注目の電線株が上場来高値 半導体株の逆襲の陰で新安値の銘柄は【10月の高値更新】
《株価の新高値は、銘柄にとっての「自己ベスト」。それは〝伸びしろ〟の表れと言えるのかもしれません。最近ベストを更新して伸びしろを見せているのは、どんな銘柄か。直近で高値をつけた銘柄から相場の流れを読み解く【高値更新を追え!】》
10月相場を牽引した銘柄たち
10月はレンジ相場が続く展開となりました。9月末に自民党総裁選で石破氏が選出されると、増税や金融所得課税に前向きであると受け止められ、マーケットは売りで反応。その後は、現在の金融緩和環境を当面継続するとの見方が広がりました。
アメリカでは良好な経済指標が相次ぐ中、景気のソフトランディング期待も高まりました。ダウ平均株価などが最高値圏で推移したこともあり、日経平均株価は連れ高し、15日には4万円を上回りました。
月末にかけては衆院選で与党が苦戦するとの予測が広がり、上値の重い展開となりました。27日の投開票で自公は議席を大きく減らす結果となり、政局に対する不透明感が台頭。財政拡張的な政策を打ち出した国民民主党が躍進したこともあり、衆院選後は買い戻しの動きとなっています。
日経平均株価は4か月ぶりに反発し、前月末に比べて1161円、3.06%の上昇となりました。
こうした中で高値を更新して相場の牽引役となったのは、どのような銘柄か。10月相場で新高値・新安値をつけた銘柄を振り返り、その共通点を探ります。
・高値更新とは?
相場解説などで頻繁に使われる「高値更新」とは、読んで字のごとく、ある期間内の高値を更新したという意味です。ここに「昨年来」「年初来」「上場来」など期間を表す言葉が添えられて、「年初来高値を更新」などと言われます。また、新たに付いた高値を「新高値」と呼びます。
【株価の高値更新】
- 年初来高値……4月以降に使われ、その年の1月1日から直近までの期間が対象
- 上場来高値……株式市場に上場して以来の高値。買い方の強い物色が株価に現れているといえる
- 昨年来高値……1〜3月に使われ、前年の1月1日から直近までの期間が対象
外食チェーンに投資家の関心
10月の後半にかけて外食チェーンの一角が値上がりし、新高値となりました。原材料や人件費で業界全体が値上がりする中、大手のスケールメリットを生かして相対的なお得感が消費者に支持されました。また、海外展開する企業では円安などによるメリットもありました。
牛丼やとんかつ店などをチェーン展開する松屋フーズホールディングス<9887>は10日に上場来高値6980円まで上昇しました。
9月の既存店売上高は前年同月比で18%増と、値上げと客数増を追い風に2桁%の伸びが続いています。「ネギたっぷり牛肉 のエスニック炒め定食」など新メニューの投入や、ベースアップなど人材投資を進めながら業績を拡大しています。
「すき家」「はま寿司」などのゼンショーホールディングス<7550>も同じく10日に年初来高値8379円まで値上がりです。
8月発表の4~6月期決算では売上高が前年同期比24%増、営業利益が80%増と大幅な増収増益でした。国内や中国、アジアなどで「すき家」「はま寿司」「なか卯」「ロッテリア」など各セグメントが好調です。
「餃子の王将」の王将フードサービス<9936>は16日に上場来高値を上回りました。
7月末に発表した4~6月期決算で、原材料費や配送費の増加によるコストが重荷となり営業利益が前年同期比1%増に伸び悩んでいることを受けて株価は下げていましたが、その後、持ち直しました。
9月の月次既存店売上高は前年同月比7%増と過去最高。客数が伸びているほか、6月に実施した値上げがプラスに働いています。
再びの円安でインバウンド関連に物色
10月は再度の円安が進みました。アメリカ景気のソフトランディング期待や日本の政局を巡る不透明感も円売りドル買いにつながり、9月16日の1ドル=140円割れから150円台へと緩やかな円安傾向です。
こうした中で、インバウンド関連株にも再び物色が広がっています。
16日に日本政府観光局が開示した9月の訪日外客数は287万2200人で前年同月比32%増となり、9月時点で2023年の年間累計を上回りました。国別では中国、マレーシア、アメリカを筆頭に、各地域からの訪日客が伸びています。
東日本旅客鉄道(JR東日本)<9020>は30日に年初来高値3081円まで上昇です。経済の回復で新幹線・在来線の鉄道運輸収入が伸びています。また、駅ナカ店舗や不動産販売・ホテルなども好調が続いています。
九州旅客鉄道(JR九州)<9142>も、アジア地域からのインバウンドや熊本の半導体工場などにより地域全体で景気が復調しており、7日に上場来高値4253円まで値上がりしました。
家電量販店のビックカメラ<3048>は18日に年初来高値1815円まで上昇しました。11日に発表した2024年8月期決算は売上高が前期比13%増、営業利益は71%増で大幅増益でした。
インバウンド向けの免税売上高は、円安要因に加え、海外向けSNSでの発信や現地インフルエンサーとの連携強化、航空会社との取り組み効果などもあり、多様な国々からの集客が進みました。
なぜ電線株が人気なのか?
