決算発表シーズン到来! 乱高下する株価に翻弄されないために準備しておくべきこと
《多くの企業が決算発表を行う一大シーズンがやってきました。この時期、株価は予測不能な動きを見せることも。いざというときに慌てないために事前にやっておくべき準備とは》
決算シーズンは乱高下しやすい
3か月に一度やってくる企業の決算発表は、株価が大きく変動する要因にもなります。しかし、決算内容が良ければ株価が上がる……とは限らないのが難しいところ。大事な正念場である決算シーズンを生き延びるための戦略を立てておくことが必要です。
株式市場では、決算シーズンが最も株価の振れ幅が大きくなります。かなり良い決算内容なのに下落することもあれば、どんなに業績が悪くても急騰することも多々あります。平穏だった株価が突如として乱高下し、市場が大荒れになることも。まるで、毎年夏にやってくる台風のようです。
ならば、事前に備えておくことが重要です。特に近年は、決算発表後の株価の振れ幅が一段と大きくなっていると言われます。それはなぜなのでしょうか? 決算シーズンで大きく負けないためのポイントをタイムラインに沿って解説します。
【事前準備】決算日と決算発表日を確認する
何よりもまず、決算発表がいつなのかを確認しておきましょう。日本では3月を決算期とする企業が多いため、ここが波乱の一大決算シーズンとなります。
ただし、「決算日」と「決算発表日」にはズレがあります。企業は決算日から45日以内に発表しなければならないため、3月期決算の企業にとって、決算発表のピークは4〜5月半ばです。上場企業の約7割が決算発表を迎えるこの時期が、一年で最も注意すべき時期だと言えます。
ただし、最近では12月を決算期とする企業も増えています。決算発表のスケジュールは、ヤフーファイナンスや証券会社のサイトなどに便利なカレンダーが掲載されていますので、事前に確認しておきましょう。
決算発表は年に一度じゃない──四半期決算も要注意
さらに、上場企業は四半期ごと(3か月ごと)にも決算を発表します。3月期決算の場合、4月から翌年3月までを1年度としますので、4〜6月期が第1四半期決算、7〜9月期が第2四半期決算(中間決算)、10〜12月期が第3四半期決算、1〜3月期が第4四半期決算(本決算)となります。
四半期は英語では「Quarter(クオーター)」ですので、カレンダーなどでは、例えば第1四半期を「1Q」と表記していることもあります。
株価に影響を与えるのは本決算だけではありません。本決算を見据えた第3四半期決算の内容が株価を大きく動かしたり、中間決算で発表された業績が投資家に衝撃を与えたりした例もあります。決算発表は3か月に一度やってくる恒例イベントとして、普段から意識しておくことが大切です。
【決算発表前】買いポジションを調整する
決算シーズンの戦略のひとつとして、中長期的に株価が上がっていくと自信のある銘柄以外は手放す、というのも有効な手段です。決算発表前に上昇している銘柄の場合、決算発表が株価のピークとなることが多いからです。
業績への期待は事前に株価に織り込まれている
本来は、決算発表で明らかにされた業績が市場コンセンサスを上回れば株価は上昇、下回れば下落する──というのが相場の基本セオリーです。しかし実際には、決算発表の前から株価への織り込みが始まっています。株価というのは、企業の将来を見通して形成されていくものだからです。
例えば、好調な決算が予想される企業の場合、決算発表までの間にそれが織り込まれて、株価の上昇につながります。すると、実際に発表された決算内容がどんなに大幅な黒字であっても、すでに株価に織り込まれている以上の内容でなければ、いわゆる「材料出尽くし」となって売られやすくなるのです。
空売りサイドの動きで株価が上昇することも
また、空売りで保有している人の場合、決算発表による株価乱高下のリスクを避けるために、一旦、手仕舞い(買い戻し)をすることがあります。空売りしている銘柄がサプライズで良い決算内容だと、株価が急上昇して大きな損失を被る可能性があるからです。
この動きによって、決算発表直前に株価が急上昇することがよくあります。それを知らずに、株価が動意したからといって新規に買ってしまうと、蓋を開けたら悪い決算内容で急落の憂き目を見る……などという痛手にもつながりかねません。
