8月の株価はどうなる? 夏枯れなのに熱い!アノマリー×好業績で狙いたい銘柄とは

《8月といえば、お盆に花火大会──。実は株式市場にも、月ごとの「風物詩」があります。お決まりのパターンや上がりやすい株など、その月ならではの「あるある」を知っておけば、ムダな損失を避け、大きなチャンスをつかめるかもしれません》
夏枯れが本格化する8月相場
8月は大きな動きが乏しく、本格的な夏枯れ相場となる月です。
国内外ともに投資家が夏季休暇(サマーバケーション)に入るため、売買代金が細る閑散相場となりがちです。加えて、地政学的リスクが発生しやすい月でもあり、下旬にはジャクソンホール会合(今年は21〜23日)という重要イベントを控え、市場全体に様子見ムードが漂います。
そのような中で、好材料の銘柄やサマーストックには短期筋の資金が流入しやすく、内需関連株や中小型株が一時的に強さを見せるケースも見られます。
日経平均株価の過去20年の8月の月間騰落率(=前月終値と当月終値の比較)は平均でマイナス0.8%となっていて、1月とともに、一年の中でも特に下落しやすい月であることが確認できます。

もちろん、今年も例年どおりの値動きをするとは限りませんが、こうした相場の季節性や、その月の恒例イベントにあわせた値動きのパターンを事前に知っておくことで、それを先回りして投資することもできるようになります。
さらに、月ごとのアノマリーからその傾向や特徴を読み解くことで、効率的な物色がしやすくなります。「アノマリー」とは相場における経験則のことで、根拠はないけどよく当たるものや、相場格言として長く言い伝えられているものも多くあります。
〈参考記事〉最も株高・株安になりやすいのは何月? 意外と知らない株式相場のパターンとは
8月の株価はどう動く?
市場参加者が減少する8月相場は株価が低迷しやすく、大型株よりも株価変動の大きい中小型株に短期資金が流入しやすい、という構図があります。

ただし、今年の8月は、いつもの夏枯れ一辺倒では語れないかもしれません。
最大の注目は、8月1日に発動予定のトランプ関税です。現時点では、交渉次第で見直されるとの見方もあり、マーケットでは「ギリギリまでに回避となるだろう」との楽観論が株価を押し上げる一因となっています。
とはいえ、「TACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつもビビってやめる)」とも揶揄されるトランプ大統領の外交スタイルを鑑みると、土壇場での強行姿勢や揺さぶりには警戒が必要です。
仮に関税が発動されれば、既存のインフレ圧力を強め、企業や消費者に打撃を与える可能性大です。また過度な期待の反動から、株式市場は大きく失望売りにつながるリスクを孕んでいます。
さらに、トランプ大統領はFRBのパウエル議長に対する利下げ要求や辞任要求を繰り返しており、仮に慣例を破って前倒しの後任人事が行われるとなると、パウエル氏の影響力の低下や中央銀行の独立性への疑念から、市場が大きく混乱する可能性もあります。
そのパウエル議長は、21〜23日開催のジャクソンホール会合での講演で、インフレと金融政策の持続性についてどのようなメッセージを出すのかに注目が集まります。
8月のアノマリーで上がる株
そんな8月相場で上昇しやすいのは、どんな銘柄でしょうか? 過去10年(2015年~2024年)の8月相場で勝率が高かった銘柄を見てみましょう。上位には、いずれも8月相場に強い銘柄として相場ではおなじみの企業が並んでいます。

なかでも、この10年で一度も8月に下落したことのない銚子丸<3075>と、9連勝中で足元の株価も好調な東宝<9602>に注目です。この株価上昇のポイントは、7月に行われる決算発表と、「8月は内需が強い」という特有の季節性です。
・銚子丸<3075>
千葉を地盤に、首都圏で郊外型の回転寿司店を直営展開している銚子丸<3075>。回転寿司の老舗ながら「劇場型エンタメ寿司」としてブランド化を強化しています。
7月11日に発表された今期(2026年2月期)の第1四半期決算は、経常利益が5.4億円で、上期計画の8.0億円に対する進捗率は67.1%となっています。また、営業利益率は前年同一期間の5.0%から9.4%へと大きく改善しています(※注:同社は今年から5月決算から2月決算に変更)。
2025年度中にはアメリカ(カルフォルニア)への第1号店を計画しており、さらなる成長が期待されています。

