9月の株価はどうなる? 不安定な相場で起爆剤となってくれそうな銘柄とは

岡田禎子
2025年8月23日 12時00分

《9月といえば、台風にお月見。実は株式市場にも、月ごとの「風物詩」があります。お決まりのパターンや上がりやすい株など、その月ならではの「あるある」を知っておけば、ムダな損失を避け、大きなチャンスをつかめるかもしれません》

下落傾向の強い9月相場

9月は下落傾向の強い月として知られ、「暗黒の9月相場」と言われることもあります。

アメリカ株が調整しやすいことから日本株も〝連れ安〟となるケースが目立ち、また、地政学的リスクが発生しやすい月でもあります。しかし例年、メジャーSQ(今年は11日)を底に配当・優待取りの買いなどが入り、月末にかけて底入れを確認する動きが見られます。

そのような中で資金は避難的にディフェンシブ株へ向かいやすく、テーマ性のある銘柄が一時的な強さを見せる傾向があります。また、3月期決算企業における配当・優待取りの動きが活況となりやすいのも9月相場の特徴です。

日経平均株価の過去20年の9月の月間騰落率(=前月終値と当月終値の比較)は平均でプラス0.3%にとどまっており、一年の中でも上昇率が特に低い月であることが確認できます。

もちろん、今年も例年どおりの値動きをするとは限りませんが、こうした相場の季節性や、その月の恒例イベントにあわせた値動きのパターンを事前に知っておくことで、先回りした投資ができるようになります。

さらに、月ごとのアノマリーからその傾向や特徴を読み解くことで、効率的な物色がしやすくなります。「アノマリー」とは相場における経験則のことで、根拠はないけどよく当たるものや、相場格言として長く言い伝えられているものも多くあります。

〈参考記事〉最も株高・株安になりやすいのは何月? 意外と知らない株式相場のパターンとは

9月の株価はどう動く?

9月は日米ともに下落傾向が顕著です。特にアメリカのレイバーデー(9月1日)明けは物色の流れが変わりやすく、警戒が必要です。

また、先物やオプションの特別清算日が重なることから市場全体の需給に影響を及ぼすとされる「メジャーSQ」(第2金曜日)を通過した後は、月末にかけて権利取りの動きが入って需給が改善する、といった構図があります。今年の9月のメジャーSQは11日です。

ただし、今年の9月は例年のパターンとは異なる動きとなる可能性もあります。最大の注目は、9月の16日~17日に行われるFOMC(連邦公開市場委員会)です。

市場では9月の利下げはほぼ織り込まれていると見られ、その利下げ幅や、年内の回数が焦点となっています。政治的な思惑もある中、FRBはインフレの動向や労働市場を見極めながら金融政策を決定する難しい局面にあります。

一方、日本では9月18日〜19日に行われる日銀金融政策決定会合が開かれ、現状維持の可能性が高いものの、利上げ前倒し観測もくすぶっています。日米ともに政策結果次第で株・為替相場が大きく振れる可能性があり、注視が必要です。

9月のアノマリーで上がる株

そんな9月相場で上昇しやすいのは、どんな銘柄でしょうか? 過去10年(2015年~2024年)の9月相場で勝率が高かった銘柄を見てみましょう。上位には、いずれも9月相場に強い銘柄として相場ではおなじみの企業が並んでいます。

特に注目したいのは、この10年で一度も9月に下落していないスバル興業<9632>と、9連勝中で足元の株価も好調なきんでん<1944>です。株価上昇のポイントは9・10月に行われる決算発表と、ディフェンシブ銘柄が強いという9月特有の季節性です。

・スバル興業<9632>

東宝<9602>系の道路メンテナンス公共工事が主力の会社で、映画興業や駐車場、橋梁設計事業も展開しています。

主力の公共工事の安定した需要に加え、レジャー、不動産など多様な収益源、また、子会社合併による経営効率化も投資家の評価につながっています。6月に発表した今期(2026年1月期)の第1四半期決算は、16%の営業増益、営業利益率も19.2%から23%へ上昇しました。

