8月の株価はどうなる? 夏枯れなのに材料が多い相場で注目したい銘柄とは

岡田禎子
2026年7月25日 11時00分

《今年の「夏枯れ」は、例年とやや様相が異なるかもしれない。材料が多く、業績やテーマに裏付けされた銘柄選別がより重要に。世界が見守るイベントと注目銘柄から、8月相場の傾向と対策を解説

8月は「前半選別、後半先回り」の月です。7月下旬からピークを迎える4〜6月期決算で、市場の関心は「企業の稼ぐ力」に集中。決算次第で株価の明暗もはっきり分かれます。

一方、後半は市場の目線がガラリと変わります。ジャクソンホール会議やエヌビディア決算など、今後を左右する大型イベントが控えているからです。加えて、中間配当や優待を狙う先回り買いも入りやすく、秋相場に向けたエネルギーが徐々に高まっていく展開となります。

  • 重要イベント:国内企業の4〜6月期決算、ジャクソンホール会議、エヌビディア決算
  • 注目銘柄:決算・配当取りで「伊藤忠商事」「日本郵船」、AIで「古河電気工業」、インバウンドで「共立メンテナンス」「サンリオ」

8月相場の特徴──アノマリーと恒例イベント

例年8月の株式市場は「夏枯れ相場」と呼ばれ、国内外の機関投資家が夏休みに入るため市場参加者が減少し、売買代金も細りやすくなります。日経平均株価の月間騰落率は過去20年で平均マイナス0.8%となっており、年間を通じても負け越しやすい月だとわかります。

だからと言って、すべての銘柄が下がるというわけでもありません。流動性が低下する分、好決算や明確なテーマを持つ企業には投資マネーが集中しやすく、そのため指数全体よりも個別銘柄の選別が重要になります。

・国内企業の4〜6月期決算

7月下旬から8月前半にかけて、4〜6月期の決算発表がピークを迎えます。日本企業の多くを占める3月期企業にとっては、今期最初の四半期決算となります。通期業績や今後の市況を見通すうえでも、注目です。

・中間配当を狙った先回り買い

8月後半になると、9月に実施される中間配当や株主優待を見据えた先回りの買いが入りやすくなります。

特に、累進配当や自社株買いなどの株主還元を積極的に行っている企業は、相場全体が方向感を欠く場面でも底堅い動きが期待できます。配当利回りだけではなく、資本効率や株主還元姿勢まで含めて評価される企業に注目したいところです。

・ジャクソンホール会議

8月下旬には、世界の中央銀行トップが集まる、米カンザスシティ連邦準備銀行主催の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開催されます。FRB議長の発言が株式市場や金利、為替などに影響を与えることも多く、毎年、注目度の高い重要イベントとなっています。

2026年の8月相場はどうなる?

「夏枯れ」という季節性はあるものの、今年の8月は、投資判断を動かしかねない材料も少なくありません。展開としては、前半は国内企業の決算を見極め、後半はエヌビディア決算やジャクソンホール会議、9月相場への先回りを意識するという流れになりそうです。

ポイントは、「材料は多いのに参加者が少ない(薄商い)」というミスマッチです。わずかな注文でも株価が大きく動きやすいため、好材料が出た個別株に資金が集中するでしょう。指数に惑わされず、業績やテーマに裏付けられた銘柄を丁寧に選別することが何よりも重要です。

・2026年4〜6月期決算の注目点

今回の最大の注目は「AI関連株」と「日本を代表する大型株」の2軸です。

AI関連株の決算では、「期待感」のステージは終わり、実際の注文が積み上がって利益として数字に表れているか、という「実質的な稼ぐ力」をシビアにチェックするフェーズに移行します。

一方、大型株の決算では、会社計画に対する「進捗率」の高さや、増配・自社株買いといった株主還元の姿勢がどれだけ示されるかが焦点となります。

・夏休みのインバウンド&内需株

8月は夏休みシーズンのピークであり、旅行、レジャー、ホテル、外食、百貨店などインバウンド・内需関連には強力な追い風が続きます。円安を背景に訪日外国人旅行者の消費は高水準を維持しやすく、コスト上昇を上回る客室単価の上昇などを享受できるリゾート運営や、高付加価値な内需株が注目されます。

一方で、中東情勢の再緊迫化には注意が必要です。原油価格の上昇はコスト増による利益率の低下圧力がかかります。客単価の引き上げなどによってコスト増を吸収できる「価格転嫁力」も、内需株を選ぶ際の重要な判断材料となりそうです。

