半導体関連銘柄の今後はどうなるのか。気にしておきたい「SOX指数」とは
上昇を続ける半導体銘柄たち
近年、5Gや自動運転をはじめとするAI用途など複数の要因が重なり、半導体業界を取り巻く環境が良好です。さらに、コロナ禍でパソコン需要が拡大したことも追い風となり、2020年11月から半導体関連銘柄の上昇に勢いが付いています。
しかし、ひとくちに関連銘柄といってもその範囲は広く、業績や株価の状況も異なっています。また、2021年3月に入ってからは、長期金利の上昇を嫌気した売りが出て大きく下落する場面もあり、急上昇中におけるリスク管理の重要性を改めて感じさせられました。
ただ、今後も半導体需要は高まることが予想され、依然として株式市場でも注目を集めるでしょう。そこで、半導体業界の世界的な流れや、それが日本株に与える影響を知るためにチェックしておきたいのが、半導体関連銘柄の代表的な指数である「SOX指数」です。
日本株にも影響を与える「SOX指数」
SOX指数とは、米フィラデルフィアにある証券取引所、NASDAQ OMX PHLX(旧・フィラデルフィア証券取引所)が算出・公表している株式指数で、フィラデルフィア半導体指数(PHLX Semiconductor Sector Index)とも呼ばれます。
アメリカの証券取引所に上場する半導体関連の企業30社で構成されており、アメリカ市場に上場している海外銘柄も採用されています。アメリカの半導体市場の状況を示すだけでなく、半導体が好調だと景気がいいと判断されるため、ダウ平均株価の先行指標としても参考にされています。
さらに、SOX指数は日本の半導体関連株にも大きな影響を与えます。現在、日本企業は採用されていませんが、SOX指数には世界の半導体市況に対するマーケットの見方が反映されているため、その動きは日本の関連銘柄の株価の動きにも関連するのです。ダウ同様、日経平均株価の先行指標にもされます。
半導体市況の特徴として、4年ほどの周期で好況と不況を繰り返すサイクルがあります。ただ、近年はデジタル化などで半導体市場のサイクルの構造も変わってきています。実際、SOX指数は2013年頃から右肩上がりの上昇を続けており、実に650%という大幅上昇を記録しています。
さらに2020年11月から上昇が加速し、2021年2月に最高値を付けた時点までの上昇率は40%を超えました。
SOX指数の構成銘柄と注意点
注意しなければいけないのは、SOX指数に採用されている銘柄にはグロース株(成長株)が多いため、極端に動く傾向もある指数だという点です。現在の構成銘柄には、以下のような企業があります。
- Intel/インテル<INTC>……ご存じ、半導体の世界的企業
- NVIDIA/エヌビディア<NVDA>……画像用半導体に特化、近年はAI用途で注目
- TSMC/台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング<TSM>……半導体の受託生産で世界トップ
- AMD/アドバンスド・マイクロ・デバイシズ<AMD>……パソコン用半導体でかつてインテルとライバル関係。現在は最新CPUの「Ryzen」で復活
- QUALCOMM/クアルコム<QCOM>……通信用半導体に特化
多くのパソコンにその半導体が搭載されているインテルや、近年の半導体不足で名前を聞くことの多い台湾のTSMC、画像用半導体の企業として知られていたものの近年ではAI用途で急速に注目を浴びるエヌビディアなど、日本国内でも名の知られている企業がSOX指数に採用されています。
このうち、近年話題のTSMCとエヌビディアの株価推移を見てみましょう。
・TSMC/台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング<TSM>
・NVIDIA/エヌビディア<NVDA>
右肩上がりの上昇を見せているSOX指数と同じように、どちらも2020年以降、株価は大きく上昇しています。実際、SOX指数の構成銘柄には、このように急騰中の銘柄が目立ちます。一方、半導体銘柄の世界代表とも言えるインテルの株価は、そうでもありません。
・Intel/インテル<INTC>
インテルは半導体の自社生産を続ける中で、次世代半導体の製造の遅れに直面しています。また、かつてのライバルであるAMDが最新CPU「Ryzen」によって見事な復活を遂げるなか、パソコンCPUのシェアが奪われており、半導体業界の中では株価が出遅れているのです。
同じくSOX採用銘柄でも、インテルのように横ばい気味で推移する銘柄はあります。半導体銘柄といえども、すべての銘柄が急騰しているわけではないのです。
半導体銘柄が急上昇する理由
指数を構成する個別銘柄の株価上昇率に違いはあるものの、半導体関連銘柄の全体的な上昇を背景として、SOX指数は上昇しています。各社の業績を支える半導体業界にはいくつかのニーズがあり、それによって業界環境が非常に良好だからです。
- 5Gのインフラおよび端末投資
- 車の自動運転技術の開発
- コロナ禍のテレワーク普及によるパソコン需要の拡大
- ビットコイン価格の上昇によるマイニング需要の復活
メディアでも半導体不足が報じられていますが、半導体に対する引き合いには、このように複数の要因が存在しています。コロナ禍以前から5Gと自動運転で需要が旺盛だったところに、コロナ禍によるテレワークの普及を受けたパソコン需要が盛り上がって、半導体業界はさらに賑わっているわけです。
こうした複合的な背景があることを鑑みれば、半導体に対する需要の高まりは今後もしばらく続くと考えられるでしょう。
日本の半導体銘柄はどうなっている?
「半導体立国日本」といわれた時代もかつてはありました。しかし、現在の日本にその面影はありません。ただ、今も世界で活躍している半導体関連企業はあります。
・東京エレクトロン<8035>
半導体製造装置の大手メーカーである東京エレクトロン<8035>は、半導体業界の活況そのままに、株価は右肩上がりです。2021年3月の下落についても、SOX指数と同様の動きだと判断できます。
これに対して、東日本大震災で工場が被災して生産が滞ったことで経営が厳しくなり、官民ファンドである産業革新機構などからの資金支援によって立ち直ったルネサスエレクトロニクス<6723>はどうでしょうか。
・ルネサスエレクトロニクス<6723>
株価はレンジでの推移ですが、2020年7月から2021年1月にかけては7か月連続で上昇しています。
同社は2019年12月期にリストラを実施し、それに伴って60億円の最終赤字を計上。2020年12月期は450億円の最終利益を計上して業績は回復しましたが、株価ともども、まだ病み上がりの状態です。さらに、2021年3月19日には主力の生産拠点である工場で火災が発生。自動車向けの半導体などを生産するラインが停止する事態に見舞われました。
これにより車載用半導体の供給不足に拍車がかかるとみられており、その影響は自動車メーカーにも及ぶかもしれません。
半導体銘柄への投資には工夫も必要
2020年末から急ピッチでの上昇が続いてきたSOX指数。しかしながら、極端な値動きを見せることがあるSOX指数らしく、2021年3月には一日で5%もの下落を見せる日もありました。高需要が続くとはいえ、今後また大きな下落を見せる可能性は否定できません。
半導体関連に限らず、単純に「上がっているから」という状況判断だけで一気に資金投入することは、非常にリスクが高い行為です。足元の良好なファンダメンタルズ要因を背景として買う場合でも、急な下落が起こるリスクを念頭に置いて、タイミングを分割して購入するなどの工夫が必要でしょう。
2000年のITバブル期にも、SOX指数や半導体関連銘柄の上昇は強かったものの、バブル崩壊後の下落もまた強烈でした。半導体関連は基本的にグロース株(成長株)のため値動きが大きいので、しっかりとしたリスク管理を心がけた上で、大きな波をつかみにいきましょう。