8月の株価はどうなる? 夏枯れにも負けないタフな銘柄を探せ!

岡田禎子
2024年8月1日 12時00分

《8月といえば花火、9月はお月見、10月はハロウィン……と、月によって誰もが思い浮かべる共通のイメージがあるように、実は、株式投資にも「◎月といえば▲▲▲株」といったお決まりの銘柄があります。では、8月に恒例の上昇しやすい銘柄とは?【今月の株価はどうなる?2024】》

8月に上昇しやすい銘柄は?

8月は「夏枯れ相場」が本格化する月です。

日米ともにマーケット関係者がサマーバケーションに入るため閑散商い状態となる中、アメリカ国債の償還と利払いの月であるため、円高ドル安になりやすくなります。また、下旬には「ジャクソンホール会議」でのFRB議長発言が控えていることも、相場が枯れやすい要因といえます。

そんな8月相場で株価が上昇しやすいのは、どのような銘柄でしょうか?

過去10年で、8月の勝率が高かった銘柄を調べてみました。5勝5敗というパッとしない成績だった日経平均株価よりも好成績を残した銘柄の顔ぶれをみると、小売、外食、機械、人材派遣、サービスなどが並んでいます。

8月特有のアノマリーで上がる株

8月に強い銘柄としてマーケットに広く知られているのが、理想科学工業<6413>です。国内高シェアのデジタル印刷機「リソグラフ」のハード及び関連機器の製造・販売で、学校教育関連が主要顧客の会社です。

過去10年では8勝2敗。前月比の騰落率は、2023年こそマイナスですが、2022年までは5連勝で、2020年が+7.89%、2021年が+28.89%、2022年が+1.85%、といずれも好成績をマークしています。

この株価上昇のポイントとしては、同社の第1四半期の決算発表が挙げられます。理想科学工業は3月期決算企業のため、7月末または8月初めに第1四半期の決算発表が行われます。過去には、進捗率の高さや上方修正、自社株買い発表などで株価上昇となりました。

また、同社は例年、期初の想定為替レートが保守的で、第1四半期の段階で上方修正するパターンが多く見られました。2024年の想定為替レートもドル円で145円、ユーロ円で155円で実勢レートと乖離があり、上振れでの着地が期待されます。

決算発表の注目ポイント

第1四半期決算で進捗率の高い銘柄は、中間決算での上方修正が期待できるほか、夏枯れ相場の中ではリスク回避先にもなるため、株価が上昇しやすいという点があります。さらに、自社株買い発表は株価のプラス要因です。

8月は3月期決算の第1四半期の決算発表が本番を迎えますが、日本企業は期初段階では保守的な会社計画を出す傾向にあります。

2024年も慎重な期初計画が出されましたが、足元はというと、TOPIXのEPS(1株あたり利益)は上昇傾向にあります。さらに、全産業の想定為替レートは144.77円(6月日銀短観参考)で、実勢レートとは大きくかけ離れています。

自動車、電機、精密機械など日本株の主力を占める輸出企業は円安メリットを享受できるため、第1四半期は業績への上振れ期待が持てそうです。

8月はディフェンシブ株がタフな動き

8月はディフェンシブセクター内需株)がタフな動きをみせます。

その理由として、8月は取引高が低調で、かつ地政学的リスクが多い月としても知られている、また、半導体など景気敏感株は売られやすい傾向がある、などがあります。そのため、安全な投資先として内需株に投資資金が向かいやすくなるのです。

特に小売や外食、レジャーなどがその代表格で、上の表にもランクインしている乳飲料の雪印メグミルク<2270>や豆乳飲料のマルサンアイ<2551>、8月銘柄として知られるカゴメ<2811>などがあります。飲料メーカーは暑い夏には飲料の消費が増えるため、株価が上昇しやすい傾向にあります。

さらに夏は、アイスコーヒーが飲みたくなります。猛暑の駆け込み寺的な場を提供する高級喫茶「椿屋珈琲店」を展開する東和フードサービス<3329>や、コーヒーを製造・販売するキーコーヒー<2594>、ユニカフェ<2597>なども8月の銘柄としてお馴染みです。

お盆や夏休みは家族で外食する機会も増えます。寿司チェーンの銚子丸<3075>は過去10連勝中ですし、うどんやそばならグルメ杵屋<9850>、焼肉は安楽亭<7562>や「焼肉きんぐ」を展開する物語コーポレーション<3097>なども注目されやすい銘柄です。

日本KFCホールディングス<9873>なども、8月11日まで行われるパリ五輪の観戦における需要増も期待できそうです。また、真夏の暑さを避けてのレジャー関連では、ラウンドワン<4680>やサンリオ<8136>などでしょうか。

