猛暑到来で株価はどうなる? 気になる7月相場の特徴とは【今月の株価はどうなる?】
《株式市場には、一定の季節性や、法則というわけでもないけれど参考にされやすい経験則(アノマリー)など、ある種のパターンが存在します。過去の例からひもとく7月の株式相場の特徴とは?》
7月は夏枯れの時期
7月は「夏枯れ相場」という言葉をよく耳にします。7月から8月にかけて市場の取引量が減り、相場の動きが鈍ることを指しています。
要因は諸説ありますが、市場参加者が8月にかけて夏季休暇を取るために休み前にポジションを手仕舞うことや、6月に株主総会シーズンが一巡することなども影響していると思われます。
また、7月下旬からは4〜6月期の決算発表シーズンとなり、中旬までは相場を左右する個別の材料に乏しくなりやすいことも背景と考えられます。
7月の日経平均株価はどう動く?
そんな7月相場で、株価が「強い日」「弱い日」はいつになりそうでしょうか? それを知るために、7月の日経平均株価の過去データを振り返りましょう。日経平均株価についての公式データを公開している「日経平均プロフィル」を参照します。
戦後、東京証券取引所が立ち会いを再開した1949年5月から直近までの日経平均株価の日々の騰落率を確認してみると、7月に日経平均株価が上昇した確率(勝率)が高かったのは「1日」で66.19%でした。
反対に、7月で最も日経平均株価の上昇する確率が低かった(=下がる確率が高かった)のは、「22日」の33.93%となっています。
過去20年では小動きの年も多い
日経平均株価の月間の騰落状況(前月末終値と当月末終値の比較)を、2000年から見てみます。
6月末比では、月間で上昇したのが10回、下落が12回と、上昇した確率は45%で下落した確率の55%を下回りました。特に2000年以降の3年間は毎年1割近くの下落となった一方で、小動きとなった年も5回と多い結果となりました。
騰落率で見ると下落した年の下落率が大きく、上昇した年の上昇率が小幅にとどまることも多かったため、平均の騰落率はマイナス0.9%となっています。
下落率が最も高かったのは2000年の7月で、日経平均株価は月間で9.7%下落しました。当時はインターネットの黎明期で、まさにITバブルのピークとなっていました。
ネットの広がりでEコマースが注目され始めたのもこの頃で、アメリカではアマゾンドットコムやイーベイなどの株価が急上昇し、日本ではヤフー(現・Zホールディングス)の株価が1株1億円(分割修正前)を超えたのも、ITバブルならではの現象でした。
連邦準備制度理事会(FRB)はITバブル進行による景気加熱を防ぐため、1999年6月から利上げを開始し、2000年5月に政策金利を0.5%と大幅に引き上げました。そのため低金利を背景に買われていたIT株などが下落基調となっていたことも、下落率の高さの背景となっています。
反対に上昇率が最も高かったのは2016年の7月で日経平均株価は6.4%上昇しました。この年の6月23日、イギリスは国民投票でEU(欧州連合)からの離脱を決定。事前の世論調査では残留派が優勢との報道もあったため、金融市場に波乱が広がり、世界同時株安の動きとなりました。
しかし、その後は実際の離脱までに交渉や協議を重ね、経済や交易などに緩和措置が取られたり、各国が景気悪化を防ぐために金融緩和などを行うとの期待が広がり、株価は反発しました。
直近の7月の日経平均株価は?
