アフターコロナの相場で私が注目する銘柄・無視する銘柄
コロナで相場はどう変わる?
「春だけじゃなく夏もムダに失うのね。失われた144日は二度と戻らない」
動画配信サービス・ネットフリックスでランキング1位を独走した、2012年のアメリカ映画「コンティジョン」に出てくるセリフです。この映画は、まるで新型コロナウイルス禍を予見していたかのようだと話題になりました。
ネットフリックス<NFLX>といえば巣ごもり銘柄の代表格ですが、コロナショック後に見せた大きな飛躍に「やっぱり来た!」と時代の大きな変化を感じずにはいられませんでした。
株式市場というモンスターは、いつの時代も「変化」が大好物。
リーマンショック後にアメリカでコクーン(巣ごもり)現象が起きてアマゾン<AMZN>が大きく飛躍したように、今後の相場を見据えたとき、コロナの影響によって変化した世界で大きく羽ばたく新ビジネスを行う企業に注目しておく必要がある、と個人的には考えています。
アフターコロナの相場で私が注目したい銘柄、そして無視するであろう銘柄について、いくつかご紹介します。あくまで個人的見解である点にご留意いただき、何かしらのヒントにしていただければ幸いです。
アフターコロナに注目のテーマ・銘柄は?
新型コロナウイルスのパンデミックによって、私たちの社会やビジネス、日常生活が大きく変化したと同時に、多くの課題も見つかりました。そして、それらに対する解決策として、すでに次世代のビジネスが次々に台頭してきています。
注目1:働き方改革
なかでも、人の自由な移動が制限される中では「遠隔化」がひとつのキーワードになりそうだと感じています。特に「テレワーク」「リモートワーク」など、人々の働き方に大きな変化がありました。
もともと「働き方改革」は国が強力に推進していたテーマであり、今後の災害対策や感染症対策、五輪の混雑解消などともあわせて、コロナ収束後も、大企業だけでなく中小企業でも導入が加速すると考えられ、アフターコロナの重要な投資テーマになりそうです。
・アセンテック<3565>
テレワークの代表的銘柄であるアセンテック<3565>は、仮想デスクトップ関連製品の開発・販売を行っている企業です。
デスクトップ環境をサーバーに集約し、ネットワークを介してデスクトップ画面を配信、PCやタブレットなどの端末で利用できるのが特徴。端末にデータがないという高いセキュリティ性、場所や利用端末に囚われない機動的なワークスタイルの変革といった側面からも注目され、導入が進んでいます。
2020年1月期は18.4%増の4億5100万円の経常増益、2021月1月期も12%増益予想(5億500万円)と3期連続となる過去最高益を見込んでいます。また、2020年3月には、継続収入ビジネスの拡大など更なる成長に向けた事業戦略を発表しています。
注目2:遠隔医療・遠隔教育
同じく「遠隔化」関連として、岩盤だった規制に風穴のあいたオンライン診療などの「遠隔医療」や「遠隔教育(教育ICT)」の本格導入の加速、さらに、これら遠隔化サービスのインフラに必要不可欠な5G関連や、サービスの質や合理性を高めるためのAI関連銘柄などにも注目しておきたいところです。
・エムスリー<2413>
遠隔医療関連で注目したいのはエムスリー<2413>。医療情報提供サイト「m3.com」を運営する企業であり、「医のグーグル」ともいわれる、日本発の世界レベルの医療従事者向けITプラットフォーマーです。国内の医師の約9割が登録しているほか、世界550万人の医師が利用していると言われています。
LINE<3938>と共同出資する「LINEヘルスケア」では、医師に健康相談できるオンラインサービスを無償で提供しています。
2020年3月期は11.9%増の346億円の経常増益で、19期連続で過去最高益を更新しました。足元の株価は、オンライン診療の規制緩和で医療のIT化が進むと期待され、年初来高値を更新しています。オンライン診療関連銘柄として、また、高収益・高成長銘柄としても注目しておきたい銘柄です。
・ジャストシステム<4686>
遠隔教育(教育ICT)関連銘柄では、ジャストシステム<4686>に注目したいと思います。日本語変換や法人向けソフト等を展開し、キーエンス<6861>と資本提携しています。
小中学生向けのタブレットで学ぶクラウド型通信教育「スマイルゼミ」が好調のほか、小学校向け学習授業支援ソフト「ジャストスマイルシリーズ」は全国の小学校の85%に導入され、2020年度から小学校で必修となる英語やプログラミング講座も提供しています。