決算発表後の値動きは誰にもわからない
決算内容への思惑が事前に株価に織り込まれているということは、業績懸念で下げていた銘柄が、決算発表によってもう悪材料がないとわかったことで、赤字決算にもかかわらず上昇に転じる、というケースも当然あります。
しかしながら、決算発表後の値動きは誰にもわかりません。思わぬ急展開に見舞われないために、買いのポジション調整をして現金化し、決算発表に備えるという選択肢も検討してみてください。
【決算発表直後】需給による乱高下に注意
いよいよ決算が発表されます。直後は、様々な思惑が交錯した「需給中心」の相場となります。市場全体のトレンドから離れて、その企業の決算内容や銘柄独自の理由によって株価が大きく上下するのです。
第3四半期までは好調だった業績が第4四半期(本決算)で悪化するなど、上昇傾向だった銘柄が決算発表をきっかけにストップ安になったり、反対に、売り込まれていた銘柄が決算発表で新材料が出たことで、いきなりストップ高で買い気配になるケースもあります。
本決算直後に乱高下する要因は「業績予想」
特に本決算では、今期の業績予想が注目されます。企業の出した内容が市場コンセンサスより上か下かで、株価の振れ幅が大きくなるのです。
一般的に、大企業が保守的な予想を出す傾向にある一方、IT企業など新興企業は強気の予想を出すケースが多くあります。期中を通して、それらの予想と実際の業績と照らし合わせて確認していくことで、次の決算発表までの市場コンセンサスが形成されていきます。
ところが、決算発表直後は、企業の出した数字だけを根拠にして売り買いが行われることで、株価が乱高下します。特に近年はプログラム売買をしている投資家やヘッジファンドなどの台頭により、思わぬ値動きをすることが少なくありません。巻き込まれないように注意しましょう。
【決算発表後】最も売られやすい要因
決算発表後の株価は、決算が出てみなければわかりません。特に最も大きく売られるのは、今期の業績予想が投資家にとって期待外れの数字だった場合です。
失望が売りを呼んだファナック・ショック
2018年3月期、ファナック・ショックと呼ばれる動きがありました。ファナック<6954>の事前の市場コンセンサスは2479億円の増益予想でしたが、会社側が出した業績予想は1638億円の減益。あまりに保守的な会社側の業績予想は市場の失望を誘い、株価は大きく下落しました。
ファナックの株価推移[2018年4〜5月]
元々、ファナックはきわめて保守的な業績予想を出すことで知られている企業です。2018年3月期も、期初から数えて3回も上方修正を出しています。それでも投資家にとって期待外れの数字であれば、大きく売り込まれる原因となるのです。
嵐に翻弄されないために
何度も述べたように、決算発表によって株価がどんな動きを見せるは予測できません。その理由のひとつとして、アナリストによる企業への事前取材が禁止されたことが挙げられます。
以前は、証券会社のアナリストが決算発表前の企業を取材し、それをもとにレポートを出していましたが(決算プレビュー)、2016年9月から全面的に禁止されました。事前に企業側の数字を株価に織り込めるケースが少なくなったことで、決算発表後の株価の振れ幅がますます大きくなっています。
例えば、トヨタ自動車<7203>の2018年3月期の決算発表は、異例の場中発表ということもあり、大きな注目を集めました。そこで発表された業績予想は、市場コンセンサスを上回るポジティブサプライズとなり、その日のうちに株価は大きく上昇しました。
トヨタ自動車の株価推移[2018年4〜5月]
トヨタのような日本を代表する大企業でさえ、決算発表によってこれだけの値動きが起こります。決算発表はニュースでも大きく取り上げられ、相場全体がそわそわするため、自分も流れに乗りたい!と思ってしまうかもしれませんが、その焦りが大きな落とし穴になることも少なくありません。
株価が落ち着くのは、決算発表を受けてアナリストたちが決算内容を精査し(決算レビュー)、業績予想の修正を行って市場コンセンサスを形成する数週間後となります。急激な値動きに一喜一憂することなく、嵐が来たら「不要不急の外出」は避けることが賢明と言えるでしょう。