6月の株価はどうなる? 初のG20サミットと夏本番に向けて急騰する銘柄とは
株式相場では月や時季によって、「ある特定の銘柄群が上昇しやすい」といった特徴があります。株主総会ラッシュに加えて日本初開催のG20サミットも控えている2019年の6月は、どんな銘柄が〝熱く〟なるのでしょうか?
6月相場は上昇気流
6月の株式相場は、年間を通じて高値をつけやすい月といわれています。株主総会がピークを迎えるほか、2019年はG20大阪サミットが開催されるため、その関連銘柄が人気化するかもしれません。また、夏本番を見据えた銘柄にも注目が集まりそうです。
6月に株価が上がりやすい理由
3月期の決算発表が5月で一段落し、6月に入ると株式市場は落ち着きを取り戻す展開となります。決算発表に伴うリスクを嫌って資金を引き上げていた投資家も戻り始めます。
加えて、6月はボーナス月でもあり、個人投資家の手元資金が潤沢となることから、株式市場に資金が入り、需給面から株価が上昇しやすくなります。下旬には、配当・株主優待の権利取りや、株主総会ラッシュによって好材料への期待から、株価は堅調となる傾向にあります。
白熱の場へと変わった株主総会
6月は、3月期決算企業の株主総会の開催が本格化します。東京証券取引所の調査によると、2019年は上場企業の約30.8%の株主総会が6月28日に集中するそうです。
株主総会は、重大な発表や決定事項が行われる場であるだけでなく、1部上場への鞍替えや増配などへの経営陣の意欲を垣間見られる機会でもあります。そのためマーケットでは「株主総会は好材料が出やすい」といわれています。
しかし、かつてはセレモニー的に行われていた株主総会も、ここ数年は、経営陣と株主との、時に白熱する対話の場へと変化しています。
その背景には、企業間による持ち合い解消や「スチュワードシップコード(責任ある機関投資家の諸原則)」の導入によって、機関投資家が上場企業の経営を監視する役割を求められていることなどがあります。
また、アクティビスト(物言う投資家)の存在が大きくなり、2018年の株主総会では、42の企業が株主提案を受けるなど、提案数は過去最高となりました。その内容は、自己株式の償却や増配、巨額買収、社外取締役選任など様々です。
なかでも、武田薬品工業<4502>がアイルランドの製薬大手シャイアーを大型買収することに反対する提案が株主から出されたことは大きな話題となりました(結果的には否決されました)。
配当、株主優待、ETF分配金の権利取り
6月末は、3月期決算の次に数が多い12月期決算企業の中間決算にあたるため、配当や株主優待の権利確定日となります。また、ETF(上場投資信託)の分配金を受け取ることができる分配金支払基準日も、7月上旬に集中しています。
これらの権利取りを狙った個人投資家の動きから、6月後半にかけては株価が上昇しやすくなります。
近年、企業による株主還元は年々増加しており、2018年度3月期(2019年3月)には、総額8.8兆円(前年比+15.8%)の配当金が支払われました(東京証券取引所「2018年度3月期決算短信集計【連結】《合計》」より)。
さらに、東証1部上場の配当利回りは約2%以上で、一般に高配当の目安とされる3%以上の銘柄も600以上あります(2019年5月現在)。ETFでは1〜2%の利回りが多いのですが、なかには4%を超えるものも見られます。
高利回りの銘柄を目がけて、権利取りの動きは一層活発化しそうです。なお、6月末が権利確定日の銘柄に関しては、2019年は6月25日が権利付き最終日、26日が権利落ち日です。
(参考記事)株主優待狙いの裏技&注意点 「1泊2日の甘い夢」は悲劇の始まりかも?
※注意※
2019年7月16日から、権利付き最終日が権利確定日の2営業日前となります(現在は3営業日前)。権利付き最終日・権利落ち日ともに1日後ろ倒しになりますので、どうぞご注意ください。
ショックは意外なところからやってくる
一方で、海外情勢に振り回される展開となりやすいのも6月の特徴です。2016年にはイギリスのEU離脱が国民投票によって決まり(ブレグジット)、2018年は米中貿易戦争が勃発して株価が大幅安となるなど、この数年はボラティリティの高い動きとなっています。
「6月は上がる」と盲信することなく、海外情勢を含めた様々な動向にも注意を向けておきたいものです。
・過去3年の6月の日経平均株価チャート
(Chart by TradingView)
6月は大阪が熱くなる?