2020年3月期の経常利益は70.3%増の131億円に拡大し、2期連続で過去最高益を更新しました。また、直近3か月(第4四半期)の営業利益率も、前年同期17.0%から23.7%へと大幅に上昇。教育ICT需要拡大で、中長期的な成長が見込まれます。
注目3:M&A
コロナ渦で経済活動が大幅に停滞したことで、苦境に追い込まれた中小企業の倒産・廃業が増加しています。そんな中で、後継者不足の問題も加わって、事業継承の手段としての事業再編が起こる可能性があると考えられます。そうした理由から、M&A仲介銘柄にも注目しています。
・日本M&Aセンター<2127>
中堅・中小企業に特化したM&A仲介におけるリーディングカンパニーが、日本M&Aセンター<2127>です。約350人のM&A専門コンサルタントを抱え、ほぼ全ての業種でM&Aを支援。また、上場支援や中堅・中小経営者向けのプラットフォーム運営もしています。
2020年3月期の経常利益は15.4%増の144億円となり、10期連続で過去最高益を更新。足元の株価も、3月の安値から50%上昇するなど大きくリバウンドしています。
注目4:コロナで大きく売り込まれた銘柄
コロナ後の相場で注目したい銘柄として、新型コロナウイルスの影響を直接のダメージとして受けたために業績悪化懸念から大きく売り込まれ、株価を下げた銘柄も挙げたいと思います。例えば、外食関連やレジャー関連、化粧品関連などです。
このような銘柄は、たしかに足元の業績は大変厳しいものがありますが、新型コロナウイルスがいよいよ収束となれば、業績・株価ともにV字回復になる期待を持てるからです。
ただし、「大きく売り込まれた株価は大きく回復する」は株式市場のひとつの真実ではありますが、必ずしもコロナ以前と同じに戻れるわけではなく、コロナ後の新しい世界に対応できるかどうかを峻別する必要があります。
例えば外食では、モバイルオーダー&ペイ(来店客が自身のモバイル端末を使って注文&決済できる仕組み)を導入しているところ、レジャー関連なら圧倒的なブランド力とファンがいるオリエンタルランド<4661> などは、コロナ後にも期待ができそうです。
化粧品は、足元は大変な落ち込みようですが、経済活動が再開された暁には回復も早いと見ています。回復期に入ったときに鍵となるのは、どれだけプロモーションを行い、客を取り込めるか。個人的には、販売力とブランド力があり、中国へのポテンシャルも高い資生堂<4911>に引き続き注目しています。
・吉野家ホールディングス<9861>
老舗牛丼チェーン「吉野家」を全国展開している吉野家ホールディングス<9861>。2020年2月期の営業利益は、前期1億円から38倍の39.3億円という大幅増益となり、7期連続の増収となりました(2021年2月期については、適切かつ合理的な業績予想の算出が困難として見通しを発表せず)。
株価は、業績の好調から2020年1月には3,000円台を突破しましたが、コロナ禍の3月には1,709円まで大きく下落しました。
同社では2月半ばから「スマホオーダー」を開始。日本マクドナルドホールディングス<2702>は2月にほぼ全店舗で対応、牛丼チェーン「すき家」(ゼンショーホールディングス <7550>)や「スターバックス」もモバイル注文の仕組みをすでに導入しています。
モバイルオーダーは店舗運営の省力化・効力化が期待できるとともに、来店客の行列や待ち時間の回避など顧客満足度のアップにもつながります。アフターコロナでの飲食店の復活には、いかに客足を店舗に向かわせるかが焦点ですが、モバイルオーダー&ペイがひとつの答えになるかもしれません。
アフターコロナで無視したい銘柄は?
コロナ後の相場で無視したい銘柄としては、超低金利で利ザヤを稼げない銀行株や、インバウンド関連銘柄の中でも売上比率で訪日外国人割合が高い百貨店や都市型小売店(家電、ドラックストア、ディスカウントストア)などです。
なぜなら、コロナ収束後も訪日外国人数が元の水準に戻るには一定期間かかるとみられ、その分、業績回復のスピードは鈍くなり、株価も低迷が続くと考えられるからです。
成功の種はすぐそこに
冒頭で紹介した映画では、「時が止まる薬も発明してほしい」と主人公の娘が言います。
株式市場は刻々と変化し、投資家の関心はすでにコロナ収束後のテーマに移ろうとしています。まだまだ行動に制限のある今、自身の身近に感じられる「変化」こそ、将来の成功の種になるかもしれません。