12月の株価はどうなる? “年末高”のアノマリーで上がる株と大型IPOを総点検

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《12月といえばクリスマスに年末商戦。実は株式市場にも、月ごとの「風物詩」があります。お決まりのパターンや上がりやすい株など、その月ならではの「あるある」を知っておけば、ムダな損失を避け、大きなチャンスをつかめるかもしれません》
- 12月相場は月末に向かって株価が上昇しやすい
- 今年は金融政策で大きく振れる可能性も
- 12月に強い銘柄:MS&ADインシュアランスグループホールディングス
- クリスマス&年末商戦で外食・小売・エンタメ・百貨店などに注目
- 年末恒例IPOラッシュ&12月決算の高配当株も要チェック
12月相場は「掉尾の一振」
12月は月末に向かって株価が上昇しやすい月です。いわゆる「掉尾の一振(とうびのいっしん)」「年末ラリー」が起こりやすい時期として知られています。
そんな12月相場で注目されるのは、年末商戦が追い風となる内需株や高配当株です。毎年恒例のIPO(新規株式公開)ラッシュも相場を盛り上げます。
日経平均株価の過去20年の12月の月間騰落率(=前月終値と当月終値の比較)は、平均でプラス2.1%という高パフォーマンス。下のグラフを見てもわかるとおり、年末にかけて2か月連続で上昇しやすいのが日本株の特徴です。つまり、12月は年末高を狙いやすい月なのです。

もちろん、今年も例年どおりの値動きをするとは限りませんが、こうした相場の季節性や、その月の恒例イベントにあわせた値動きのパターンを事前に知っておくことで、それを先回りして投資することもできるようになります。
さらに、月ごとのアノマリーからその傾向や特徴を読み解くことで、効率的な物色がしやすくなります。「アノマリー」とは相場における経験則のことで、根拠はないけどよく当たるものや、相場格言として長く言い伝えられているものも多くあります。
〈参考記事〉最も株高・株安になりやすいのは何月? 意外と知らない株式相場のパターンとは?
12月の株価はどう動く?
12月の前半は、節税対策の売りや利益確定売りが出やすく、上値の重い展開に。対して後半は、個人投資家の配当狙いや機関投資家のリバランス買いで上昇しやすい、という構図があります(過去の12月の日経平均株価のチャートはこちら)。

今年の12月は、ここに金融政策イベントが重なります。アメリカでは12月9日・10日にFOMC、日本では18日・19日に日本銀行の金融政策決定会合が開催されます。
FOMCの利下げの確率は「五分五分」(4〜5割)の情勢です。地区連銀総裁の間では慎重論が強い一方で、景気減速を重視する理事の一部は利下げを支持しており、見解が割れています。利下げ見送りとなれば高PERのハイテク株には調整圧力がかかりやすく、注意が必要です。
一方で、日銀の12月の利上げの可能性は3~4割程度。複数の理事は利上げを支持しているものの、景気減速や政府の低金利志向が判断を難しくしています。
「材料が出そろう1月のほうが決定しやすい」との見方も多く、その分、この12月は政策期待による相場の振れが大きくなりそうです。中央銀行の金融政策は株・債券・為替相場に大きな影響を与えます。今年は例年以上にその動向をつぶさにフォローする必要があるでしょう。
12月のアノマリーで上がる株
そんな12月相場で上昇しやすいのは、どんな銘柄でしょうか? 過去10年(2015年~2024年)の12月相場で勝率が高かった銘柄を見てみましょう。いずれも、「12月相場に強い銘柄」として相場ではおなじみの企業です。

この中で特に注目したいのは、MS&ADインシュアランスグループホールディングス<8725>です。この10年で9勝1敗という高い勝率を誇ります。12月の株価上昇のポイントは成長性と中間決算です。
・MS&ADインシュアランスグループホールディングス<8725>
「三井住友海上」や「あいおいニッセイ同和損保」「三井住友あいおい生命保険」などを傘下に持つ損害保険大手です。
中間決算は例年11月下旬に公表され、好決算に加えて増配などの株主還元策なども高く評価され、株価は安定した上昇トレンドとなっています。今期(2026年3月期)も、海外事業の上振れや政策株式売却益の増加が寄与し、上方修正と自社株買いを発表しました。
さらに、日銀の利上げ観測が高まる局面は保険会社には追い風となりやすく、予想配当利回りも4%台と高水準。NISA勢の資金も流入しやすい環境です。
株価は、春〜夏の急騰後の調整も一巡し、足元では再び上昇基調が鮮明になりつつあります。

