10月の株価はどうなる? 悪夢を乗り越え年末高へのプロローグを演じる銘柄とは

《10月といえば、紅葉にハロウィン。実は株式市場にも、月ごとの「風物詩」があります。お決まりのパターンや上がりやすい株など、その月ならではの「あるある」を知っておけば、ムダな損失を避け、大きなチャンスをつかめるかもしれません》
クラッシュ月と言われる10月相場
10月は日米ともに上昇しやすい月です。「魔の9月相場」を抜け、年末まで残り3か月という節目であり、内外の機関投資家も本格的な運用へと積極的に再び動き始めます。
一方で、10月は「クラッシュ月」とも呼ばれ、1987年のブラックマンデーや2008年のリーマンショックなど、歴史的な急落が起きた月としても知られています。年末高への期待とリスクが混在するため、注意深く向き合う必要があります。
そのような中で注目されるのは、インバウンド関連株や半導体関連株のような季節性のあるテーマ株、そして、中間決算での上方修正や好業績の銘柄です。
日経平均株価の過去20年の10月の月間騰落率(=前月終値と当月終値の比較)は平均でプラス0.2%。上昇率自体は一年の中では控えめ。ただしその後の11月・12月と年末高に向けての助走の月となっています。

もちろん、今年も例年どおりの値動きをするとは限りませんが、こうした相場の季節性や、その月の恒例イベントにあわせた値動きのパターンを事前に知っておくことで、先回りした投資ができるようになります。
さらに、月ごとのアノマリーからその傾向や特徴を読み解くことで、効率的な物色がしやすくなります。「アノマリー」とは相場における経験則のことで、根拠はないけどよく当たるものや、相場格言として長く言い伝えられているものも多くあります。
〈参考記事〉最も株高・株安になりやすいのは何月? 意外と知らない株式相場のパターンとは
10月の株価はどう動く?
10月前半は、サマーバケーション明けの機関投資家などが運用再開することで資金が流入して堅調に推移しやすい傾向にあります。後半は、3月期決算企業の中間決算に向けて買い控えとなりやすい、そんな構図です。

ただし、今年の10月は例年以上に重要イベントが目白押しとなっており、定番パターンとは異なる動きを見せる可能性があります。
まず注目されるのが、10月4日に予定されている自民党総裁選挙です。総裁選では、候補者が掲げる政策スタンスによって市場が反応する場面が多くあります。例えば「財政拡張」や「成長戦略」に軸足を置く政策が打ち出されれば、株高を後押しする材料となるでしょう。
一方で、新たな総理大臣が決定した後は、衆議院の解散総選挙の有無や、与野党間の連携の行方が焦点となります。政局の安定度合いは市場心理に直結するので、株価の方向性が左右される可能性もあり、引き続き注視が必要です。
加えて、中央銀行の金融政策も大きなカギを握ります。
この10月は、日銀金融決定会合とFOMCが29日・30日に開催されます。足元の市場では「日本銀行は10月に利上げ」の機運が高まっています。1日に発表される9月の日銀短観で賃金と物価の双方が上昇していると判断されれば、10月利上げの可能性は一段と高まるでしょう。
しかし、ここでも政治情勢が影を落とします。総裁選の行方や野党との交渉、組閣・政策決定などの流れの中で日銀が慎重姿勢を崩さず、10月の会合では静観に回るのでは……との思惑も根強く残っています。
一方、FOMCでは9月に続いて10月も連続利下げに踏み切るようであれば、その後の回数やペースに市場の関心が集まります。
このように、日米の中央銀行の金融政策や日本の政局動向は株・為替市場にとって極めて大きなインパクトを持ちます。結果次第では相場が急変するリスクも想定されるため、一つ一つ丁寧に確認しながら対応していくことが求められます。
10月のアノマリーで上がる株
そんな10月相場で上昇しやすいのは、どんな銘柄でしょうか? 過去10年(2015年~2024年)の10月相場で勝率が高かった銘柄を見てみましょう。上位には、10月相場に強い銘柄として相場ではおなじみの企業が並んでいます。

