ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析、初心者が始めるならどっち?

榊原佳子
2024年12月16日 13時00分

新NISAで積み立て投資を始めたことをきっかけに、もっと株について学び、本格的な株式投資にも挑戦してみたい、と考えるようになった方もいらっしゃるのではないでしょうか?

株式投資について少し調べると、「ファンダメンタルズ分析」と「テクニカル分析」というものがあるらしいことがわかります。

ファンダメンタルズ分析とは

ファンダメンタルズ分析とは、企業の財務データや経済指標、業界の動向などをもとに、その企業の本質的な価値を評価する手法です。

株式投資では、投資対象となる企業の業績、成長性、財務状況は健全かどうか、さらには経済全体の状況なども踏まえて、株価が今後どうなるか総合的を判断し、投資するかどうかを検討します。

ファンダメンタルズ分析のメリットとデメリット

ファンダメンタルズ分析の特徴は、長期投資に適していることです。

そもそもファンダメンタルズ分析は「本質的な価値が高い企業」を見つける手法ですので、バリュー投資やグロース投資など、これから長期的に株価が上昇していくだろう銘柄を探すのに適しています。

一方で、企業の成長や業績の改善、市場からの評価の上昇には時間がかかることが多いため、ファンダメンタルズ分析で良い評価の銘柄であっても、すぐに株価が上がるわけではありません。短期間で利益を得たいなら、ファンダメンタルズ分析による銘柄選択は向いていません。

ファンダメンタルズ分析では、短くとも数か月から数年という単位で企業や株式市場の成長を見守る必要があるため、忍耐力や気長に待てる姿勢が求められます。

その代わり、ファンダメンタルズ分析に基づいた長期投資は感情に左右されにくい、というメリットもあります。短期的な株価変動に一喜一憂することなく、企業の本質的な価値と株式市場が長い時間をかけて成長していくことを待ちます。

とはいえ初心者の方は、自分が買った銘柄の株価が動くと、慌てて売ってしまったり不安になったりしがちですが、そもそも長期的な成長を見込んで投資しているのなら、じっくり気長に待つ姿勢が大切です。

ただし、情報収集や分析に時間がかかる点がファンダメンタルズ分析のデメリットです。企業の決算書や業界の動向、経済指標など、多くの情報を把握し、それらを分析する必要があるため、ゼロから学ぶ初心者にとっては難解に感じられるかもしれません。

テクニカル分析とは

テクニカル分析は、株価や取引量といった過去のデータなどをもとに、今後の株価の動向を予測する手法です。

主にチャートを用いて、株価がどのように動いてきたのかを把握し、それをもとに、この先はどのように動くかを予測します。過去のデータからパターンを見つけ出し、売買のタイミングを決定するのがテクニカル分析の主な目的です。

テクニカル分析のメリットとデメリット

テクニカル分析は短期売買に向いた手法で、株価チャートや指標を使って瞬時に株価の状況を把握し、売買のタイミングを見極めることが可能です。

そのため、1日で売買を完了させるデイトレードや、数日から数週間のスパンで売買するスイングトレードなど、短期間での利益を狙う投資スタイルで用いられます。

このテクニカル分析では過去の価格動向に基づいて予測を行うため、企業の成長性や財務状況などは見ません。テクニカル分析によって買いのシグナルが出ていたとしても、その銘柄は中長期的な投資の対象とはなりません。

初心者の場合、どうしても早く投資の成果を求めてしまうあまり、テクニカル分析で「もうすぐ上がる」という銘柄を選ぶことがあります。しかし、株価の値動きに翻弄され、感情的な取引に走ったり疲弊したりするリスクもあります。

テクニカル分析で短期的な利益を狙うなら、それにふさわしい知識とスキルを身につける必要があります。しかし、なるべく短い時間で大きく稼ぎたいと考える人には、テクニカル分析を用いた短期トレードは魅力的な武器になるでしょう。

ファンダメンタルズ分析の学び方

ファンダメンタルズ分析もテクニカル分析も、どちらもしっかりとした知識を備えたうえで実践すべきことは言うまでもありませんが、まずはその前に、自分にとってはどちらがより合っているのか、を考える必要があります。

もし、積み立て投資との併用で、長期的な資産形成としての株式投資をしてみたいなら、長期投資の基礎とも言えるファンダメンタルズ分析から始めるのがいいでしょう。

ファンダメンタルズ分析に必要な知識は多岐にわたりますが、大きく3つのポイントに分かれます。

(1)基本的な指標の理解できるようになろう

PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)など、企業を評価するために使われる指標がいくつかあります。これらを理解することで、企業がどれだけ効率よく利益を上げているか、株価が割安か割高か、などを判断できるようになります。

これらの指標は、株価情報サイトなどにも掲載されています。まずは各指標の意味とその使い方を知り、様々な企業の指標を見比べたり、その企業の財務諸表と合わせてみたりするといいでしょう。

(2)企業の決算書を読めるようになろう

上場企業は、四半期ごとの決算内容をインターネット上に公開しています。財務状況や各事業の業績、資産と負債の状況や資金の流れなどを把握することで、健全な経営ができているかを判断できます。

最初は取っつきにくいかもしれませんが、決算発表の資料などには、わかりやすいグラフやチャートを用いているものも多くありますので、ぜひ様々な企業の資料に目を通してみてください。

(3)業界の動向や経済を理解できるようになろう

ファンダメンタルズ分析で良い銘柄を見つけるには、企業だけでなく、業界全体や経済についての情報も集める必要があります。いくら企業の業績は好調でも、業種によっては景気の動向に大きく左右されたり、今後の成長に陰りが見えたり、といったこともあります。

経済に関するニュースに目を通したり、政府が出す統計や業界レポートをチェックしたりして、経済の動きや業界の様子にアンテナを張っておきましょう。

初心者におすすめしたいもうひとつの理由

わたしが初心者の方にファンダメンタルズ分析をおすすめしたいのは、もうひとつ理由があります。

それは、政治や経済、国際といったニュースへの理解が深まり、いち社会人としての一般常識が身につく点です。ただ利益を出すだけでなく、投資を通じて自分の世界を広げることにつながるのは、大きな魅力だと感じています。

もちろんテクニカル分析でも、最終的には相場全体の状況を判断する必要があり、そのためには経済や世界の動向に目を光らせておくことになります。

ただ、短期勝負の緊張感の中で学ぶよりも、「知らなかったことがわかるようになる醍醐味」をじっくりと味わうことができるのが、ファンダメンタルズ分析(の勉強)ではないかと思います。

積み立て投資から一歩を踏み出そうとする方が、もっと投資が好きになってくれることを願っています。

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[執筆者]榊原佳子
榊原佳子
[さかきばら・よしこ]ライター、個人投資家。名古屋大学大学院修了後、大手出版社とIT企業で編集者として勤務したのち、フリーランスに。社会人1年目から株式投資を始め、投資歴は10年以上。株を通して経済や国際などの時事・歴史に関心が広がり、さらに株の世界にのめり込む。
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