いまIP関連銘柄がアツい! その強さの秘密とは

佐々木達也
2025年3月27日 9時00分

米トランプ政権による追加関税やインフレ進行など、日本株の上値が重たくなっています。その一方で株価が堅調なのが、ソニーグループ<6758>やサンリオ<8136>など独自のIP(知的財産)コンテンツを展開する企業です。

関税などの影響を相対的に受けにくいほか、収益力の拡大が続いているのも、これらIP関連銘柄が評価されているポイントです。その強さの背景を探ってみましょう。

IP(知的財産)とは?

知的財産(Intellectual Property)とは、デザインやブランド、文学的・芸術的作品、発明など、人間の創造的活動の成果物を指します。これらは知的財産権で保護されることから、企業にとっては大きな資産となります。

株式市場でなじみの深いのは、任天堂<7974>のゲームキャラクターであるマリオやドンキーコング、ソニーグループ<6758>傘下のアニプレックスがもつ「鬼滅の刃」、ゲーム大手のカプコン<9697>の「ストリートファイター」や「ロックマン」などが挙げられます。

IPビジネスの強みとは?

IPを用いたビジネスはなぜ強みとなるのでしょうか? それは、一言で言えば持続可能な競争優位性を確保できる点にあります。

独自の技術やブランド、コンテンツを保有することで、市場での差別化を図ることができ、また、知的財産権を活用してライセンス収入やロイヤリティー収入を得ることが可能です。

さらに、これらのキャラクターやストーリーをアニメや漫画、ゲーム、映画など多岐にわたるメディアを通じて展開する、いわゆるクロスメディア戦略により、一層の収益拡大を図ることができるのです。

なぜ日本のIPコンテンツは強いのか?

一般的に、日本のIPコンテンツは高い品質と独自性を持ち、世界観やデザインは他国の製品と一線を画していると言われています。

これには、日本のコンテンツ企業の地道な努力が背景にあります。日本のコンテンツ企業は2000年頃から海外展開に向けて舵をきり、海外の消費者に直接リーチできるようダイレクトチャネルを構築していったことも成功の一因です。

また、2010年頃からデジタルコンテンツの配信プラットフォームを通じて日本のアニメ作品などが海外で浸透し、知名度と人気を高めていったことも寄与しました。

日本のコンテンツの海外における市場規模は、アニメやゲームを中心に拡大し、2022年時点で約4.7兆円となっています。これは、10年で約3倍に拡大した計算です。輸出額では鉄鋼産業に匹敵し、半導体産業に迫る規模とされています。

また、内閣府が2024年8月に決定した「新たなクールジャパン戦略」では、コンテンツや日本食などのクールジャパン関連産業を日本の基幹産業として位置付け、2033年までに50兆円に拡大するという目標が設定されました。

今月開幕の大阪・関西万博でも、日本のIPをテーマにした出展なども期待されており、さらに話題となりそうです。

代表的なIP関連銘柄をチェック

ゲームや音楽で着実に収益力を拡大

・ソニーグループ<6758>

ゲーム、アニメ、音楽、映画と多様なエンターテインメント事業を展開し、それらのIPでシナジーを生み出すことで安定成長が続いているソニーグループ<6758>。また、6年間で約1.5兆円という巨額を投じてIPの取得・投資を進めてきました。

ゲーム分野では、「プレイステーション(PS)」のユーザー数の伸びが堅調です。 PS全体の昨年12⽉の⽉間アクティブユーザー数は、PS史上最⾼となる1億2900万アカウントを記録しています。

その12月には動画配信を手がけるKADOKAWA<9468>と資本業務提携しました。 人気漫画『推しの子』や若年層に人気のライトノベルなど価値の高いIPを多く保有するKADOKAWAとソニーグループとの連携で、ネットフリックスなど動画プラットフォームへの提供など様々な拡大戦略が期待されています。

