8月の株価はどうなる? 上がる日・下がる日の傾向と気になるオリンピックの影響

網代奈都子
2021年7月26日 8時00分

「どれ?」より大事な「いつ?」

株式相場にはさまざまな格言があります。そのひとつが「頭と尻尾はくれてやれ」。要するに、欲張って全部の儲けを取ろうとするな、ということですが、これは頭と尻尾ではない「真ん中」をちゃんと取れるプロの発言でもあります。真ん中さえ取れない人はどうすればいいのか?

悩ましい「タイミング」を見極めるひとつの参考になる(かもしれない)のが、日経平均株価の「騰落率」です。

戦後に東京証券取引所が再開された1949年5月16日から現在までの、毎日の日経平均株価の上昇確率を計算したもので、平たく言えば、「この日付の日経平均株価は前日より上がったか下がったか」を1949年から累計したデータです。

それぞれの日付において、株価が前日より上がった場合を「勝ち」、前日より下がった場合を「負け」として、その勝率(上昇する確率)が算出されています。

〈参考記事〉その株、いつ買えばいいの? 一年で最も上がる日・下がる日からわかったこと

長年のデータから、8月のベストな買い時・売り時を探してみましょう! 1年遅れで始まった東京オリンピックは相場にどんな影響を与えるのでしょうか。

これが8月の最も上がる日・下がる日だ!

日経平均株価の騰落率は、日経平均株価の様々なデータを紹介する「日経平均プロフィル」で確認することができます。8月の31日のうちで騰落率が最も高いのは「11日」の64.81%、最も低いのは「6日」の39.66%です(データは2021年7月現在)。

日別の騰落率を2021年8月のカレンダーに当てはめてみましょう。

意外にもお盆がアツい&ラスト5日も上昇傾向

7月に引き続き、8月の株式市場も「夏枯れ相場」と呼ばれ、株価が低調になる傾向があることで知られています。これは、国内外の機関投資家がバカンスを取り、市場参加者が極端に少なくなることが影響しているようです。

その一方で、5日以上連続して騰落率50%以上(=上がる確率のほうが高い)となるのは11~15日の5日間で、ちょうどお盆休み期間にあたります。市場参加者は減るが意外にも勝率はいい、というのが過去の傾向のようです。ご先祖様をお迎えしつつ、株価もチェックしておくといいかもしれません。

また、月末の5日間だけを見てみると、4~6月は騰落率50%を一度も下回らない5連勝で、7月には4勝1敗でしたが、8月の場合も28日だけが45.61%で、残りはすべて50%以上。「月末の5日間は堅い」という傾向は、依然として「ある」と言えそうです。

ちなみに、騰落率が30%台(下がる確率が70〜80%)の「かなり売り優勢な警戒日」は、8月では1日(6日:39.66%)のみ。4月は0日、5月は3日、6月は1日、7月は3日でした。

過去3年の8月の日経平均株価の推移

8月は、5月や7月ほどの「怒濤の下がりデー」はなく、お盆と月末には上昇傾向がみられるものの、他はトレンドというほどのものも見られないことが騰落率の傾向から読み解けます。

これをもとに、過去3年の8月の日経平均株価の推移を振り返ってみましょう。

2020年はおおむね傾向どおりの動きでしたが、2019年はまさに「夏枯れ」といった具合にショボくれています。また2018年は、下旬の上がりぶりは傾向と大体合っていますが、お盆にガクッと落ちているのが目に付きます。

これまでの月と同様に、累積されたデータから思い描く株価のイメージと実際の株価の動きは必ずしも一致しない、ということ。くれぐれも注意したいですね。

8月の最も上がる日・最も下がる日は、どんな日?

