7月の株価はどうなる? 夏枯れ相場をザワつかせる動きと元気な銘柄を要チェック

岡田禎子
2023年7月4日 8時00分

hadeev / Adobe Stock

《マーケットにはその月ごとに恒例のイベントやアノマリー(経験則)が存在します。そうした季節性を知ることで、どんな相場でもチャンスに変えて投資を行うことができます。では、夏枯れ相場に負けないために知っておきたい7月相場の特徴とは?》

7月は夏枯れ相場の始まり

7月は「夏枯れ相場」の始まりで、材料に乏しく、投資家が積極的に手を出しにくい月です。

配当金の再投資効果による株価上昇の「特異週」だった6月最終週から一転。7月の初旬から中旬にかけては、第2週に決算期末を迎えるETFが分配金を捻出するための売りを行うことによる需給の悪化が懸念されて、軟調となりやすい傾向にあります。

また、消費関連銘柄に多い2月期決算企業の中間決算がたけなわとなります。好決算銘柄に相場が賑わすでしょう。それに続いて、3月期決算企業の第1四半期の決算発表がスタート。特に、上方修正を出した銘柄に注目したいところです。

中旬〜下旬には、JPX日経400(8月)や日経平均株価(9月)の構成銘柄の入れ替え発表に向けた予想レポートなどが発表され、材料視されます。

個別株では「値上げ力」の高い食品銘柄や、夏に向けて旅行・レジャー銘柄やビール銘柄が動きやすくなる時期となります。

夏に相場が枯れる理由

7月の日経平均株価は、過去20年では11勝9敗、10年は6勝4敗と、互角な勝敗の月です。ただ、月はいわゆる「夏枯れ相場」と呼ばれ、市場の参加者や取引量が減少する時期でもあります。売買代金を見ても、一年を通じて最も少ないのが7月相場です。

この理由にはさまざまな説があり、海外投資家がバカンス前にポジションを手仕舞うことや、日本のお盆休みなどで市場参加者が少なくなることなどが挙げられます。

そのほかに、5月の本決算発表から6月の株主総会を経て、7月までに第1四半期決算が発表されたのちは、株価に影響を与える材料やイベントに乏しく、投資家は積極的に手を出しにくい、なども相場が寂しくなる理由として考えられます。

7月の日経平均株価はどう動く?

では、実際の日経平均株価はどのように動いたのでしょうか。過去3年の値動きをチャートで確認してみましょう。

2020年7月の日経平均株価

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続き、経済活動の停滞懸念が強まったことや、主要企業が第1四半期決算で先行きの業績悪化を示したこと、また、急激な円高・ドル安が進行したなどから、日本株は軟調な推移となりました。

・2021年7月の日経平均株価

中国当局のネット企業規制や新型コロナウイルスの感染再拡大から、経済の正常化が後退するとの懸念が広がり、日本株は大きく下落。23日には、1年遅れとなった東京五輪が開幕しましたが、感染拡大の懸念をさらに強めることにもなりました。

・2022年7月の日経平均株価

主要企業の第1四半期が好決算だったことや円安を受けて、日本株は月半ばから上昇。月末にかけても、米FRBは0.75%の大幅利上げを行ったものの、パウエル議長が今後は利上げペースを鈍化させると示唆したことから、米国株・日本株ともに上昇基調となりました。

それぞれのチャートを見ると、レンジ(一定の変動幅)内で動きつつも、上下どちらか一方にトレンドが出ると、それが続く傾向にあることがわかります。

7月は市場全体のボラティリティ(変動幅)が小さいため、何か重要なイベントやアメリカ(FRB)の金融政策などにサプライズがあると、一方向にトレンドが出やすいのです。

2023年の7月も2526日の日程で、アメリカの金融政策を決定する会合であるFOMC(連邦公開市場委員会)が開催されます。市場参加者の最大の関心事は、「利上げ再開はあるか?」。結果によっては波乱も予想されるため、注視しておきたいところです。

7月相場を動かす意外な要因

株価は実にさまざまな理由で動きますが、7月相場に特有の理由として「ETFの分配金捻出売り」があります。

7月の第2週は、市場の中でも「株式」の需給が緩みやすくなります。これは、国内市場に上場しているTOPIX連動型および日経225連動型のETF(上場投資信託)の多くで、決算日が7月の8日と10日に集中しているためです。

