話題のタイミーがついに上場! 騰落率で上回ったドローン銘柄にも注目【7月のIPOランキング】

石井僚一
2024年8月20日 15時00分

《「確実に儲かる」として個人投資家に人気のIPO株投資。しかし近年、そんな「夢の時代」にも陰りが……? IPOで上がる株と下がる株は何が違うのか。データから読み解く【IPO通信簿】》

8月の閑散期を前に、7月のIPO市場では7件のIPO新規株式公開)が行われました。その中には、注目のタイミー<215A>のIPOも。公募割れも発生せず、落ち着きを見せた7月のIPOを振り返ります。

2024年7月のIPO市場

例年IPOの閑散期となる8月をあとに控える7月ですが、今年は7件のIPOがありました。昨年の10件に比べると3件減少したものの、タイミー<215A>がついに上場したことで大きな注目を集めたほか(詳しくは後述)、ドローン銘柄に加えてバイオ銘柄も2社あり、特徴的なIPOが行われた月となりました。

IPO市場に大きな影響を与える日経グロース市場250指数(旧・東証マザーズ指数)は、月足では上ヒゲのある陰線を形成しました。6月は上昇したものの、再び反落。2022年からの低迷が長引いており、散発的な上昇は見せるものの、なかなか続きません。

昨年も、6月に上昇したあと7月に下落して、さらに10月まで4か月続落となりました。今年も同様のパターンになってしまわないかどうか、懸念されます。

2024年7月のIPOランキング

2024年7月にIPOを果たした7銘柄について、公募価格に対して初値がどれだけ上昇(あるいは下落)したかを表す「初値騰落率ランキング」を見てみましょう。

まず、7月は公募割れがありませんでした。グロース指数は下落したものの、IPO市場はなんとか踏み留まったと言えるでしょう。ただ、初値騰落率が100%を超える銘柄も出ておらず、IPO市場全体としては落ち着きを見せています。

初値騰落率1位は+46.5%だったLiberaware<218A>、2位は+33.4%のバイオベンチャー、Heratseed<219A>で、注目を集めたタイミー<215A>は+27.6%で騰落率3位でした。

6月は、グロース指数が上昇する一方で、IPO市場に対する追い風は限定的でした。しかし7月は、グロース指数は下落したもののIPO市場に対する向かい風は限定的。良くも悪くも、IPO市場がグロース指数から過度に影響を受ける状態は避けられているようです。

2024年7月の気になるIPO銘柄

2024年7月のIPOから、隙間時間のアルバイトサービス提供で急成長を果たし、そのIPOが大きな話題となったタイミー<215A>と、初値騰落率1位となったドローン銘柄、Liberaware<218A>について詳しく見てみましょう。

時価総額1000億円超えの新興企業、誕生

・タイミー<215A>

テレビCMなどで知名度もある、隙間時間のアルバイトサービスの提供企業、タイミー<215A>。自社が開発した求職者と求人事業者のマッチングシステムを事業者側に提供して、手数料を得るビジネスモデルとなっています。

自らシステムを開発したことに加えて、営業人員を揃えて事業者に対するきめ細かいフォロー体制を構築したことで、さまざまな事業者の間で利用が広まり、隙間時間のバイトサービス市場が一気に拡大しました。

過去の業績と今期の業績予想は以下のとおり。

2018年8月のサービス開始後、2021年10月期までは赤字が継続。そして2022年10月期の黒字転換後、急速な事業拡大と大幅黒字化に成功しています。2024年10月期は売上高275億円、経常利益36億円の予想で、上半期時点で売上高124億円、経常利益16億円まで伸びました。

急成長を背景に強気の株価設定を行い、公開価格(1450円)での予想PER61倍、時価総額1379億円でIPOに臨みました。そして、その知名度と成長性が評価され、ついた初値は1850円(予想PERは78倍)、時価総額は1760億円まで伸びました。ただ、初値騰落率としては+27.6%に留まっています。

まずは順調なIPOデビューを飾ったと言えるでしょう。ただし、時価総額1000億円突破、予想PER70倍超というのは、今後の成長を相当先まで織り込む水準です。この先も成長が続き、高い株価水準を維持してさらなる株価上昇に進むかどうか、引き続き注目されます。

ドローンの成長イメージが株価を後押し

・Liberaware<218A>

Liberaware<218A>は、ドローンの製造・販売というハード事業に加え、ドローンなどによって取得したデータ解析や、その解析ソフトウェアの開発などを担うソフトウェア事業も手がけるベンチャー企業です。

過去の業績と今期の業績予想は以下のとおり。

増収が続くものの、赤字も継続中。2024年7月期は、売上高は前期比で倍増する反面、赤字も継続する予想となっています。

公開価格310円、時価総額58億円でIPOに臨み、初値454円、時価総額85億円での着地となりました。

赤字企業で株価評価は難しいものの、ドローンという成長イメージのある事業を手がけていることから、期待感に後押しされて、7月の初値騰落率1位(+46.5%)となりました。グロース指数の上昇という追い風があれば、時価総額は100億円に到達していた可能性もあります。

公募による資金調達額は4.8億円。第3四半期末時点の現預金5.4億円と合わせて、IPO後は約10億円の手持ち現金となりました。国土交通省のプロジェクトに2件採択(金額合計56億円)という好材料もある中で、どのタイミングで黒字化し、利益成長に向かうのかが今後の注目です。

夏休みが終わればIPOシーズン到来

タイミーのIPOが話題となった7月のIPO市場。続く8月は、夏枯れとも言われる相場全体と同様に、IPO市場のまた開店休業状態となるのが通例です。今年も2件が予定されるのみ。

そんな8月を超えると、秋のIPOシーズンが本格化します。夏休みを経て、今シーズンはどんなスタートを切るのか。低迷からの回復が期待されるグロース指数の行方とともに注目です。

[執筆者]石井僚一
石井僚一
[いしい・りょういち]ベンチャーキャピタル勤務を経て個人投資家・ライターに転身。株式市場や個別銘柄の財務分析などを得意とし、複数の媒体に寄稿中。なかでもIPO関連の執筆を数多く手がけており、IPO企業の目論見書のほとんどに目を通している。
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