足元では、2月の上場来高値を再び目指す展開。注目の第2四半期決算(中間決算)は9月上旬に発表される予定です。

・きんでん<1944>

関西電力グループの総合設備エンジニアリング企業。AI需要によるデータセンター開設需要の急拡大で注目されています。

7月発表の今期(2026年3月期)第1四半期決算では、経常利益が87.8億円となり前年同期比2.3倍、営業利益率も1.5%→5.1%と業績が急拡大中です。上期の進捗率は5年平均26.7%を上回る36.6%で、株価も目下、上場来高値を更新中です。

第2四半期(中間決算)の決算発表は10月に予定されていますが、好内容となることに期待する買いが9月から入れば株価上昇につながるでしょう。

配当&優待の権利取りが本格化

9月に入ると、3月期決算企業の配当(中間配当)や株主優待の権利取りに向けた動きが本格化します。

9月のような不安定な相場環境では、高配当利回り銘柄が底力を発揮します。個人投資家として特に狙いたいのは、累進配当連続増配の銘柄です。なぜなら、配当狙いの投資の極意は「減配しない銘柄を選択すること」が鍵だからです。

累進配当とは、毎年配当を行い、最低でも横ばいを維持すること。そうした方針を打ち出している銘柄は、安定的な株主還元を重視する姿勢をとっており、かつ、減配リスクが低いため安定的な長期保有に向いています。

代表的な企業は武田薬品工業<4502>、住友商事<8053>、三菱商事<8058>、三菱UFJフィナンシャルグループ<8306>など。

これに対して連続増配の銘柄は、特定の期間にわたって(実績ベースで)毎年配当を増やし続けています。毎年のように増配を実現できる背景には、収益性の向上による増配余力の増加があるため、魅力的な投資対象になり得ます。

代表的な銘柄は、三菱GHキャピタル<8593>や芙蓉総合リース<8424>、みずほリース<8425>など。

また、9月に株主優待の権利が確定する銘柄には、配当+優待のトータル利回りが6%を超えるエクセディ<7278>や、5%以上となる青山商事<8219>、アルマード<4932>、3.8%以上のグンゼ<3002>などがあり、個人投資家に人気です。

好業績なディフェンシブ株を探せ

不安定な9月相場は、ディフェンシブセクターである小売や食品、外食、情報通信などが防衛的に買われやすくなります。

8月末に1:2の株式分割を予定している良品計画<7453>のほか、ここ10年で9勝しているコクヨ<7984>や、外食のあみやき亭<2753>、警備のALSOK<2331>などは業績好調でかつ9月銘柄としても知られています。

情報通信では野村総合研究所<4307>や、秋に行われる日経平均株価の銘柄入れ替えで有力候補となっているSHIFT<3697>にも注目です。

9月は台風の季節でもあり、国策による国土強靭化銘柄としてテーマ性もある大林組<1802>や大成建設<1801>、9月に強い銘柄にも入っているE・Jホールディングス<2153>、また、関連銘柄としてウェザーニューズ<4825>にも期待したいところです。

今年のゲームショウで急騰する銘柄は?

東京ゲームショウ2025」が9月25日~28日に千葉・幕張メッセで開かれます。来場者数25万人超で出展数は過去最大となった2024年を大きく上回る規模となりそうで、株式市場からも熱い視線が注がれています。

このゲームショウでは例年、家庭用ゲーム機メーカーが年末商戦に向けた目玉商品を発表するほか、ゲーム会社から新作ゲームの発表も行われます。多くのメディアがレポートを報道し、YouTuberによってSNSで拡散されるなどして大きな話題となります。

マーケットから特に注目されるのはゲーム関連。新作ゲームの御披露目など何らかのサプライズがあれば、関連銘柄が急騰することも多々あります。昨年はコナミグループ<9766>やカプコン<9697>が急伸し、いずれも上場来高値を更新しました。

代表的な関連銘柄は、任天堂<7974>、スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>、カプコン<9697>、コナミグループ<9766>など。

年末高への起爆剤か、それとも…

「暗黒の9月相場」とも言われる1か月がやってきますが、今年は、アメリカで利下げ再開やAI需要の成長が追い風となって株高が演出されれば、日本株も〝連れ高〟となる可能性もあります。

そして、そんな9月を抜ければ、10月から年末にかけて日本株は上昇しやすいアノマリーがあります。

9月相場が年末高への起爆剤となるか、それとも不発で終わってしまうのか──。見極めが重要な月となりそうですが、アノマリーを理解していれば、どちらに転んでも冷静に対応できるはずです。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP) note:https://note.com/okapirecipe_555
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