「株は連想ゲーム」で勝つ人・負ける人の差を考えてみる

石津大希
2021年3月22日 12時00分

株式投資は連想ゲーム──株価は需給や金利、社会情勢など多種多様な理由で変動するため、よくこのように言われます。しかし、だれもが思いつくような単純な連想で勝てるようになるほど、株式市場は甘くありません。では、連想ゲームで勝つ人・負ける人では一体何が違うのでしょうか?》

連想ゲームは投資家たちの短期決戦!

株式投資における大きな醍醐味である「連想ゲーム」。

  • コロナで家にいる時間が増えた → ゲーム株の収益アップ?
  • テレワークが普及 → 通信量拡大で半導体の需要増?

このように、何らかの材料をきっかけとしてそれがもたらす好影響・悪影響が連想され、関連している銘柄の株価が大きく動くことは多い。それは、短期的な株の値動きには、投資家の期待が大きく反映されるからだ。

この連想ゲームに乗って、株を売買してみたことがある人も多いだろう。ただし、その結果は「短期間で大きなリターンを得られた」「買った後は値動きがなく、面白くなかった」「買った後に株価が下落し、大きな損をした」など、まちまちではないだろうか。

連想ゲームと聞くと何やらワクワクしてきて、どこか運試し的なものも感じられる。しかし、連想ゲームであっても、やっていることはあくまで「株式投資」。投資における基礎知識が重要なことに変わりない。

トレンドに乗り遅れるほど勝機は遠のく

メディアやSNSで「〇〇を受けて△△社の株が上昇している」と伝わると、人々の注目は高まっていき、株価上昇が継続することがある。チャートは長い右肩上がりを形成。それを見て「この調子だと明日も株価は上がりそうじゃないか。今買っておこう!」と考え、株を買う人は少なくないだろう。

もちろん、それでキャピタルゲイン(値上がり益)を得られる可能性もある。しかし、連想ゲームがもたらす上昇トレンドに乗るのが遅くなればなるほど、負ける(=損をする)可能性は徐々に高まってしまう。それは、投資家のリスクテイク(リスクを承知で売買すること)には限界があるからだ。

・BASE<4477>

個人・小規模事業者向けのECプラットフォームを運営するBASE<4477>は、2019年10月にマザーズ市場に上場。株価は2020年5月頃まで1,000~2,000円のレンジで推移していたが、コロナ禍における通販利用の拡大を背景に「コロナ恩恵銘柄」として評価され、それ以降は非常に強い勢いで上昇した。

同年10月には17,000円台の高値をマークするも、その後は一時7,000円台にまで下落する展開となった。

1,000~2,000円で推移していた株価がわずか半年足らずで17,000円台にまで上昇するのは圧巻であった。しかしその分、上昇していく過程で「これ以上は持てない。売りたい!」と感じる投資家も増えていったはずだ。これが、「投資家のリスクテイクの限界」である。

バリュエーションも、売上高100億円弱に対して時価総額は2000億~3000億円で、PSR(時価総額÷売上高)は20~30倍だった。通常、グロース株の中で極めて高い成長が期待できる場合でも、せいぜい10倍だ。これを踏まえて、「さすがに割高過ぎる」と感じて売ろうとした投資家も少なくないだろう。

連想ゲームでは、「数年単位の長期的な上昇でじっくりと儲ける」というより、「数日から長くても数か月の短・中期的な値動きでガツッと儲ける」という色が濃い。それゆえ多くの参加者が「比較的近いうちでの売却」を想定している。そして、その売却タイミングの決め手は、チャート形状やバリュエーションの過熱感となることが多い。

したがって、連想ゲームに参加するのが遅くなると、そもそも、こういったリスクテイクの限界に近づいた状態で株を持つことになる。これが、遅ければ遅いほど負ける可能性が高まる理由だ。

負ける人は「木を見て森を見ず」

連想ゲーム中はどうしても個別株のチャートや関連ニュースばかり見てしまいがちだが、「幅広い視野」を持つことが重要だ。また、忘れてはいけない視点のひとつに「そもそもなぜ今の相場で連想ゲームが起こっているのか?」がある。

連想ゲームには、それが起こりやすい相場状況というものがある。代表的なタイミングは8月下旬。この時期は、3月期銘柄の決算が出そろい、目先の材料が出尽くした頃合いであり、売買のきっかけとなるわかりやすい材料が乏しい。そのため、普段ならば無視されそうな小さな材料にも、市場が過剰反応しやすい状況なのだ。

また、海外情勢が悪化傾向にあるときも連想ゲームが起こりやすい。近年でいえば、米中貿易摩擦や欧米での新型コロナウイルスの感染拡大に向けた懸念が高まるような局面だ。

こういった状況では「日経平均やTOPIXは今後下がるかもしれない」「海外経済の影響を受けやすい銘柄は買いづらい」という見方が広がる。そして、「日経平均などの株価指数と連動しづらい」「海外情勢の影響を受けづらい」という特性からバイオベンチャー株に物色が向かい、株価が上昇することが多い。

しかし、これらの相場状況が変わったらどうなるだろうか。8月下旬の閑散期を終えて再び企業ニュースが盛んになったり、海外情勢が改善に向かったりしたとき、連想ゲームに向かっていた資金は一気に他の銘柄に向かうこととなる。

つまり、相場状況の把握を怠っていると、「連想ゲームが起こりづらい状況」に変化したことに気付かず、損を計上する可能性が高まってしまうのだ。

あくまで重要なのは「投資の基本」

チャートやバリュエーションの過熱感、投資家心理や相場状況の変化を冷静に見ることは、連想ゲームに限らず、株式投資をするうえでの基本的な着眼点だ。ゲームに乗ってハイリターンを狙うのもいいが、ゲームだからといって気軽に勝てるものでは決してなく、基礎知識がなければ勝つ見込みも当然薄い。

そもそも、相場とは不確実なもの。どんなに基礎知識を身に付けたとしても、気まぐれな市場は、いつも合理的に動いてくれるとは限らない。この点を常に忘れずに取り組むことが、連想ゲームにおいて最も重要といえるだろう。

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[執筆者]石津大希
石津大希
[いしづ・だいき]外資系投資顧問会社で株式アナリストとして勤務したのち独立。ファンダメンタルズ分析の経験を生かして、客観的データや事実に基づく内容を積極的に発信。市場で注目度の高いトピックを取り上げ、深く、そして、わかりやすく説明することを心がける。
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