売り逃げ? 実は上昇する? 気になる5月相場の特徴とは【今月の株価はどうなる?】
《株式市場には、一定の季節性や、法則というわけでもないけれど参考にされやすい経験則(アノマリー)など、ある種のパターンが存在します。過去からひもとく5月の株式相場の特徴とは?》
5月は売り逃げの月?
5月といえば「セルインメイ(Sell in may and go away=5月に売り抜けろ)」という有名な格言を思い浮かべる方も多いでしょう。
最近では、その後に続く「Don’t come back until St Leger day.(ただし、セントレジャーデイに戻ってきなさい)」をご存じの方も多いと思います。
セントレジャーデイはイギリスで毎年9月の2週目の土曜日に行われる競馬の由緒あるクラシックレースです。
「5月に売れ」と言われる経験則の背景は諸説あります。例えばサマーラリーと言われる夏相場は例年、売買が細りやすく相場が閑散とすること、アメリカでは確定申告の還付金の受け取りが一巡するタイミングであること、などが言われています。
5月の日経平均株価は意外と上がる?
セルインメイについて検証するため、5月の日経平均株価の過去データを振り返ります。日経平均株価についての公式データを公開している「日経平均プロフィル」を参照します。
戦後、東京証券取引所が立ち会いを再開した1949年5月から直近までの日経平均株価の日々の騰落率を確認してみると、5月で日経平均株価が上昇した確率(=勝率)が高いのは「4日」で、騰落率は76.67%です。
憲法記念日(3日)とこどもの日(5日)に挟まれた「4日」は、現在はみどりの日として祝日となり、東京証券取引所も休日です。ただ、1986年に祝日法が制定されて祝日と祝日に挟まれた平日を休日とする取り扱いがスタートする以前は、連休の谷間であっても取引が行われる場合がありました。
4日はゴールデンウィークの終盤となることもあり、積極的に売り込む動きも少ないことから、勝率が8割近くになったと思われます。
ちなみに次点は「1日」の73.21%で、こちらも連休の谷間ながら高い上昇確率となっています。反対に、5月で最も日経平均株価の上昇する確率が低かったのは「16日」で、騰落率は38.18%と4割を切っています。
過去20年では上がった5月のほうが多い
月間の日経平均株価の騰落状況を2000年から見てみましょう。4月末比では月間で上昇したのが12回、下落が10回と、セルインメイのイメージとは裏腹に、過去20年では上昇した年が多い結果となりました。
ただ、下落した年の下落率は大きく1割前後の下げとなる年も多い傾向となっています。下落率が最も高かったのは2010年の5月で、日経平均株価は月間で11.7%も下落しました。この年はギリシャなど南欧の財政不安が広がり相場の重しとなりました。
アメリカの良好な経済指標などを受けて4月には年間最高値をつける場面もありましたが、格付け会社が南欧諸国の国債の格付けを引き下げるなどの動きもあり、円高・株安の流れとなりました。
また、2000年からの月間騰落率を平均してみると▲0.5%となっています。上昇する確率が高いものの下げたときの下落率は大きくなる、という傾向があるようです。こうした傾向もまた、投資家が5月が近づくとセルインメイというアノマリーを思い出すのに一役買っているのかもしれません。
直近の5月の日経平均株価は?
それでは、最近の5月の日経平均株価の値動きはどうだったのでしょうか? 過去3年間のチャートを見ながら振り返りましょう。
・2019年5月の日経平均株価
2019年5月の日経平均株価は月間で7.4%下落しました。激化した米中の貿易摩擦への懸念が後退し、年初からの上昇基調が続いていた年で、日経平均株価は年初からの4か月間で約1割ほど上昇していました。
しかし、ゴールデンウィークの連休中に米トランプ前大統領がツイッターで中国に対しての関税を大幅に引き上げるとツイートしたことを受けて、原油や株式相場が急落し、日経平均株価も大きく下落しました。
・2020年5月の日経平均株価
2020年5月の日経平均株価は月間で8.3%上昇しました。上昇率は過去21年で最大となっています。
年初からコロナの感染が拡大し、4月には東京や京都・大阪・兵庫に緊急事態宣言が発令されました。しかし海外では、アメリカで大型の経済対策が打ち出され、緊急の利下げや大規模な資産買入の増額、ヨーロッパでも巨額の金融緩和が決定されたことを受け、戻り相場が5月にかけても続きました。
・2021年5月の日経平均株価
2021年5月の日経平均株価は月間で0.2%上昇しました。年初から買われてわれていたグロース株やハイテク株に利益確定売りが入りましたが、各国で新型コロナワクチンの接種が進むなど景気の回復期待が強まり、月後半にかけて買い戻されて月間では“行ってこい”の展開でした。
過去3年間で見ると、日経平均株価の5月の勝敗は2勝1敗となりますが、2021年はほぼ変わらずのため実質1勝1敗と見たほうがいいでしょう。
今年はインフレの加速やウクライナ情勢も引き続き混迷していることから、上値追いには慎重な見方をする投資家も多そうです。
株価を動かす5月のイベント
今年はアメリカの連邦議会で上院の3分の1と下院全員が改選される「中間選挙」が行われる年です。11月8日に本選挙が予定されており、これに向けて5月から各州で共和党や民主党の代議員を選ぶ予備選挙が本格化します。
バイデン大統領の民主党は現時点で上下院でわずかながら多数派を確保していますが、中間選挙で共和党に票が流れて上下院どちらかで多数派の座を明け渡してしまった場合には、今後の法案を通過させることが難しくなるため政策運営に不透明感が出てしまいます。
また、3日と4日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)を受けて、FRB(連邦準備制度理事会)は政策金利をこれまでの倍となる0.5%引き上げると同時に「量的引き締め」を行うことを発表。ただ、0.75%の利上げは「活発な議論してない」との発言があり、ダウ平均株価は大きく反発しました。
連休明けの決算発表後半戦に注目
日本では、連休後に決算発表シーズンの後半戦がスタートします。
例年のパターンとしては、4月上旬に製造業の安川電機<6506>、下旬に日本電産<6594>と製造業などの決算が発表されてシーズンがスタートし、5月の後半戦ではトヨタ自動車<7203>や商社、銀行、生損保などの決算が発表され一巡する、という流れがおなじみです。
ちなみに、2022年は5月13日に1200社超の決算発表が集中しており、終盤のピークとなります。
この決算発表では、3月期決算企業の「終わった前期の着地」と「新たに始まった今期の見通し」が注目されます。特に今年はインフレによるコスト上昇、ウクライナ情勢、コロナの影響などネガティブな要因が多いことから、例年以上に保守的な今期見通しを出す企業が多くなりそうです。
決算内容を受けて個別の反応で株価も大きく上下する可能性がありますので、注意が必要です。
休みを有効利用して対策を
日経平均株価の過去データをもとに、5月相場の特徴をいくつかご紹介しました。
これらのデータやアノマリーは、あくまで過去のデータや経験則に過ぎませんが、市場参加者の投資心理には一定の影響を与えていると考えられます。特に「セルインメイ」については個人投資家の間でも広く認知されているため、結果的にアノマリーどおりに売られる、という減少も起きがちです。
2022年は波乱の相場展開が続いていますが、こうしたときこそ、過去の傾向を振り返ってみる良いタイミングかもしれません。ゴールデンウィークも終盤ですが、そんな時間をちょっと作ってみてはいかがでしょうか。