今年1月に米ラスベガスで開催されたエレクトロニクス見本市「CES2025」では、傘下のアニプレックスの人気アニメ「鬼滅の刃 無限城編」をテーマにした体験ブースを出展。IP価値を最大化するという同社の戦略が具現化された内容となっていました。

株価は、2024年はボックス圏での値動きでしたが、収益力の拡大が評価され、レンジを上抜けてきています。再び上場来高値トライの続く強いチャートとなっており、さらなる上値追いの展開もありそうです。

有力IPゲーム多数で業績も好調

・カプコン<9697>

「モンスターハンター」や「ロックマン」「ストリートファイター」などの有名タイトルを持つ家庭用ゲームソフトの大手メーカーのカプコン<9697>。

特に「ストリートファイター」シリーズはグローバルで人気の作品で、シリーズ累計で世界全体で5200万本以上を販売しています。高額賞金のゲーム大会の人気も高く、2023年の「カプコンプロツアー2023」では賞金総額が200万ドルを超える規模で開催されています。

カプコンは、IP価値を最大化し、ゲーム販売を促進させる「ワンコンテンツ・マルチユース戦略」を強みとしています。実際にキャラクターグッズや映画、パチスロ機などにも展開し、幅広い分野で収益を伸ばしています。

また、技術力とクリエイター陣により、アクションゲームを中心にコンテンツを拡大。ゲーム業界では近年膨大な開発費が業績の負担になることが多いなか、IP人気の高さを背景に、収益性の高い旧作タイトルのダウンロード販売や人気コンテンツの続編なども好調です。

業績も好調で増収増益が続いており、今期(2025年3月期)も売上高、営業利益は過去最高を見込んでいます。株価も、上下動を繰り返しながらも上昇トレンドが続く強い値動きとなっており、市場の評価の高さがうかがえます。

ガンダムも、ドラゴンボールも

・バンダイナムコホールディングス<7832>

「ドラゴンボール」「ワンピース」「アイドルマスター」「たまごっち」などの有力IPを多く保有しているのが、バンダイナムコホールディングス<7832>です。

トイホビー事業では「ガンダムシリーズ」やフィギュア比較的年齢層が高く、購買力のあるIP多いため、プラモデル、トレーディングカード、カプセルトイなどの販売が世界的に好調です。

直近ではスタジオカラーと共同で取り組んだ「機動戦士ガンダムジークアクス」が新しいガンダムとして高い支持を集めており、新たなファン層の獲得につながっています。

海外においても商品の多言語化や現地IP、現地企業とのコラボレーションによる展開エリア・カテゴリーの拡大を進めています。大阪・関西万博ではガンダムをテーマとしたパビリオンの出展を予定しており、話題となりそうです。

株価は2023年から2024年にかけてレンジ内での値動きでしたが、足元のIP関連銘柄を再評価する動きもあり、2025年に入って上昇ピッチが加速しています。

IP関連銘柄との向き合い方

IPをとりまく環境と関連銘柄についてご紹介してきましたが、個人投資家はどのように向き合うのが良いでしょうか?

有力IPを保有する企業は収益力の伸びが期待しやすく、成長株として長期保有が有効になりそうです。その反面、有名IP銘柄は投資家に人気となりやすいことも多いため、チャート上で株価の勢いが過熱とみられるときは投資を控えることも検討したいところです。

また、日常生活でもSNSなどに新たな次の有力IPの芽が育っているかもしれません。アンテナを高く張り、気になるキャラクターやコンテンツがあったら自分で楽しむだけでなく、ライセンスを持っているのはどの企業か、といったことをこまめに調べておくのもいいでしょう。

そうした中から、新しい投資のアイデアが見つかるかもしれません。

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[執筆者]佐々木達也
佐々木達也
[ささき・たつや]金融機関で債券畑を経験後、証券アナリストとして株式の調査に携わる。市場動向や株式を中心としたリサーチやレポート執筆などを業務としている。ファイナンシャルプランナー資格も取得し、現在はライターとしても活動中。株式個別銘柄、市況など個人向けのテーマを中心にわかりやすさを心がけた記事を執筆。
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