8月の「最も上がる日(前日に買っておけばウハウハ?)」と「最も下がる日(前日に売っておけばウハウハ?)」について、もう少し詳しく見てみましょう。

【トップ】8月11日(35勝19負0分)

8月で最も株価が上がる確率が高いのは、8月唯一の「5連勝」(5日連続50%以上)を記録している11~15日の初日にあたる11日です。騰落率は67.86%で、1949年以降の勝ち負けは35勝19負0分。

このあたりからお盆休みに入る人も多いと思いますが、2021年は、東京などでは依然として緊急事態宣言が出されているため(予定)、一体どんな相場展開になるのか注目です。

[この日、何の日?]
  • ガンバレの日……1936年のベルリンオリンピック、競泳女子平泳ぎ200メートル決勝で、先頭を泳いでいた前畑秀子選手に向けて、ラジオの実況アナウンサーが「前畑ガンバレ」を38回も繰り返したことが由来。前畑選手は日本女子初の金メダルに輝きました。
  • きのこの山の日……国民的おやつのひとつ「きのこの山」。チョコレート部分を縦に2つ並べると「8」に、クラッカー部分を2つ横に並べると「11」になることに加えて、新たに設けられた国民の祝日「山の日」に合わせて、メーカーである明治ホールディングス<2269>が制定。なお、「たけのこの里の日」は3月10日だそうです(さと、の語呂合わせ)。

【最下位】8月6日(23勝35負0分)

8月で最も株価が上がる確率が低い(=下がる確率が高い)のは、6日の騰落率39.66%です。戦後に取引のあった計58日分の勝敗は23勝35負0分、つまりは60.33%の確率で下がるということになります。

2021年の8月6日は、そろそろオリンピックも佳境に入った金曜日。メダルの行方とともに、株価からも目が離せません。

[この日、何の日?]
  • 原爆の日……1945年(昭和20年)のこの日、世界初の原子爆弾が広島市に投下されました。現在は平和を祈念する日として、さまざまな行事が行われています。長崎は8月9日。
  • ハムの日……日本ハム・ソーセージ工業協同組合が制定した記念日。そのまんま語呂合わせからですが(8=ハ、6=ム)、広島に原爆が投下された日でもあるため、大がかりなイベントは開かれないのだそう。

オリンピックで夏枯れ相場も潤う?

2021年の8月は、依然収まる気配のない新型コロナウイルスの影響もありますが、7月23日から始まった東京オリンピック・パラリンピックの影響も気になるところです。

コロナ禍で1年の延期を経ての開催であり、ほとんどの競技が無観客で行われるという特殊なオリンピックではありますが、「平時」においては、「オリンピック開催国の株価は上がる」というアノマリーがあります。

前回2016年のリオデジャネイロではブラジルの株式指数であるボベスパ指数は+0.3%、2012年ロンドンではイギリス・FTSE100種総合株価指数は+4.6%でした。2008年の北京五輪の際の上海総合指数は下がっているのですが、この年はリーマン・ショックの年であったという考慮は必要です。

〈参考記事〉オリンピックで株価は上がる? 日本選手の活躍で期待される銘柄とは

また、スポーツ関連銘柄の「ご祝儀相場」も期待されます。リオデジャネイロ大会では、競泳の萩野公介選手などが金メダルを獲得したことから、日本選手団の公式ウェアを手がけたアシックス<7936>の株価が大きく上昇する場面もあったそう。今大会ではどんな銘柄が物色されるのでしょうか。

気になる「オリンピック後」の世界

「例年」かつ「世界的」な傾向で言えば、夏枯れ傾向となる8月相場。バカンスとお盆が重なるのんびりシーズンのはずですが、騰落率ではお盆にはむしろ上昇傾向であるなど、必ずしも「夏枯れ」とも言い切れないことがわかります。

そして、9日以降に待ち受けるのは「オリンピック後」の世界です。相変わらず先の見えないコロナの状況も含め、大局や時期的要因にも目を向けつつ、目の前の相場を注意深く見ていきましょう。

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[執筆者]網代奈都子
網代奈都子
[あじろ・なつこ]30代OL。仕事のかたわらトレードを行っており、そのスキルを磨くべく日々勉強中。目下の目標は年間の利益100万円。安定した利益を出し、ペット可物件に引っ越すのが夢。
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