ニュースで株価は上がる? 好材料なのに急落することも ニュースから考える投資戦略
▶株価を動かすニュース、どうやって投資に生かせばいいのか ニュースから株価の行方を占う
超目玉ニュースをものにする2つの戦略
2022年8月16日、米アマゾン・ドット・コムが化粧品口コミサイト「@コスメ(アットコスメ)」を運営するアイスタイル<3660>の筆頭株主へ、という記事が日経新聞に掲載されます。
アマゾンが日本企業に投資するのは極めて異例ということで、市場に驚きの声が上がりました。文字どおりの「サプライズニュース」として度を越した買い注文が膨らみ、アイスタイルの株価は連日、買い気配のストップ高(取引が成立しないままのストップ高)となります。
しかし、ようやく寄り付いたのちは投資家の思惑が交錯して乱高下の展開となり、その後は急落となってしまいました。
・アイスタイル<3660>の株価推移
ビッグニュースから株価急落の理由
株価に影響が出やすいニュースとして「業務提携」「新製品の開発」などがあります。なかでも「世界初」「業界初」や意外な組み合わせのものは価値の高いニュースとなり、影響の大きいニュースほど、テレビや新聞一面トップなどで大きく報道されます。
そして、アナリストがカバーしているような時価総額の大きな企業よりも小さい企業のほうが、ニュースによる影響度は大きくなります。
今回のニュースは、市場の誰もが超目玉級の好材料と考えました。ところが、株は、資金さえあれば買えますが、持っていなければ売ることはできません。好材料が出たのに簡単に手放す人はいませんから、需要と供給の関係から、必然的に株価はつり上がります。
期待感で膨らんだ株価がある程度の水準になると、売る人は売り、特に短期筋は素早くトレードを手仕舞いして、利益確定します。天井ピーク後は、食い荒らされたケーキには誰も見向きもしないように、あっという間に急落してしまいます。「期待感」が消化され、株価もしぼんでしまうのです。
底で攻めるか、消化後に乗り出すか
ただし、アマゾン出資の結果が出るのは、ずっと先の話です。長期的な業績に影響を及ぼすわけですから、期待感からの“飛びつき買い”を消化してしまえば、冷静になった投資家が再び買ってくる可能性が高いと言えます。さらに高値を超えてくれば、本格的な長期上昇トレンド入りとなるでしょう。
このように、誰もが認める好材料だからといって、すぐに飛び乗っても成功するとは限りません。むしろ、過去の株価パターンと上に挙げた3つのポイントから「市場の思惑」を予想し、冷静に戦略を立てることで勝てる確率が高くなります。
このケースの場合なら、腕に自信があるなら売りから入って株価の底で買い戻すか、期待感消化を確認してから長期的な目線で買いに入る、というのが有効な戦略となるでしょう。
中面記事や悪材料が出たときの戦略は?
アイスタイルのように誰もが「これは!」と思う好材料ではなく、新聞の中面に掲載されるようなニュースや悪材料が出た場合には、どのような戦略を立てればいいのでしょうか。
周辺情報の深掘りで買いを確信する
新聞一面のトップ記事ではなく、中ほどにあるビジネス面や社会面などに好材料が掲載された場合にも、そのニュースに関連する銘柄の株価が上昇することがあります。ニュースが、事業の変化や社会のトレンドを伝えているからです。
2022年9月2日の日経新聞ビジネス面に「百貨店外商、40代以下の富裕層に的、伊勢丹は購入5倍」という記事が掲載されました。デパートを多く利用する、いわゆる「富裕層」の顧客に若返り傾向が見られることを伝えています。
これを読んだ投資家は「へえ、そうなの?」と驚いたのではないでしょうか。実はこの前日には、三越伊勢丹ホールディングス<3099>の国内百貨店合計の売上速報(8月度)が発表されており、その内容は前年同月比46.5%増と、12か月連続で前年実績を上回っていました。
高額品への購買意欲が高まっていることが好感され、株価はその後、インバウンド復活への期待も加わって上昇基調となりました。
・三越伊勢丹ホールディングス<3099>の株価推移
新聞の中面に掲載される程度の記事の場合は気づかれないことも多く、実際の株価の上昇や決算発表ではじめて業績が好調なことを知る投資家も多いのです。ただ、ニュースの扱いが小さかったり話題にならないからと言って、株価への影響も小さいとは限りません。
気になるニュースが出た場合は、売上高の推移や過去の決算内容、同業他社との相違をチェックしたり、関連銘柄や業界の統計データまで深掘りしてみましょう。そうすると、ニュースの裏取りができて、買いを確信できます。
悪材料が絶好の買い場になることも
株価に悪材料になるニュースには、不祥事や事故・事件など企業イメージに関するもののほか、業績悪化(赤字)や無配などがあります。
株価は「市場の思惑」で動きますので、多くの投資家が「これはダメだ」と思ってしまうようなニュースが出た場合には、適正な株価を超えてワーッと極端に売られる傾向にあります。ただ、最初の“ショック売り”が終わると、株価が適正価格になるまで買い戻される可能性も高いのです。
2022年7月に大規模通信障害を起こしたKDDI<9433>も、直後は大きく“嫌気売り”されましたが、株価はその後すぐに戻しています。
・KDDI<9433>の株価推移
つまり、このようなケースでは、悪材料であっても短期的には買いとなる場合も多く見られるのです。
悪材料で株価が上がるとき
悪材料は好材料の場合と違い、スクープを除いてすでに株価が低下していることも多いため、ニュースが大きく出たことで“材料出尽くし”となって、むしろ株価が上昇するケースも多くあります。
ファンケル<4921>は2022年8月、今期の第1四半期で経常利益が39.7%の減益となり、通期の業績予想も下方修正するなど、数字上は最悪の決算でした。しかしながら、翌日の株価は前日比8%以上と大きく上昇。その後も強い上昇基調となりました。
前期本決算による株価低迷から回復中だったことや、もともと第1四半期の業績には市場も期待していなかったことなどから、「悪材料出尽くし」となったのです。
決算資料を読むと、広告費の負担によって減益となったものの、国内売上は同業の資生堂<4911>などが苦戦する中でも順調であることがうかがえます。こうしたことからも、長期視点での買いにつながったと考えられます。
株価についていくか。それとも先を行くか
ニュースが出た際、「株価の動きについていく」というのもひとつの投資法です。「市場の思惑」に従って、上がったものを買い、下がったものを売るのです。
しかしながら、市場の判断が常に正しいとは限りません。「市場はどう考えるか?」に頭を巡らせながらも、「自分はこう考える。だから、買う(売る)」という挑戦もあわせて繰り返すことで、さらに一段、確度の高い投資ができるようになるでしょう。