決算日になると、運用会社はETFを保有している受益者に分配金を支払う必要があります。この支払いに充てるキャッシュを捻出するための売り(換金売り)が行われるのです。現物株・先物を合わせて、1兆円規模の売り需要が出ると予想されています。

指数と連動させるため、換金売りのタイミングは決算日が基準です。

この一時的な需給悪化には警戒が必要です。なぜなら、株価の上値が抑えられる懸念があるからです。その一方で、これは毎年恒例の行事でもあり、また、分配金捻出というテクニカルな要因でもあるので、ファンダメンタル的には影響ない(企業価値に変わりはない)、という見方もできます。

もちろん、相場の変動要因はさまざまあるわけですが、ふだん上位に組み入れられている銘柄などが一時的に安値となる場面があれば、絶好の買いのチャンスといえそうです。

夏に元気な銘柄を要チェック

7月は、夏の旅行・レジャー関連銘柄が賑わいを見せます。特に今年は、コロナからのリベンジ消費の本格化や、モノからコト(体験)に変化したインバウンド消費の本格的な回復も見込まれており、投資家の注目を集めそうです。

旅行関連では、航空運賃の上昇や円安の影響から、国内旅行関連がメインとなりそうです。注目したい銘柄はエイチ・アイ・エス9603>、ホテルでは共立メンテナンス9616>、鉄道ではJR各社など。そして、地域限定の手土産といえば寿スピリッツ2222>が挙げられます。

レジャー関連では、テーマパークなら東京ディズニーランド・シーを運営するオリエンタルランド4661>やピューロランドを運営するサンリオ8136>、屋内レジャーならラウンドワン4680>やイオンモール内にあるイオンファンタジー4343>、避暑地なら富士急行9010>なども人気です。

第1四半期決算で上がる株・下がる株

7月10日の安川電機6506>を皮切りに、月期決算企業の第1四半期の決算発表が始まります。例年注目されるニデック6594>(旧・日本電産)やディスコ6146>など、日本の製造業の今後の試金石となる銘柄の決算発表が相次ぎ、その決算内容が意識されやすい展開となります。

第1四半期決算で特に注目したいのは「上方修正」した銘柄です。

第1四半期で早くも上方修正するということは、その業績好調の追い風が年間を通じて続く傾向にあります。実際、第1四半期で上方修正した企業は、第四半期でも上方修正するケースが多いのです。当然、株価パフォーマンスも期待できるというわけです。

上方修正を見つけるコツ

上方修正が期待できそうな銘柄を見分けるには、期初の会社予想とコンセンサス予想が大きく乖離している銘柄に注目するのがポイントです。

例えばトヨタ自動車<7203>は、2024年3月期の利益予想を2兆5800億円(前期比5.3%増)としているのに対して、コンセンサス予想(2023年7月日現在)では、前期比24%増の約3兆円となっており、4000億円以上の乖離があります。

これは主に、販売回復への見方に差があることと、会社側の想定為替レート(125円)と実勢レート(140円前後)が異なっているためです。ソニーグループ6758>も同様に、当期利益8400億円(会社予想)に対してアナリスト予想は9100億円ほどとなっています。

上方修正銘柄で注意したいのは「その上方修正は一過性ではないか?」を見極めること。なぜ業績に勢いがあるのか? 想定為替レートは? 市況銘柄なら今後の市況に左右されないか? などなど、ただ上方修正をしたというだけで手を出すのではなく、その内容をしっかり精査することが必要です。

ピンチをチャンスに!

7月は、一年の相場における後半戦のスタートです。

そこで、各証券会社から年後半の相場展望レポートが発行されます。未来を正確に言い当ててくれるわけではありませんが(それは誰にもできません)、さまざまな観点からの解説が書かれていますので、ぜひ参考にしてみてください。

近年では、年後半のほうが株価が上昇しやすい傾向にありますが、今年は米FRBの金融政策や逆業績相場まっただ中であることなど、先行き不透明な要因がたくさんあります。また、ここから夏場にかけての相場の季節性という点でも、あまり成績は芳しくありません。

しかし、このような時期こそ「仕込みの時」と見て、いろいろな個別銘柄に目を向けたいところ。第1四半期の決算内容を吟味し、これぞ!と思える銘柄を発掘したいものです。

相場の季節性を理解して、ピンチをチャンスに変えましょう。

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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