アップル、グーグル、メタ… それでも独占的企業が投資先として魅力な理由

朋川雅紀
2025年9月27日 12時00分

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独占的企業の魅力

私は好んで、競争優位性を備えた、いわば「独占的企業」に投資をしています。

独占的企業とはどのような企業でしょうか。その特徴は、将来にわたってキャッシュフローを生み出し続けることができるということです。

独占的なビジネスを行っている企業はそれぞれに違っていますが、多くの場合、次の特徴のいくつかを併せ持っているものです。その特徴というのは、「独自のテクノロジー」「ネットワーク効果」「規模の経済」、そして「ブランド」です。

・独自のテクノロジー

独自のテクノロジーは、ビジネスのいちばん根本的な優位性になります。それがあれば、自社の商品やサービスを模倣されることはほとんどありません。

たとえばグーグル社のアルゴリズムは、他社より優れた検索結果を生み出します。ビジネスの核となる検索エンジンの信頼性と盤石さに加えて、グーグルはスピードの速い検索結果表示と確度の高い検索ワードの自動候補表示という独自のテクノロジーを併せ持っています。

独自のテクノロジーは、本物の独占的優位性をもたらすようないくつかの重要な点で、二番手よりも圧倒的に優れていなければなりません。そうでなければ、おそらくそこそこの改善としか見なされず、特にすでに混みあった市場での売り込みは難しいでしょう。

圧倒的に優れたものを作るには、まったく新しい何かを発明するのがいちばんです。それまでまったく何もなかったところで価値あるものを作れば、価値の増加は理論的には無限大となります。

たとえば、眠らなくてもよくなる安全な薬や、禿げをなくす薬は、確実に独占ビジネスとなるでしょう。

または、既存のソリューションを劇的に改善してもいいかもしれません。劇的な改善ができれば、競争から抜け出せます。

たとえばペイパルは、イーベイでの取引を劇的に改善しました。小切手を送れば7日から10日はかかるところを、買い手がオークション終了後直ちに支払いできるようにしました。売り手も即座に代金を受け取ることができ、小切手と違って不渡りになることもありません。

包括的な優れたデザインによっても、劇的な改善が可能になります。たとえば、アップルはiPadを世に出し、デザインを大幅に改善し、それまで「売れないもの」だったタブレットを役立つものに変えることに成功しました。

・ネットワーク効果

利用者の数が増えるにつれて、より利便性が高まるのがネットワーク効果です。たとえば、友だちみんながフェイスブックを使っていれば、自分もフェイスブックを使うようになります。

ネットワーク効果を狙うのであれば、最初は小さな市場から始めたほうがいいかもしれません。フェイスブックは、ハーバードの学生だけの間で始まりました。

・規模の経済

独占的企業は、規模が拡大すればさらに強くなります。プロダクトの開発に関わる固定費(エンジニアリング、経営管理、家賃)は販売の拡大によって薄めることができます。

ソフトウェアのビジネスは、販売拡大にかかる限界コスト(生産量が1つ拡大することによるコストの増加分)はほぼゼロに近くなるため、劇的な規模の経済の恩恵を受けられます。

一方で、多くの企業にとっての規模の拡大によるメリットは限定的です。サービス業では特に独占は難しくなります。

たとえば、ヨガスタジオを経営している場合、顧客の数は限られます。インストラクターを雇ったり、店舗を増やしたりして拡大することはできるかもしれませんが、利益率はかなり低いいままである可能性が高くなります。

・ブランディング

ブランドとは、そもそも企業に固有のもので、強いブランドを作ることは独占への強力な手段となります。

アップルは、高いブランド力を持っている典型的な企業です。

魅力的な外観と慎重に選ばれた素材、アップルストアの垢抜けたデザイン、顧客体験への厳格なコントロール、ハイエンドメーカーとしての価格設定、そして今も残るスティーブ・ジョブズのカリスマ性など全てが、アップル製品をユニークな存在にしています。

独占を築くには

ブランド、規模、ネットワーク効果、そして独自のテクノロジーのいくつかを組み合わせることが独占につながります。

小さい市場から始めるほうが成功する確率は高くなると思います。というのは、大きな市場よりも小さな市場のほうが支配しやすいからです。

最初に狙うべき理想の市場は、少数の特定ユーザーが集中していながら、ライバルがほとんど、あるいは、まったくいない市場です。大きな市場は避けるべきで、すでにライバルのいる市場はもっとも避けるべき最悪の市場になります。

大きな市場は、参入余地がないか、誰にでも参入できるために目標のシェアを達成することがほとんど不可能かのどちらかになります。たとえ小さな足掛かりを得たとしても、生き残るだけで精一杯になるでしょう。壮絶な競争から利益が出ることはほとんどありません。

ニッチ市場を創造し支配したら、次は関連する少し大きな市場に徐々に拡大していけばいいでしょう。アマゾンはそのお手本と言えます。アマゾンは、書籍からスタートし、本に近い周辺市場のCD、DVDへと拡大を続けていきました。

独占的企業への投資

このように競争優位性を備えた独占的企業は、長期にわたるキャッシュフローが期待できるため、投資対象としての魅力を備えています。投資先を検討する際には、こうした視点で企業を見てみるのもいいでしょう。

《参考記事》アメリカを牽引する「マグニフィセント・セブン」 日本株に与える影響は?

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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