日本版・配当貴族指数が誕生 その魅力とインフレ時代に人気の理由
インフレ時代の資産運用は「配当」が最適?
日本では、長期間にわたり低いインフレ率が維持されてきましたが、最近はその傾向が変わってきています。6月には、消費者物価指数(CPI)のうち、生鮮食品を含めた全体の指数が前年同月比3.3%のプラスとなり、同月のアメリカの3.0%を上回りました。その後も、この水準で推移しています。
CPIの日米逆転はおよそ8年ぶりの出来事でしたが、その一方で、日本の賃金の伸びはアメリカに見劣りしています。
デフレ時代とインフレ時代では、お金を預けることによる利息が異なります。デフレ時代にはモノの価格が下がるため、お金を預けることで実質的に利息が生じていました。しかしインフレ時代には、資産が増えないとモノが買えなくなります。
インフレが進むと、価値が下がっていく現金や債券に代わって、株式の配当が運用において注目されるようになってきます。
株式の配当は、企業が利益を出した際に株主に還元されるものであり、定期的な収入源となります。特に、配当利回りが高い銘柄は、インフレによる価値の低下を補う役割を果たすことが期待されているのです。
高配当か、連続増配か
インフレへの対応策として、高い利回りが期待できる高配当株が注目されています。
「日経平均高配当株50指数」は、配当利回りが高い50銘柄で構成される株式指数(インデックス)です。これに連動するETF「NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信」の純資産総額は、今年8月、2017年の上場後初めて1000億円を超えました。分配金利回りは3.95%です(11月29日時点)。
また、「連続増配株」に着目する投資法もあります。毎年配当を増やし続ける企業は、長期的に安定した収益基盤を持っていると評価されます。また、連続増配を続ける企業は、その後も増配し続ける可能性が高く、投資家からの信頼も高くなっているのです。
アメリカの「S&P500配当貴族指数」は、25年以上連続して増配している優良銘柄(=配当貴族)のうち、S&P500株価指数に採用されている銘柄で構成されている指数です。長期的な観点から見ると、S&P500を大きく上回る成績を残しています。
この「S&P500配当貴族指数」は、2000年代のアメリカ経済の危機にもかかわらず、高配当株が底堅いことを示すものとなりました。
このように高配当株は、株式市場の変動に強く、安定した成長を示すことがあります。高配当株の投資は、中長期的な観点から見ると、ポートフォリオのバランスをとるための有効な手段の1つであり、投資家にとって魅力的な選択肢となり得るでしょう。
「日本版・配当貴族指数」が開始
高配当株への注目が高まる中、「S&P500配当貴族指数」の日本版とも言える新たな指数が開発され、算出・公表が始まりました。連続増配年数によって構成銘柄を選んだ指数であり、日本にはこれまでになかったタイプの指数です。
・日経連続増配株指数とは
増配を続ける日本企業の株価動向を表す指数として、6月30日から「日経連続増配株指数」の算出・公表が始まりました。この指数は、国内の証券取引所に上場している企業で、原則10年以上の連続増配をしている企業の中から、その年数の上位70銘柄が選ばれています。
「日経連続増配株指数」 構成銘柄(連続増配上位)
銘柄 | コード | 連続増配 |
---|---|---|
花王 | 4452 | 33年 |
SPK | 7466 | 25年 |
三菱HCキャピタル | 8593 | 24年 |
リコーリース | 8566 | 23年 |
小林製薬 | 4967 | 23年 |
ユー・エス・エス | 4732 | 23年 |
日経連続増配株指数は、長期間にわたって増配を続けている銘柄で構成される指数です。そのトータルリターンを過去12年に遡って日経平均株価と比較したチャートを見ると、日経連続増配株指数が長期的に日経平均株価を上回っていることがわかります。
日経連続増配株指数は、長期的な視点で業績を見極めて企業を選別する際の重要な指標となります。連続増配している企業に投資することで、投資家は、安定した収益を得ることができます。
・日経累進高配当株指数とは
「日経連続増配株指数」に加えて、「日経累進高配当株指数」の算出・公表も6月30日に始まりました。
上場企業が、長期的に配当を減らさずに増配または配当を維持する「累進配当」の方針を採用することで、投資マネーを呼び込もうとするケースが増えています。このような企業は、その安定性と将来性が評価され、投資家からの人気も高まっています。
「日経累進高配当株指数」は、10年以上にわたり累進配当を続けている企業から、予想配当利回りが高い順に30銘柄を選んで構成した指数です。
「日経累進高配当株指数」 構成銘柄(累進配当上位)
銘柄 | コード | 累進配当 |
---|---|---|
武田薬品工業 | 4502 | 41年 |
三菱HCキャピタル | 8593 | 31年 |
住友精化 | 4008 | 27年 |
LIXIL | 5938 | 25年 |
日本カーボン | 5302 | 19年 |
新たな投資の選択肢に
日経平均株価と、新たに誕生した2つの株価指数の予想配当利回り(2023年5月時点)は、以下のようになっています。日経連続増配株指数・日経累進高配当株指数ともに、日経平均株価よりも高い利回りが期待できることがわかります。
指 数 | 予想配当利回り |
---|---|
日経平均株価 | 1.90% |
日経連続増配株指数 | 2.32% |
日経累積高配当株指数 | 4.80% |
これらの指数に採用されている銘柄は、新NISAの投資先候補にもなるでしょう。NISAは長期運用が前提です。長期にわたって連続増配が続く銘柄は、景気停滞時においても底堅さが期待できるため、有力な選択肢のひとつと言えます。また、これらの指数に連動する投資信託やETFも誕生しています。
なお、連続増配株の配当利回りは、足元の利回りが高い高配当株と比較すると、さほど高くはありません。ただ、PBR1倍割れなどで割安感が強い銘柄も多く存在するため、一度チェックしてみる価値はあるでしょう。