オリンピックで株価はどうなる? スポーツの祭典が相場に与える影響とは

サワダ・ススム
2020年1月9日 8時00分

大発会から全面安という厳しい幕開けとなった2020年の株式相場。しかし、今年の夏には、56年ぶりのオリンピックが控えています。株式市場には一体どんな反応を見せるのでしょうか? 歴史に学ぶ、2020年相場の行方を占うヒントとは──

オリンピックが株価に与える影響とは?

2020年東京オリンピックの開催がすぐそこまで迫っています。そこで気になるのは、世界が注目するスポーツの祭典であるオリンピックは株式市場にはどのような影響を与えるのか、という点。

そこで、過去のオリンピック開催年をひもとき、開催国の株価がどんな動きを見せたのかを見てみたいと思います。同時に、そのときの日経平均株価はどうだったのか。ダウ平均株価、ドル円相場とあわせて、3つのオリンピックイヤーを振り返ります。

2016年リオデジャネイロオリンピック

南アメリカ大陸で初めて開催されたオリンピックが2016年のリオデジャネイロオリンピック。実は、初めて冬に開催されたレアなオリンピック(ブラジルでは8月は冬)。開催準備がなかなか進まないことも話題になりました。日本は、前回ロンドン大会を上回る史上最多41個のメダルを獲得しています。

  • 開催期間:2016年8月5日〜8月21日(17日間)
  • 参加国数:206の国と地域(約11,000人)
  • 競技数:28競技306種目

・2016年のボベスパ指数

そんなブラジルの主要株価指数は「ボベスパ指数」。サンパウロ証券取引所の上場銘柄のうち、流動性の高い上位銘柄で構成されるトータルリターン指数です。

オリンピックイヤーの2016年は、1月中旬を底に上昇基調へ。五輪がピークになることなく、その後も上昇を続けます。年末には若干下げたものの、年明けには前年1月からの1年間で約1.8倍の成長となりました。

・2016年の日経平均株価

年始から大きく下げ、6月にはイギリスのEU離脱(ブレグジット)をめぐる国民投票の結果を受けて大幅に下落。さらに、11月にはアメリカ大統領選でトランプ氏が勝利したことで急落(トランプ・ショック)。値動きの激しい波乱の一年でした。

・2016年のダウ平均株価

年始に急落したのち、2月からは上昇。夏の間は膠着状態になるも、11月の大統領選後はトランプ氏への期待感から上昇していきます。

・2016年のドル円相場

年初には1ドル123円台でしたが、閉会式翌日には1ドル100円台にまで円高ドル安が進行。11月以降は、ダウ平均の上昇に呼応するかのように円安へと転換しました。

2012年ロンドンオリンピック

1908年、1948年に次いで3度目の開催となった2012年ロンドンオリンピック。近代オリンピックへの初参加100周年となった日本は38個のメダルを獲得。卓球やバドミントン、サッカー女子などで初のメダルを獲得したほか、バレーボール女子やボクシングでは数十年ぶりのメダル獲得となりました。

  • 開催期間:2012年7月27日〜8月12日(17日間)
  • 参加国数:204の国と地域(約11,000人)
  • 競技数:26競技302種目

・2012年のFTSE100指数

イギリスの主要株価指数である「FTSE100種総合株価指数FTSE100指数)」は、ロンドン証券取引所に上場する銘柄のうち、時価総額上位100銘柄で構成される時価総額加重平均型株価指数。ヨーロッパにおいても、ドイツやフランスの指数と並んで注目度が高い指数です。

2012年は、ギリシャ危機などヨーロッパの重債務国の動向に世界中が翻弄された年でもありました。FTSE100指数は、6月に安値をつけたものの、五輪期間中は上昇。しかしそれ以上に、翌年が明けてからの急上昇が印象的なチャートです。

・2012年の日経平均株価

前年2011年3月の東日本大震災および原発事故の影響が残り、一年を通して、ほぼ10,000円を割る安値圏で停滞しました。

・2012年のダウ平均株価

ヨーロッパに振り回されながらも大きく崩れることはなく、小幅な値動きに留まった一年でした。

・2012年のドル円相場

3月に1ドル84円台をつけてから円高ドル安に。五輪期間中には1ドル78円付近を推移しており、現在を考えれば相当な円高です。11月頃から翌年にかけて急激に円安が進行していきます。

2008年北京オリンピック

1998年のソウルオリンピック以来、5大会ぶりにアジアで開催された北京オリンピック。通称「鳥の巣」と呼ばれたメインスタジアムも話題になりました。日本は合計25個のメダルを獲得。陸上男子400mリレーや、アメリカを破って金メダルを獲得したソフトボール女子の活躍が注目を集めました。

  • 開催期間:2008年8月8日〜8月24日(17日間)
  • 参加国数:204の国と地域(約11,000人)
  • 競技数:28競技302種目

・2008年の上海総合指数

中国の主要株価指数は「上海総合指数」。上海証券取引所に上場するすべての銘柄で構成される、時価総額加重平均型株価指数です。

オリンピックイヤーの2008年は、年初頭をピークに下げ続けていることがわかります。そして、閉会後の9月に待っていたのが……リーマンショック。上海総合指数も、10月後半には1月の高値から7割近くも下げ、そのまま年を越すこととなりました。

・2008年の日経平均株価

やはり9月末から10月にかけて大幅な下落となり、バブル崩壊後の最安値も更新。年間騰落率は戦後最大のマイナス42.1%という大暴落でした。

・2008年のダウ平均株価

年初から徐々に下げていき、夏の初めから雲行きは一層怪しさを増します。そして9月半ば、アメリカ史上最大規模の倒産となるリーマン・ブラザースの破綻によって、ダウ平均株価はブラックマンデーに次ぐ大暴落。同月末には、一日で6.98%という史上最大の暴落を記録します。

ちなみに、この年に行われた大統領選によって、バラク・オバマ氏が初のアフリカ系大統領に選出されています。

・2008年のドル円相場

3月に一時1ドル97円台に突入。そして、リーマンショック後は急激に円高ドル安が進行しました。

2020年東京オリンピックで株価はどうなる?

過去3大会のオリンピックイヤーを振り返ってまずわかるのは、「オリンピックが開催されても株価が上昇するわけではない」ということ。たしかにオリンピックは国を挙げた一大イベントですが、それだけで株価に好影響を与えることはなさそうです。

それどころか、リーマンショックやギリシャ危機、ブレグジットにトランプ・ショックと、株式市場に大打撃を与えた出来事がオリンピックイヤーに集中して起きているように見えるのは、何かのサインなのかどうか……

2020年東京オリンピックは7月24日に開幕。もちろん存分に楽しみたいものですが、そのお祭り気分を相場にまで引きずらないように心がけたほうがよさそうです。

[執筆者]サワダ・ススム
サワダ・ススム
40代突入を目前に控えたサラリーマン兼トレーダー。ウェブや書籍などを通じて、日々トレードについて勉強しては実践する日々。現在はおこづかい程度の利益しか出ていないが、2年後にはサラリーマン生活に「お疲れさまでした」と別れを告げ、トレード一本で生活していきたいと本気で考えている。
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