クリスマス&年末商戦で上がる株は?
12月は「お歳暮」「クリスマス」「歳末」と消費イベントが集中します。2025年は冬のボーナスも前年比約+2.6%の増加が見込まれており、年末消費への期待が高まります。
今年のキーワードは「メリハリ消費」。日用品は節約しつつ、特別な日は思い切って使う傾向が強まり、外食・エンタメ・旅行といった「体験消費」が好調となりそうです。
こうした流れから考えられる関連銘柄には、プチ贅沢外食のFOOD & LIFE COMPANIES<3563>、冬の映画興行が期待される東宝<9602>、テーマパーク需要の堅調なオリエンタルランド<4661>などが挙げられます。
クリスマス商戦では、ゲーム・映画・音楽などエンタメのソニーグループ<6758>、自宅の快適さを高める良品計画<7453>にも注目です。
年末のご褒美旅ではリゾートトラスト<4681>、高価格帯ギフトやスイーツでは三越伊勢丹ホールディングス<3099>や高島屋<8233>でしょうか。年末のまとめ買い需要ではドラッグストアのスギホールディングス<7649>にも目を向けたいところです。
今年もIPOラッシュの季節到来
12月はIPO(新規株式公開)ラッシュの季節です。2025年もすでに11社の上場が予定されており(11月20日現在)、年末相場の雰囲気を一段と盛り上げます。
その中でもひときわ注目を集めそうなのが、17日に東証プライムに再上場するSBI新生銀行<8303>です。上場時の時価総額は1兆3000億円程度が見込まれ、2025年の上場ではJX金属<5016>に次ぐ大型案件。12月IPOの「主役」と言っていい存在でしょう。
SBI新生銀行は、銀行とノンバンクの機能を併せ持つ総合金融サービス会社です。「第4のメガバンク構想」というストーリー性も強く、金利上昇局面での銀行株人気も加わります。もっとも、大型の再上場案件は需給が重くなりやすいため、初値が飛びにくいという面もあります。
とはいえ、SBI新生銀行の場合、業績は堅調で、比較される楽天銀行<4755>や住信SBIネット銀行(今年9月に上場廃止)がIPO後に比較的良好な株価パフォーマンスを見せた点も、投資家心理の支えとなりそうです。
2026年の予想配当利回りは2%台半ばとなっており、銀行株として一定の投資妙味もあります。初値追いよりも、中長期での値上がりと配当を狙う投資家に人気化するかもしれません。
「今年の年末はIPOが相場を明るくしてくれそう」──そんな期待を抱かせる再上場と言えるでしょう。
年末は高配当株とNISAにも注目
年末年始は高配当株が特に注目される時期でもあります。株価が上昇した高値圏の銘柄を売って、まだ割安感があり、かつ配当利回りの高い銘柄へ乗り換える動きが出るためです。
12月決算企業の中で高配当株の代表格として挙げられるのは、日本たばこ産業<2914>や東亜合成<4045>、INPEX<1605>など。いずれも3%超えの魅力的な利回り水準です。なお、年末の権利付最終売買日は12月26日(金)となっています。
ちなみに、2025年のNISA枠の実質的な最終買付日もこの日(12月26日)ですので要注意です。
「辰巳天井、午下がり」の年越し相場
来年2026年は午(うま)年。株式市場には「辰巳天井、午下がり」という相場格言があり、辰年・巳年に株価が上昇した後、午年には調整が入りやすい……と言われています。
巳年の2025年相場は、日本株・アメリカ株ともにいくつもの難局がありました。その締めくくりとなる12月相場は、来年以降の方向性を占う意味でも重要です。この季節ならではの華やぎを楽しみつつも、年末相場の大波をしなやかに乗りこなしたいものです。