・世界が見守るエヌビディア決算

現在、市場の関心はAI投資の継続性だけでなく、巨額投資が売上高や利益の成長にどこまで結びついているのか、その「投資効果」へと移っています。

8月26日(日本時間27日早朝)に予定されているエヌビディアの決算発表で、引き続き強い業績や需要見通しが示されれば、日本のAI関連にも強い追い風となるでしょう。仮に期待を下回る内容となれば、関連株全体に利益確定の売りが広がる可能性があり、世界中が固唾を呑んで見守ります。

・FRB新議長は初登壇で何を語るか

今年のジャクソンホール会議は、現地8月27日〜29日の日程で開催されます。5月に就任したFRBウォーシュ新議長にとって、就任後初の登壇が控えています。ウォーシュ氏がどのような金融政策のスタンスを示すのかに市場の注目が集まります。

夏枯れで薄商いの中、新議長の発言をきっかけに金利や為替が動けば、金利に敏感なAI関連株などに影響を及ぼしかねず、8月の最大の分岐点となりそうです。

2026年8月のイチオシ銘柄5選

・伊藤忠商事<8001>

商社株といえば「高配当株」の代名詞。なかでも伊藤忠商事<8001>は、非資源(繊維、食品、ITなど)に強いため、中東情勢などで資源価格変動に業績が左右されやすい他の商社と比べて収益の安定性に強みがあります。

8月後半からは9月の中間配当を意識した安定志向の資金が入りやすくなるため、株主還元にも積極的な伊藤忠は、お盆明けの「配当取り先回りレース」の主役として注目です。第1四半期決算発表は8月3日(月)に予定されています。

・日本郵船<9101>

8月に強い銘柄として知られるのが日本郵船<9101>です。今年の8月相場の不透明要因として「中東情勢の緊迫化」が挙げられますが、海運セクターはその影響が追い風となる側面があります。

現在、多くの船舶がアフリカを回る迂回航路を選ぶようになっており、航海の長期化が船の供給を逼迫させれば海上運賃(スポット運賃)の高騰につながるため、収益改善が期待できるからです。

日本郵船は株主還元(高配当)にも定評があり、8月後半からの配当取り資金の受け皿としても機能します。8月5日(水)予定の第1四半期決算発表と運賃上昇、高配当という3つの材料がそろった銘柄として注目したい銘柄です。

・古河電気工業<5801>

AI関連相場は「期待感」から「実需」へと評価軸が変わりつつあります。電線株の物色テーマも、これまでの広域の光ファイバーから、データセンター内を「つなぐ技術」へと移行しています。そんな次世代インフラに不可欠な技術を持つのが、古河電気工業<5801>です。

8月6日(木)に行われる予定の第1四半期決算発表で実需が受注や利益率などの数字で確認できたら、先行していた高い期待感に正当な裏付けが伴うことになり、さらなる上値を追う強力なカタリストとなりそうです。

・共立メンテナンス<9616>

内需・インバウンドの両面から注目したいのは、ビジネスホテルの「ドーミーイン」と「共立リゾート」を双輪に展開する共立メンテナンス<9616>です。平日は出張という安定した実需があり、繁忙期にはリゾートで高単価とインバウンド需要も取り込める点が強みです。

8月7日(金)に予定されている第1四半期決算発表では、夏の繁忙期に入る前の4~6月に、客室稼働率や客室単価がどこまで伸びたのかに注目です。インバウンド需要を背景とした単価上昇が、人件費や運営コストの増加を上回って利益成長につながっていれば、夏休みシーズンの業績への期待も一段と高まりそうです。

・サンリオ<8136>

「ハローキティ」など保有IP(知的財産)の世界的な人気を背景に、国内外で空前のファン拡大が続いています。

夏休みシーズンの8月は国内テーマパークの繁忙期であると同時に、訪日外国人のグッズ買いによるインバウンド恩恵を直接受けます。さらに、海外でのライセンス事業も強化しており、国内レジャー株にとどまらないグローバルIP企業としての評価が高まっています。

今期(2027年3月期)も会社側は増収増益を見込んでおり、8月10日(月)予定の第1四半期決算発表では、国内外のライセンス収入が高い成長を維持しているかが焦点となりそうです。

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP) note:https://note.com/okapirecipe_555
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