株式投資における「3年」の意味について考える

Alex_Po /
《株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 実は、どちらにも「共通点」があります。30年以上の実績をもつファンドマネージャーが「一流の投資家」の条件を明かす【情熱の株式投資論】》
「3年」という数字が持つ意味
私は「3年」という期間に非常に大きな重要性を見出しています。
例えば、「石の上にも3年」ということわざがあります。皆さんもご存じのように、「どんなに苦しくて大変でも、じっと辛抱すれば必ず報われる」という意味です。とても冷たい石でも、その上に3年も座っていれば温まる、という意味が語源になっているようです。
「3年」という数字自体に特別な意味があるわけではありませんが、基本的には「長い」という意味が含まれています。
長期の定義にはいろいろありますが、私自身は、株式投資というものを──その時々で銘柄は変わるかもしれませんが──10年、20年、30年……と続けて行うものだと考えています。
ただし、個別企業への投資を考える場合には「3年」に注目し、「3年」をひとつの目処として考えています。言い換えると、「3年くらいは持ち続けられる企業」を中心に投資対象を物色しているのです。
具体的には、ライバル企業に対する優位性がある程度の期間(少なくとも3~5年)持続できるどうかを必ずチェックします。「将来をイメージできる」という意味で、3~5年はしっくり来ます。技術革新の波が次から次へと押し寄せる昨今、10年を超えた企業の姿は想像しにくいものです。
株価が2年上げたら慎重に
景気や株価のサイクルを考えるうえでも、3年はとても役に立つ定規です。「相場が2年上げたら慎重に!」は私のモットーです。実際、株価が上昇し始めて2年経ったら売る(株の比率を減らす)準備をし、迷った場合は買いよりも売りを優先します。
とりわけ株価の上げ局面では、この「2年」というのはとても有効です。たとえば、アメリカ株(S&P500)は、2016年2月に底を打って、2018年9月に天井をつけました。その期間は2年7か月。
コロナ禍で株価が大きく下落して2020年3月に底を打ったケースでは、2022年1月に天井を付けていて、3年目を迎えることなく株価は天井を迎えました(1年10か月)。ただ、この間の株価上昇があまりにも大きかったことを考慮すると、ある程度は説明が付くと思います。
その意味で、「株価が2年上げたら慎重に!」は大きく間違っていなかったと言えるでしょう。
投資家心理と株価サイクル
投資家心理という側面から考えても、2~3年という期間はある程度、説明が付きます。
気の早い、あるいは先見の明がある投資家は、世の中がまだ景気の回復に対して懐疑的で悲観的なときに、「近い将来に景気の回復が始まる」という見通しのもとで株を買い始めます。いわゆる「悪材料出尽くし」というのがその根拠です。
そして、株価が1年も上昇し続けると、それまで悲観的だった投資家の中に「ひょっとしたら景気が回復しているのではないか」と期待を持ち始める者が出てきます。そして、彼らも株を買い始めます。経済指標にもちらほら良い兆しが見え始めますが、世の中の大多数はまだ悲観的です。
株価の上昇が2年を過ぎる頃(3年目)になると、世の中のセンチメントが大きく変わります。それまで弱気だった人が景気回復を叫び、新聞・雑誌などで株価の上昇を頻繁に報道するようになります。自分のまわりでは株で儲けた人が増え、知人からは株を買うように勧められます。
こうなると、相場は天井に近くなります。いわゆる「好材料出尽くし」です。
株価には「ゆるやかに上昇し、急激に下落する」性質があります。これは、一般的に投資家は買いには慎重で、こわごわ少しずつ買うのに対して、売りは素早く行動するからです。
株を持っていなければ損失のリスクは発生しないのですから、投資家の行動はうなずけます。「投げ売り」という言葉が存在することからも、買いとの違いは明白です。株価の上昇が3年以上続くことは珍しくありませんが、下落が3年以上続くことはめったにありません。
基本的には「3年」が投資期間のひとつの目処となる、ということです。
これは、慎重な、あるいは疑り深い市場参加者が“変化”を認識するのに3年程度はかかる、という前提に立っています。というのも、通常、変化というのはゆっくり起きるからです。白から出発して、徐々に黒が加わって灰色になり、そして黒に変わっていきます。
経済指標に関して言えば、景気が減速し始めた当初は、好材料の中に悪材料がちらほら見受けられます。やがて悪材料が目立ち始め、最終的には悪材料が支配的となります。一進一退を繰り返しながら、変化してゆくものです。
したがって、市場参加者も徐々にこの変化を認識し、情報を完全に消化するのに3年前後の時間を要するのです。









