円安のいまこそ買いたい銘柄 探すべきは「円安じゃなくても好調な企業」

千葉 明
2022年10月28日 15時00分

Игорь Головнёв/Adobe Stock

《東京証券取引所が立つ日本橋・兜町。かつての活気は、もうない。だがそこは紛れもなく、日本の株式取引の中心地だった。兜町を見つめ続けた記者が綴る【兜町今昔ものがたり】》
※2022年10月18日掲載の記事です

円安じゃなくても好調な企業を探せ!

 円安が加速している。1018日には1ドル=149円台まで値下がりする場面もあり、150円台突入も現実味を帯びてきた。

 円安が「外需型企業にフォロー」であることは、周知の事実。だが一方では、日銀が新たな介入に踏み切ることも想定される。そこで、「円安効果を差し引いても好調な外需型企業」に注目してみるのが一法ではないだろうか。兜町を歩き該当企業を探したところ、顔見知りの老獪なアナリストがある企業の名を挙げた。浜松ホトニクス6965>。「製品がニッチ市場で高いシェアを占めていることから、地政学的なリスクにも抵抗力のある外需企業」だという。

 光電子倍増管で約90%の世界シェアを占め、光検出機器関連の高技術にも定評がある。前期(9月期)の「20.5%増収、52.7%経常増益、51.6%最終増益、8円増配48円配当」に続き、当期も「8.1%増収(1828億円)、12.3%経常増益(389億円)、13.0%最終増益(283億円)、8円増配56円配当」の計画。だが3月25日に「産業用機器分野を中心に想定を上回る売上増」を主たる要因に、それぞれを「1990億円、493億円、360億円、64円配当」に上方修正した。事業の好調自体は円安進行前の、前期決算から理解できる。こんな具合だ。

  • 電子管事業……医療分野でPCR検査用装置などの需要が内外で伸長。半導体検査装置向けが海外を主に増加。これに伴い半導体ウエハ検査装置向けの光源が需要増。
  • 光半導体事業……医療分野でX線・CTスキャン向けのシリコンフォトダイオードが、内外で継続して需要が高まった。産業分野ではイメージセンサ(半導体製造・検査装置向け)や、産業用ロボット向けファクトリーオートメーション分野でフォトIC・フォトダイオードが売り上げ増。
  • 画像計測機器事業……検体検査装置向けボードカメラが、北米で継続的に需要増。遠隔病理診療用デジタルスライドスキャナーが、欧州を中心に伸長。

 浜松ホトニクスと同様の視点から、こんな企業にも魅力を覚える。

 例えば、配当性向60%を掲げるファナック6954>。FANC旋盤で世界首位、かつ産業用ロボット・小型マシニングセンタでも世界で屈指の存在。前期(3月期)「33.0%増収、62.9%営業増益、65.2%最終増益」、今期も「12.6%の増収、7.7%の営業増益、7.0%の最終増益」の計画。そして、FAセンサーなど検出・計測制御大手のキーエンス6861>。前期(3月期)は「51%増収、51%営業増益」、そして今期も「過去最高益更新」計画。売上高営業利益率55.4%。武器は、日本市場と同様の「当日出荷」。半導体不足など部材不足の中でそれを可能にしているのが、取引先企業のニーズを把握しきっている営業力。

 さらに、復興感を強めるキヤノン7751>。前期の155.0%営業増益に続き、今期計画も第1四半期開示と同時に「27.7%増」に上方修正。海外比率は10%台だが、ミナトホールディングス6862>なども興味深い。産業用メモリー・デバイスプログラマー・ATM用タッチパネルが3本柱。MA戦略で巧みに成長街道を駆け上がってきている。

 広くその名が知られる著名企業ばかりではない。朝日インテック7747>は、循環器系治療のPTCAガイドワイヤーや貫通カテーテルが順調。非循環器系でも末梢神経系・腹部血液管系が好調。国内はやや足踏みも米国で非循環器系が伸長している。トレックス・セミコンダクター6616>は、車載や産業機械向けに強みの電源ICのファブレスメーカー。傘下にパワー半導体の受託製造企業を有す。前期には計3回の上方修正をした点は、記憶に新しい。

 前期段階ですでに円安効果が顕著に見受けられ、今期も増益計上の企業を探すのがポイントになりそうだ。JUKI6440>は株価700円出入りで、予想配当利回りは4%前後。万円ほどで株主になれる。イビデン6440>の株価は4,600円台。レジストなど半導体材料が主体のJSR4185>。特殊黒鉛で世界シェア30%と首位の東洋炭素5310>エフ・シー・シー7296>はクラッチ専業、二輪で世界首位で配当利回り2.9%。いずれも関心を持って然るべき銘柄と言える。

円安で「爆買い」の再来なるか

 ところで、政府の「水際対策の緩和」と相まって、「円安によるインバウンド買い」が盛り上がり始めている。

 確かに、インバウンドによる「爆買い」が流行語大賞となった2015年の円相場は、各月の仲値平均で111.04円。対して現状のドル・円相場は148円台後半。インバウンドにとり日本市場は「買い物天国」の環境にある。「ブランド品も、自国で買うより日本で買ったほうが安くて得」。水際緩和策発表前の8月中旬と比べ、10月の国際線の発着予約件数は2〜3倍に増えているという。ANAホールディングス<9202>のほか、日本空港ビルデング<9706>なども穴株かもしれない。 

 テーマとして対応するなら、2015年の売上・利益成長企業を振り返ってみるのも手。ビジネスホテルを展開する共立メンテナンス9616>、菓子大手の寿スピリッツ2222>などはインバウンド需要で実績組。ドラッグストア「最後の再編」を通過し店舗数で2位以下に圧倒的な差をつけた、マツキヨココカラ&カンパニー3088>なども恩恵が期待できそうである。

[執筆者]千葉 明
千葉 明
[ちば・あきら]東京証券取引所の記者クラブ(通称・兜倶楽部)の詰め記者を振り出しに、40年以上にわたり、経済・金融・ビジネスの現場を取材。現在は執筆活動のほか、講演活動も精力的に行う。『野村證券・企業部』『ザ・ノンバンク』『円闘』など著書多数。
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