株式市場全体のEPS(1株あたり純利益)も上昇し、日経平均株価や相場全体を押し上げることにもつながります。言い換えれば、「日本株の強さを数字として確認できる」ということです。
長期目線で注目したい銘柄は?
個別株投資の視点から中間決算を見るポイントは、上方修正を「発表しそう」な銘柄や「発表した」銘柄に着目することです。
過去のパターンとして、第1四半期決算で進捗率の高い銘柄や通期予想を上方修正した銘柄は、中間決算でもその勢いが増して上方修正を出すことが多く、「上方修正期待銘柄(=しそうな銘柄)」として投資家の注目を集めやすくなります。
さらに、中間決算時点で上方修正を発表した企業は、本決算でも上方修正を発表する企業が多いので、長期目線でチェックしておきたいところです。
自社株買いや増配などの株主還元策の拡充を発表する企業も、その後の株価上昇への期待大ですので、見逃さないようにしましょう。
10月相場のイベント投資
10月に行われる投資家注目の大イベントを2つ、関連銘柄とあわせてご紹介します。
中国の大型連休でインバウンドはどうなる?
9月29〜10日6日は中国の建国記念日である国慶節による大型連休です。中国の人たちは、この連休を使って国内・海外問わず旅行に出ます。コロナ前には日本でも毎年多くの中国人観光客を迎えていました。
中国政府は8月、日本を含む78か国を対象に団体旅行を解禁しました。コロナから3年半ぶりの海外旅行への意欲が高まっており、日本でもインバウンド需要への期待が高まっています。
しかしながら、中国景気の減速や処理水問題もあり、以前のような団体客数や爆買いは戻らないとの声があるのも事実。一方で、中国国内における調査では、「日本は、中国人が海外旅行で最も行きたい国」となっており、個人レベルでは日本人気の高さは衰え知らずです。
・消費のシフトで関連銘柄も変わる
中国人の消費思考そのものの変化も見逃せません。爆買いに象徴される「モノ消費」から、「スラムダンク」の鎌倉の踏切など日本アニメ・映画の聖地巡礼や、富士山などの有名観光地巡り、日本文化やおもてなしの接客体験といった、日本らしさ体験型の「コト消費」へと興味がシフトしています。
そうした視点から関連銘柄を考えてみると、需要増の恩恵が享受される銘柄としては鉄道・百貨店が挙げられます。
鉄道関連銘柄ではJR東日本<9020>、JR西日本<9021>、小田急電鉄<9007>、東武鉄道<9001>、京阪ホールディングス<9045>など。百貨店では三越伊勢丹ホールディングス<3099>、高島屋<8233>、Jフロントリテイリング<3086>などがあります。
株式市場へも影響を与えるノーベル賞
また、毎年10月はノーベル賞発表の季節。実は株式市場への影響も大きく、特に日本人が受賞すると、その研究に関連する銘柄が物色されます。
2018年は本庶佑氏のノーベル生理学・医学賞受賞で小野薬品工業<4528>が、2019年はリチウムイオン電池の開発で吉野彰氏が化学賞を受賞し、同氏が名誉フェローを務める旭化成<3407>がご祝儀で大きく買われ、2021年も真鍋淑郎氏が物理学賞を受賞して再生エネルギー関連銘柄が注目されました。
2023年のスケジュールは次のとおり。
- 10月2日:生理学・医学賞
- 10月3日:物理学賞
- 10月4日:化学賞
- 10月5日:文学賞
- 10月6日:平和賞
- 10月9日:経済学賞
投資の日を新たなチャンスに
10月4日は「証券投資(トウシ)の日」です。証券投資に興味・関心を持ってほしいという願いから、日本証券業協会が1996年に制定しました。
来年1月からは、「使わない選択肢はない!」ともいわれる画期的な新NISA制度が始まりますが、これにより、長期目線の個人投資家が増加することが考えられます。
そうした投資家増の恩恵を受けそうな高配当銘柄や、株主優待で人気のある大型株などを狙うのであれば、まだ割安なこの10月が最後の仕入れチャンスとなるかもしれません。もしも突発的な暴落が発生した際には、絶好の買い場となりそうです。
相場の季節性やアノマリーを理解して、いまをチャンスに変えていきましょう。