夏ならではの〝活きがいい〟タフな銘柄に注目したいところです。

夏はエンタメ関連で盛り上がろう

8月は、映画・アニメやゲームなどエンターテインメント関連の株価も盛り上がりやすい月です。夏休み需要に向けて注目の作品が封切られたり、イベントが盛んに行われたりで話題が尽きないことや、決算も続々と発表されるからです。

ひとたびヒットすれば業績が大きく変化し、株価がジャンプアップする可能性を秘めているのが、この業種。サウジアラビアでの「ドラゴンボールテーマパーク」建設など、オイルマネーの流入も注目を集めています。

この夏の上昇期待銘柄をいくつか挙げてみます。

・カプコン<9697>

「モンスターハンター」シリーズは累計販売本数が1億本を突破。新作アクションゲーム「祇(くにつがみ)/Path of the Goddess」を7月に発売し、2025年には待望の新作「モンスターハンターワイルズ」の発売を控えています。

・あかつき<3932>

大人気コミック「怪獣8号」のゲーム化を担っています。テレビアニメの放映も始まり、クロスメディア展開の加速による人気拡大が期待されます。

・東宝<9602>

2025年2月期は減収減益の会社計画ながら、第1四半期は大幅な増収増益で着地。映画「劇場版ハイキュー!!」や「名探偵コナン」などが大ヒットで業績に貢献したほか、「呪術回戦」などTOHOアニメーション作品の劇場公開、動画配信、商品化権など多角的展開の好調推移が全体を牽引しました。

この夏に劇場公開の作品にも期待したいところ。

  • 「キングダム 大将軍の旗艦」(7月12日公開)
  • 「僕らのヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト」(8月2日公開予定)
  • 「映画クレヨンしんちゃん おらたちの恐竜日記」(8月9日公開予定)

・東映アニメーション<4816>

2025年3月期は14%営業減益の会社計画ながら、「ワンピース」25周年効果や「ドラゴンボール」「プリキュア」シリーズなどの安定的な収益に加え、「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」の想定外のヒットもありました。今後も以下の新作を控え、保守的とみられています。

  • 「わんだふるぷりきゅあ! ざ・ ムービー」(9月13日公開予定)
  • 「ドラゴンボールDAIMA(ダイマ)」(2024年秋に放送開始予定)

日本のお家芸であるマンガ&アニメ作品とともに、株価も盛り上がりたいところです。

8月の日本株はどう動く?

個別株に投資するには、相場全体の流れもしっかり掴んでおきましょう。

過去のチャートを確認すると、8月相場は、市場参加者の少ない閑散相場の中、強気は強気へ、弱気は弱気へと、ひとたび方向性が定まれば加速しやすい展開となりがちです。

8月22日〜24日にはアメリカで「ジャクソンホール会議」が開催されます。ここでのFRB議長の発言が株式市場や金利、為替などに大きな影響を与える場合もあり、市場関係者の注目度が高い重要イベントとなっています。

2022年にはジャクソンホールをきっかけに、イケイケのサマーラリーから大暴落へと突き落とされた記憶も新しいところ。

今のマーケットの最大の関心事は「アメリカで9月の利下げは行われるのか?」ですが、このジャクソンホールでの講演内容で、それが明らかにされる確度が高いと見られています。発言内容次第ではボラティリティが高まる可能性もありますので、注視したいところです。

夏枯れは絶好の仕込みどき?

8月に株価が上昇しやすい株をご紹介しましたが、「恒例」だからといって今年も必ず上がるとは限りません。ただ、ダレがちな8月相場であってもタフな銘柄はあります。

また、半導体関連銘柄は夏に休憩し、秋から再び上昇する、という季節性があります。そこで、8月相場の押し目で仕込む、といった視点を持ちたいものです。

さらにいうと、夏枯れから大きく崩れた際には「これは変化への潮目か? もしくは単なるノイズか?」を見極めることで、その後の成績が大きく変わってくるでしょう。

【8/2追記】

7月31日に日銀が追加利上げを決定しました。これを受けて急激な円高の流れとなり、円高に弱い日本株は調整局面となっています。

株式相場が揺れに揺れて、本日も恐ろしいことになりそう・・・。個人的にも大きくやられてしまいました(笑)。ただ、一旦ショックで下がったものの、落ち着けば夏休み相場の範疇なのかな、とも考えます。

日米ともに夏休み相場本番となりましたが、ここから本格化する決算発表を見極め、秋の相場に向けて冷静に対処したいところです。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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