11月の株価はどうなる? 年末高に向けて絶好の助走をつける銘柄とは
《11月といえば、七五三やボジョレーヌーボー。実は株式市場にも、月ごとの「風物詩」があります。お決まりのパターンや上がりやすい株など、その月ならではの「あるある」を知っておけば、ムダな損失を避け、大きなチャンスをつかめるかもしれません》
11月相場は年末高に向けた助走
11月は月末に向けて上昇しやすい月です。「恐怖の10月」を乗り越え、投資家心理も徐々にリスクオンに傾きやすくなります。
上旬は、3月期決算企業の決算発表(中間決算)が相次ぐため動きづらいものの、中旬から下旬にかけては、業績修正や見通しを確認しつつ年末商戦への期待感などからも買いが優勢となる傾向にあります。
そんな11月相場で注目されるのは、テーマ性の強い銘柄です。現在の上昇相場を牽引する生成AI関連のほか、「ブラックフライデー」など季節のイベントにまつわる銘柄に資金が集まりやすいのが11月相場の特徴といえます。
日経平均株価の過去20年の11月の月間騰落率(=前月終値と当月終値の比較)は、平均でプラス2.6%。下のグラフを見てもわかるとおり、一年の中でも最強のパフォーマンスを残しています。つまり、年末高に向けた助走の月なのです。

もちろん、今年も例年どおりの値動きをするとは限りませんが、こうした相場の季節性や、その月の恒例イベントにあわせた値動きのパターンを事前に知っておくことで、それを先回りして投資することもできるようになります。
さらに、月ごとのアノマリーからその傾向や特徴を読み解くことで、効率的な物色がしやすくなります。「アノマリー」とは相場における経験則のことで、根拠はないけどよく当たるものや、相場格言として長く言い伝えられているものも多くあります。
〈参考記事〉最も株高・株安になりやすいのは何月? 意外と知らない株式相場のパターンとは
11月の株価はどう動く?
11月上旬は、3月期決算企業の中間決算発表がピークを迎えます。相場全体として様子見姿勢が強まることから、やや動きづらい状況です。その後、中旬から下旬にかけては、配当金の再投資による買い需要や年末商戦への期待感が相場を押し上げます。

もっとも、今年の11月は例年以上に、内外の政治イベントへの感度が高まりそうです。
国内では、自民党と日本維新の会との連立により高市早苗新政権が誕生しました。
たとえば、維新が掲げる「社会保険料の引き下げ」が消費の押し上げにつながれば、内需・小売関連銘柄の支援材料となる可能性があります。「副首都構想」では関西インフラ株が物色の対象となるかもしれません。
月末からは外交イベントが相次ぎます。
まずは10月31日・11月1日、韓国でAPEC首脳会議が開催されまます。米トランプ大統領による「中国製品への追加関税100%」発言で米中貿易摩擦が再燃しており、両者の首脳会談の行方次第では市場のボラティリティが高まる可能性があります。
22日から23日にかけては、G20サミットが南アフリカのヨハネスブルグで開催されます。ただ、トランプ大統領は欠席を表明しており、自国中心主義を重視するアメリカのこうした姿勢が、短期的なリスクオフ(リスク回避)につながる場面も想定されます。
一方、アメリカ国内では、来年の中間選挙を前に景気の腰折れをなんとしても避けたい思惑があります。そこで、下落局面が押し目買いの好機となるかもしれません。
11月のアノマリーで上がる株
そんな11月相場で上昇しやすいのは、どんな銘柄でしょうか? 過去10年(2015年~2024年)の11月相場で勝率が高かった銘柄を見てみましょう。いずれも、「11月相場に強い銘柄」として相場ではおなじみの企業です。
この中で特に注目したいのは、この10年で9勝1敗という高い勝率を誇るTDK<6762>。11月の株価上昇のポイントは、その成長性と中間決算です。
・TDK<6762>
TDK<6762>は、HDD用磁気ヘッドや2次電池などを展開する大手電子部品メーカーです。高い技術力で革新的な商品を生み出し、長年にわたり世界をリードしてきました。
近年は、EV(電気自動車)化の進展による自動車部品の需要増や、スマートフォン向け2次電池の好調などを背景に、10月末から11月初旬に行われる中間決算発表で業績を上方修正するケースが多く、それが株価を押し上げてきました。
足元では生成AI関連銘柄としても注目されており、世界的なデータセンターの増設ラッシュの恩恵を受けています。
今期(2026年3月期)は、トランプ関税の影響で営業減益の予想ながら、HDD関連の売上高増は続いており、2次電池も好調。業績が上振れする可能性は高く、決算発表でそれが確認されれば、株価も一段上の水準となりそうです。
今年の中間決算発表は、10月31日に予定されています。