それでは、最近の7月の日経平均株価の値動きはどうだったのでしょうか? 過去3年間のチャートを見ながら振り返りましょう。
・2019年7月の日経平均株価
2019年7月の日経平均株価は月間で1.2%上昇しました。
この年は年初からアメリカと中国の貿易摩擦への警戒が続いていましたが、景気対策のためのFRBによる金利の引き下げへの期待や、6月に開催された米中首脳会談で米中摩擦への懸念が後退したことが、株式市場を下支えしました。
・2020年7月の日経平均株価
2020年7月の日経平均株価は月間で2.6%下落しました。
海外の景気後退への懸念で円高ドル安が進行し、輸出関連株を下押ししたほか、国内では新型コロナの感染が再度拡大し、日本株の売り材料となりました。
また、月内には知的財産などをめぐって米中が相次いで双方の総領事館を閉鎖させたことも、米中摩擦の激化が連想され、米国株などの下押し圧力となりました。
・2021年7月の日経平均株価
2021年7月の日経平均株価は月間で5.2%下落しました。
欧米では好調な4〜6月期決算などを受けて、株価が堅調に推移した一方で、国内では新型コロナの感染者数が急速に拡大し、東京など各地域で4回目の緊急事態宣言が発令されたことを受け、日本株が売られ、海外に比べて出遅れが目立つ相場展開となりました。
直近3年間で見ると、日経平均株価の7月の勝敗は1勝2敗の負け越しとなっています。
株価を動かす7月のイベント
毎年この季節が近づくと前述のように取引高が細り、主力株よりもテーマ性のある個別株が物色される傾向になることもあり、「サマーストック」、猛暑関連銘柄への関心が高まる時期でもあります。
2022年も、群馬県伊勢崎市では40度の気温が観測され、梅雨明け前の6月としては観測史上初となりました。また、猛暑による電力不足への警戒から政府は節電を呼びかけ、節電ポイントの導入についても物議を醸し出しています。
関連銘柄は幅広く、例えばエアコンのダイキン工業<6367>や富士通ゼネラル<6755>、家電量販店のビックカメラ<3048>、住設機器やディスカウント家電の山善<8051>のほか、ビールやアルコール飲料のサッポロホールディングス<2501>、キリン<2503>、宝ホールディングス<2531>、業務用冷蔵ショーケースや製氷機器のホシザキ<6465>なども挙げられます。
もっとも、株式市場で有名な格言として、こんなふうに言われています。
「麦わら帽子は冬に買え」
この格言の通り、一部の銘柄は猛暑到来を見越して早めに買われていることも多いため、その点には留意しておきたいところです。
3年ぶりの参院選で物色される株
また今年は、7月10日に投開票が行われる参議院選挙にも市場の関心が高まっています。参議院議員の任期は6年で、3年ごとに半数を改選する選挙が行われます。衆議院と違って解散がないので、議員の任期終了後の30日以内という規定により、3年ごとの7月頃に参院選が行われます。
事前の世論調査などでは、今のところ与党勢力で過半数を獲得するとの予想が多いようです。一般的なセオリーとして、政権の安定は経済などの政策運営が進みやすいとの連想から、とりわけ外国人投資家には好意的に受け止められる傾向があります。
そのほかに、個別の政策への期待でテーマ株への物色も広がっています。円安の加速で海外から見た日本のモノやサービスの割安感が高まっており、GoToトラベルのような新たな旅行支援策による鉄道、航空、ホテル、レジャーなどのアフターコロナ関連株への期待も高まります。
また、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」に盛り込まれた「人への投資」として人材・教育関連銘柄、「防衛力の抜本的な強化」で三菱重工業<7011>やIHI<7013>などの重工業銘柄、「生涯を通じた歯科健診」で歯愛メディカル<3540>なども買いが続いており、引き続き注目されそうです。
第一四半期の決算発表に注目
7月下旬からは4〜6月期の決算発表シーズンとなります。3月期決算の企業にとっては第一四半期です。
今年の4〜6月期は、国内ではゴールディウィークあたりから本格的に人の流れも回復し、外出機会も増えていることから、コロナの影響で落ち込んだサービス業などの業績の回復が注目されます。また、中国では6月にロックダウン解除され、輸出関連株など外需企業の業績動向も注視されます。
ただ、インフレやウクライナ情勢による不透明感は続いており、企業は第一四半期の段階では慎重な見通しを継続するとの見方もあります。
枯れても実は「売りなし」か?
日経平均株価の過去データをもとに、7月相場の特徴をいくつかご紹介しました。
今年は参院選もありますが、決算発表シーズン前の谷間となることで、取引量の減少による手控え相場となる傾向があります。
もっとも「閑散に売りなし」という相場格言もありますので、売りものをこなしつつ、地合いによっては秋に向けた値固めの時期となる場合もあるでしょう。引き続き、相場の方向性に留意していきたい時期とも言えます。