電線株も新たな収益源で人気化しています。AIの広がりでデータセンターの新設が相次ぐ中、通信用の光ファイバーケーブルの需要が伸びているのです。
〝電線御三家〟の一角であるフジクラ<5803>は、今年に入ってデータセンター向けへの期待が広がり、株価は年初から上昇基調が続いています。31日には上場来高値5775円を付けました。
フジクラの場合、同業の古河電気工業<5801>と住友電気工業<5802>に比べてデータセンター向けの売上高比率が高い点も投資家から評価されています。
そのほかには、電線中堅メーカーのSWCC<5805>も8日に年初来高値を更新しています。
半導体株の逆襲
これまでの上昇の反動から9月には相場が調整していた半導体株ですが、決算などを受けて再評価する動きが出ています。
ハイテク株の代表的銘柄である米エヌビディア<NVDA>は、AI向けの半導体の需要増で最高値更新が続いています。また、台湾の半導体受託製造大手のTSMC<TSM>が17日に発表した7~9月期決算は、AI向けが伸びたことにより市場予想を上回る好決算でした。
こうした流れもあり、国内の半導体株の一角も再び値上がりしています。
半導体検査装置メーカーのアドバンテスト<6857>は、30日に上場来高値8595円を付けました。30日に発表した7~9月期決算は売上高は51%増の3292億円、営業利益は2.7倍の大幅増収増益でした。AI向けの高性能試験装置の需要が大幅に拡大しています。
半導体の製造装置メーカーの芝浦メカトロニクス<6590>も同じく30日に上場来高値を更新しています。先端半導体向けの装置の販売が好調に推移しています。
10月の新安値は機械株
中国などの景気減速や世界的なインフレの進行で、設備投資の機械株の一角が新安値となっています。
衣類などの全自動横編機で世界トップメーカーの島精機製作所<6222>は25日に年初来安値1087円まで値下がりしました。アパレル工場の多いバングラデシュでの大規模な反政府デモの影響があったほか、中国でも設備投資需要が低迷しています。
産業用ロボット向けなど精密制御減速装置のハーモニック・ドライブ・システムズ<6324>も同じく25日に年初来安値2650円を付けています。顧客の在庫調整の影響で、産業用ロボット向けのほか手術支援ロボット向け、半導体製造装置向けの販売が落ち込んでいます。
超純水の製造装置メーカーの野村マイクロ・サイエンス<6254>も同じく25日に年初来安値と冴えない値動きが続いています。海外での半導体洗浄用の超純水製造装置の案件が一巡したことも響いています。
年末に向けた主役を探せ
まもなくアメリカ大統領選挙が決戦を迎えます。結果次第では、マーケットにも影響を及ぼすことになるかもしれません。そこから年末にかけては、日銀や米FRBの金融政策の行方が引き続き焦点となりそうです。
今後はどんな銘柄が活躍するのか? 引き続き、高値更新・安値更新の銘柄を中心にウォッチしながら、相場の潮目を探っていきたいと思います。