特に注目したいのは、この10年で一度も10月に下落していない大和ハウス工業<1925>です。株価上昇のポイントは、11月に行われる中間決算と10月特有の季節性です。
・大和ハウス工業<1925>
大和ハウス工業<1925>は総合不動産・住宅メーカーです。コアとなる「賃貸住宅」「商業」「事業施設」の三本柱が事業ポートフォリオの多角化を支え、業績の安定化に寄与している点が強みです。また、今年5月の突然の社長交代はマーケットでも注目を集めました。
足元の株価は8月には上場来高値となり、強い上昇トレンドを形成しています。
大和ハウス工業は第7次中期事業計画で、2026年度に売上高5兆5000億円、営業利益5000億円を掲げていました。すでに2023年度に売上高5兆円を突破し、2024年度は5兆4000億円に達して、目標が1年前倒しで終了予定となるなど、業績は目下絶好調に推移しています。
8月に発表された今期(2026年3月期)の第1四半期決算では、経常利益こそ前年比6.2%減となったものの、通期計画の4300億円に対する進捗率は26%で、5年平均を18%上回る水準です。
加えて、年間配当も165円から170円へと増額修正が発表され、株主還元姿勢が継続していることも確認できます。
住宅関連銘柄は例年、秋口に需要が高まる季節性もあります。さらに、アメリカをはじめとする海外事業の拡大も進んでおり、アメリカの利下げは追い風となるでしょう。

国慶節でインバウンド関連に注目
中国の建国記念日にあたる「国慶節」。2025年は10月1日から8日までの8連休となり、中秋節(10月6日)とも重なるため、年間を通じても最大級の大型連休になります。
中国の国慶節は、帰省や国内外の旅行に出かける人が急増する時期であり、消費が一気に盛り上がる一大イベントです。昨年2024年の国慶節では、海外旅行先ランキングで日本がトップに。2025年もその傾向は続いており、訪日需要は依然として旺盛です。
観光庁によると、今年7月の訪日外国人数は343.7万人で過去最高を更新。なかでも中国本土からの訪日客は7月だけで97.5万人(+25.5%)、累計では569.3万人(+47.9%)と二桁増を維持し、日本人気の根強さを裏付けています。
ただ、昨年よりも円高傾向が続いていることもあって、日本での買い物の割安感は薄れつつあります。加えて、ブランド各社の値上げなども進んでいるため、購買品は高額ブランド品からコスメや医薬品などの低単価の商品にシフトする傾向が見られます。
こうした背景から、関連銘柄として短期的な物色が高まりそう銘柄には、以下のような名前が挙げられます。
- ドラッグストアなど……マツキヨココカラ&カンパニー<3088>、スギホールディングス<7649>、ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナル<7532>
- 化粧品など……店舗体験できるアイスタイル<3660>、着物体験が人気の日本和装ホールディングス<2499>
- レジャーランド……サンリオ<8136>、富士急行<9010>
- 鉄道……京成電鉄<9009>、西日本鉄道<9031>
中間決算の最大のポイントとは?
10月の下旬からは、3月期決算企業の中間決算発表シーズンが始まります。投資家にとって注目すべき最大のポイントは「上方修正」──企業が業績予想を上方に見直すかどうか、です。
中間決算で上方修正が出やすいのは、第1四半期決算時点で会社計画に対する進捗率が高い企業や、第1四半期決算時点で早くも上方修正を実施した企業です。こうした企業は中間決算でもその勢いを継続し、再度の上方修正につながる可能性が高いと考えられます。
例えば、以下のような銘柄があります。
- 日本板硝子<5202>……第1四半期決算で上期計画をすでに上回っている
- 東洋テック<9686>……第1四半期決算での進捗率が高い
- トピー工業<7231>……第1四半期決算での進捗率が高く、高配当銘柄としても人気
- ワコールホールディングス<3591>……5年平均の進捗率より高い
- アドバンテスト<6857>……第1四半期決算で上方修正を出した
- イビデン<4062>……第1四半期決算で上方修正を出した
さらに重要なのが、中間決算で上方修正を発表した銘柄は、その後の本決算でも再度上方修正を出す可能性が非常に高い、という点です。これは過去の傾向として強く見られるもので、その後の投資戦略を立てるうえで大きな手掛かりとなります。
年末高へのプロローグ
10月後半には米IT大手企業の7️〜9月期の決算が一斉に発表されます。市場関係者が固唾を呑んで注目する大事なイベントです。
特に半導体株には、こんなアノマリーがあります──夏場は夏枯れで株価も停滞しがち。ところが、秋以降は需要が再び盛り上がりやすい。
米IT企業の好業績を材料に、アドバンテスト<6857>やディスコ<6146>、東京エレクトロン<8035>といった日経平均株価を引っ張る主力の半導体銘柄が強力な推進力となって、年末にかけての株高ラリーを実現してくれるかもしれません。
10月相場が年末高へのプロローグとなるのか? その見極めをしっかりと行いたいものです。