G20大阪サミット関連銘柄
2019年6月28日、29日に大阪でG20サミットが開催されます。G20サミットは、先進国に新興国を加えた主要20カ国による首脳会合の場で、メンバー国だけでなく、37の国や国際機関が参加する大規模な国際会議です。
日本がG20サミットの議長国となるのは今回が初めて。大阪での首脳会議の他に、一年を通して、全国で各分野の大臣会合などが開かれます。株式市場では、ここで議題となることが予想される「温暖化対策」や「環境問題」などのいわゆるESG関連銘柄が物色されそうです。
例えば、塩化ビニール大手のカネカ<4118>は海洋プラスチックごみ対策で注目されています。また、資源リサイクル大手のエンビプロ・ホールディングス<5698>は2018年7月に、事業に必要な電力を100%再生エネルギーにするプロジェクトに、リサイクル業界から世界で初めて参加したとして話題になりました。
また、各国の要人が集まるため、警備関連銘柄の収益拡大に繋がるとの思惑から、大手警備保障の綜合警備保障<2331>やセコム<9735>、地元開催ということで大阪に本社を置く東洋テック<9686>なども注目されそうです。
・綜合警備保障<2331>
「ALSOK」で知られる警備サービス大手。過去には2016年5月のG7伊勢志摩サミット開催に向けて株価が大きく上昇しました。2019年はG20大阪サミット、新天皇即位に関する皇室行事、ラグビーワールドカップ、2020年には東京オリンピックと重要イベントが続くため、収益拡大による株価上昇が期待されています。
(Chart by TradingView)
さらに、大阪をはじめとする関西エリアは、京都、奈良、神戸と日本屈指の観光エリア。こうしたイベントに伴う需要から、インバウンド関連銘柄としてロイヤルホテル<9713>、近鉄グループホールディングス<9041>、京阪ホールディングス<9045>なども利益増が期待されています。
サマーストック関連銘柄
サマーストック銘柄とは、夏季の気温上昇によって売上が伸びると予想されて買われる銘柄群のことです。猛暑予想の場合は買われやすく、冷夏予想の場合は逆に売りが出やすい傾向にあります。
ここで意識したいのが、こんな相場格言。
麦わら帽子は冬に買え
つまり、「オフシーズンに仕込み、オンシーズンに売れ」という意味です。
気象庁は毎月25日頃に3か月予報を発表します。猛暑の予想が出ると材料視され、サマーストック関連が賑わい出します。しかし実際には、商品の需要が高まる夏場より前に株価はピークを迎えて、夏本番には売られやすくなります。オフシーズンは無理でも、「夏になる前に買え」ということです。
猛暑で売れ行きが増加するとの思惑から伸びやすいのは、ビールメーカーや清涼飲料水メーカー、アイスクリームを製造する菓子メーカーなどです。また、日焼け止めの需要増大から化粧品メーカー、エアコン関連などもサマーストック銘柄の代表格となります。
・森永乳業<2264>
乳飲料、アイス、ヨーグルトなど高採算で高シェア商品に強い会社で、サマーストック関連の代表的な銘柄。2017年は主力のアイスクリームが業績&株価に貢献したものの、2018年は記録的な猛暑でアイスクリームよりも氷菓が好まれたため、販売が伸びず株価も大きく下落しました。
(Chart by TradingView)
5月の時点で最高気温が35度を超えてしまっている2019年。5月24日に気象庁が発表した3か月予報(6〜8月)によると、6月が全国的に高温で、7・8月は雨が多い、とのこと。さて、相場はどう動くでしょうか。
上がりやすい傾向ではあるけれど
セルインメイ入りで売り込まれた5月相場から、一旦、上昇相場となりやすいのが6月の株式市場です。
ただし、外国人投資家などはこの時期に利益確定売りをしてサマーバケーション入りしますので、そうした動きにも注意が必要です。また、ここ数年は海外情勢に振り回されやすい展開となっていることから、様々な方面への気配りも欠かせません。
森永乳業の例でもわかるように、「猛暑だから必ず上がる」といった単純な法則は株式市場には存在しません。こうしたパターンをヒントにしつつも、最終的な判断はより慎重に下すことを心がけたいものです。