・東宝<9602>
邦画配給最大手の東宝<9602>。テレビ放送や動画配信にも強く、不動産賃貸業でも高収益です。
新規・既存アニメや、ゴジラをはじめとするIP(知的財産)ビジネスの成長などで、中長期的な利益成長が見込まれていることから、株価も好調です。7月15日発表の第1四半期決算では最終益を上方修正し、同時に、中国におけるゴジラのIPライセンス事業推進に向けた提携も発表しました。
足元では、6月6日公開の「国宝」がすでに興行収入56億円突破のヒット(7月14日時点)。今月18日からは話題性の高い「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章」も公開され、さらに一段上の株価水準となるでしょうか?

8月は内需関連株が強い
8月相場は、夏枯れ相場で、かつ地政学的リスクや国際情勢の変動が意識されやすいため、外需系よりも内需関連株が底堅さを見せる傾向があります。さらに今年はトランプ関税の行方も不透明なため、影響の少ない比較的安全な投資先として、これらに資金が向かうと見られます。
特に注目したいのは、小売、外食、ITサービス、建設。
物価高の直撃により実質賃金がマイナスとなる中、消費者のお財布事情は厳しく、その視線はより価格の低いものへ向かっています。100円ショップやドラッグストア、外食であれば低価格業態のファミレスチェーンなど、「生活防衛銘柄」への資金流入が加速する可能性があります。
例えば、100円ショップのセリア<2782>やドラッグストアのサンドラック<9989>、外食なら銚子丸<3075>や、スシローを展開するFOOD & LIFE COMPANIES<3563>、SRSホールディングス<8163>、吉野家ホールディングス<9861>などが有力候補に挙げられます。
さらに、猛暑による“涼”を求める需要から、カフェ業態などはサマーストック(猛暑関連銘柄)としても物色対象に。コメダホールディングス<3543>やサンマルクホールディングス<3395>、京都の老舗チェーン「イノダコーヒ」の子会社化で話題のキーコーヒー<2594>などでしょうか。
加えて、関税の影響を受けにくく日本企業のDX投資やAI投資の恩恵を受けやすいITサービス株にも注目です。野村総合研究所<4307>やTIS<3626>などは、例年8月は底堅く推移しており、下値不安の小さいセクターといえそうです。
同じく8月に強い建設株は、熊谷組<1861>、清水建設<1803>、五洋建設<1893>などが、国土強靭化計画による災害対策や耐震補強、インフラ整備、秋の補正予算への期待といった文脈で、投資家の視線を集めそうです。

8月はエンタメ株も熱い!
任天堂<7974>をはじめとする主要銘柄9社が、自動車の主要9社を時価総額で上回った……という話題もありマーケットで存在感を増すエンタメ関連株。トランプ関税の影響も受けにくく、さらに景気後退懸念にも強いディフェンシブ株としての性質もあわせ持つため、この夏は賑わいそうです。
今年も業績好調のサンリオ<8136>のほか、アニメ事業をはじめ邦画・洋画ともに好調な東宝<9602>、シンガポール拠点のアクティビスト、3Dインベストメント社による大量保有が伝わったスクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>。
さらに、7月24日に「Nintendo Switch 2」向けの人気シリーズを発売予定の任天堂<7974>、2026年に創立70周年を迎える東映アニメ<4816>。
いずれも話題性・成長性の両面で魅力的な存在です。熱い相場も、話題のコンテンツも、エンタメ株でダブルに楽しめる夏にしたいですね。

第1四半期決算はここに注目
8月は、3月期決算企業の第1四半期決算(4〜6月期)が本格化するタイミング。トランプ関税の影響を見越して保守的なガイダンスを出さざるを得ないなか、上方修正や好業績、自社株買いを発表した銘柄には投資家の関心が集まりそうです。
また、このような相場環境下では、政策の後押しが期待される防衛関連株やインバウンド関連株、また、マンガ・アニメなどのIP関連銘柄なども物色対象となりやすいでしょう。
今年はトランプ関税や地政学的リスクが市場に影を落とす一方で、アノマリーや好業績銘柄には確かなチャンスも眠っています。
花火の見事な打ち上げも、入念な仕込みがあってこそ。この夏をチャンスと捉え、好業績銘柄を丁寧に拾っておくことが、秋の実りにつながるかもしれません。