ブラックフライデー2025の行方
11月第4木曜日は「ブラックフライデー」、翌週には「サイバーマンデー」が控えています。
「サイバーウィーク」とも呼ばれるこの期間、アメリカでは実店舗・オンラインを問わず、大規模なセールが開催されます。この1週間だけで年末商戦全体の約2割を占めるとされる一大イベントです。
日本でも、11月下旬から多くの小売企業がセールを実施します。これらは年末商戦の成功を左右するイベントであり、かつ、日米の消費トレンドを見極める重要なバロメーターにもなります。
アメリカでは、今年の年末商戦期間の売上高は前年比3.5〜4.0%増と予測されています。堅調ながらも、昨年の伸び率(4%)からは減速する見通しです。
労働市場の弱さやトランプ関税による物価上昇が影響し、消費者は価格重視に傾き、より慎重に商品を選ぶ傾向が強まっているのです。
対して日本では、名目賃金は上昇傾向にあるものの、実質賃金は8か月連続のマイナス(8月時点)。物価高により、支払わざるを得ない支出が増える一方、消費者は購買回数を減らすなど節約志向が定着している状況です。
11月下旬から始まる各種セールや年末商戦、冬のボーナスなどによって本格的な消費回復につながるのかが、今後の相場を見極める上での焦点となります。
関連銘柄にも注目
ブラックフライデーから始めるセールをきっかけに、企業の売上増が話題になったり、注目の人気商品が出たりすれば、株価が動意づく可能性は大いにあります。
この時期に特に上昇しやすいのは小売関連株。すでに業績が絶好調のイオン<8267>や、エービーシー・マート<2670>、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス<7532>、ウエルシアホールディングス<3141>などが挙げられます。
堅調な業績と高い集客力を背景に、消費回復シナリオの中心的存在となるのかも期待されます。
AI相場の今後の占う試金石
11月19日には、アメリカの半導体大手エヌビディア<NVDA>の決算発表(第3四半期)が予定されています。
9月、「ChatGPT」のオープンAIが計画しているデータセンター整備に、エヌビディアが最大1000億ドルを投資することで合意した、と報じられました。この巨額投資をどう回収するのか? マネタイズを正当化できるのか?
決算発表では、これらに対する経営陣の説明が最大の焦点となりそうです。好決算であれば、AI関連を中心に世界的な株高ムードを誘発することになるでしょう。日本市場では、特にデータセンター関連や半導体の素材関連に恩恵がありそうです。
TDK<6762>と同じく「11月相場に強い銘柄」に名を連ねる住友電気工業<5802>のほか、フジクラ<5803>、古河電気工業<5801>、日立製作所<6501>、SUMCO<3436>などは要チェックです。
ただし、AI関連銘柄の株価上昇については、すでに「バブル」の域にあると指摘する声も上がっています。市場からの期待が高い分、わずかな失望でも急落リスクを伴う点には注意が必要です。
今回の決算発表は、AI相場の持続力を占う試金石となるでしょう。
年末高に向けた勢いを見逃すな
今年の11月相場は、政局などにより短期的な値動きに振れる場面も想定されます。
ただし、相場には「掉尾の一振(とうびのいっしん)」という格言があります。年末にかけて株価が上昇するアノマリー(経験則)を、魚が尾を大きく振る様に喩えた言葉です。
もし年末に上昇するのであれば、11月相場こそ、そこに向けた勢いをつける場となるはずです。勢いよく尾を振れるかどうかは11月次第、とも言えるでしょう。
個人投資家にとっては、この時期の動きを先読みして行動できるかどうかが、2025年相場の成否を分けるかもしれません。季節性やアノマリー、イベントなどに注意を払いつつ、来たる年末高に備えましょう。









