決算発表、IPO、SQ…… 株価と相場に影響を与えるイベントとは

鳳ナオミ
2021年5月24日 12時00分

株価に影響を与える「イベント」とは

株式投資で最も大切なのは、「どれを買うか」よりも「いつ買うか」です。「善は急げ」と言われても、株の場合は「今でしょ!」というわけにはいきません。タイミングを間違ってしまうと、その後の投資効率が全く期待通りにならないこともよくあります。

実際のところ、株式市場には株価に影響を与えるさまざまなイベント(出来事)があります。

機関投資家や経験を積んだ個人投資家・トレーダーは、そうしたイベントを事前に把握しておいた上で、リスクを最大限に回避しながら利益を得ているのですが、初心者のなかにはそうした基本情報を知らずに相場に参加している人も多いようです。

株式投資におけるイベントには、経済全体に関する各種の発表や、個別銘柄に関するニュース、会社の重要事項の発表などがあります。それらのイベントを整理したものが、相場カレンダーやタイムテーブルとして、証券会社のサービスや株式情報サイト等で提供されています。

年間、月間、週間ごとのタイムテーブルのほか、3か月に1度のイベントや、オリンピックのように4年ごとに発生するイベントもあります。また、地域ごと(国内、海外)に経済に関わるマクロイベントと、個別企業に関わるミクロイベント、そして、株式市場特有のイベントがあります。

〈参考記事〉「どれを買うか」より大切な「いつ買うか」 相場の先を読むマクロイベントとは

「森」を見たら次は「木」を見よう

相場を理解するためには、まずは経済指標発表などマクロイベントで相場全体(森)を見ることが大切です。その次に、ミクロイベントに目を向けましょう。株式市場におけるミクロイベントとは、個別企業(木)ごとの独自の発表や出来事です。

実際に個別企業に投資をする場合、その企業に関するタイムテーブルを知っておくことは、まさに投資の必須事項になります。知らずに投資するのは、目をつぶって道路を歩いているようなものです。

投資は常に最大限の注意を払うもので、横断歩道の信号が青でも、横から車が突っ込んでくるかもしれません。左右をよく確認してから横断しましょう。

最も重要なミクロイベント「決算発表」

ミクロイベントで最も重要なのは、企業の決算発表です。

決算発表とは、企業がそれまでの1年間に活動してきた内容に対する成績表です。1年の当初の業績計画に対して、どんな結果となったのか、その結果を踏まえて次の向こう1年の新しい計画はどんなものか?

株というのは企業の成績表を反映するものであり、株価は最終的にはその成績表に見合った水準や動きとなります。そのため企業の決算発表は、ミクロの中では特に注目されるイベントなのです。

決算発表の年間タイムテーブル

株主に対する業績説明として、企業は3か月ごと(四半期ごと)に業績内容を発表します。多くは1〜3月、4〜6月といった期間で途中経過を発表し、なかには当初計画から大きく外れる見込み(上振れ又は下振れ)になると、予告なしで途中経過を発表するケースもあります。

日本の多くの企業は4月〜翌3月を会計年度としているため、通常1年分の決の発表が集中するのは、4月中旬から5月下旬です。そして、そこからちょうど3か月ごとに途中経過の発表が行われます。

  • 4月中旬〜5月下旬……前期の第4四半期の決算発表+前期1年間の決算発表(本決算
  • 7月中旬〜8月下旬……第1四半期の決算発表
  • 10月中旬〜11月下旬……第2四半期の決算発表+上半期の決算発表(中間決算
  • 1月中旬〜2月下旬……第3四半期の決算発表

企業によっては、決算月が異なるために上記とは違うタイムテーブルとなる場合も当然あります。それでも、これらの時期には大半の企業の決算発表が集中するため、それが株価や相場にも影響する可能性があることを、しっかりと頭に入れておきましょう。

〈参考記事〉コロナ禍で決算発表はどうなる? 業績予想が株価に与える影響とは

各企業の決算発表日は、インターネットで簡単に検索できます。また業種、企業によっては、月次の売上高や受注高を開示している場合もあります。例えば、小売業種はほとんどの企業がホームページで毎月の売上高(前年同月比)を発表しているますので、確認しておくといいでしょう。

IPOの影響は他の銘柄にも波及する

他のミクロイベントとしては新規上場(IPO新規株式公開)が挙げられるでしょう。

毎月、数社が新たに株式を公開(上場)しますが、どこの市場(東証1部、2部、マザーズ、ジャスダック等)に上場するにしても、企業によってはとても大きな話題にのぼることがあります。

例えば、メルカリ<4385>のような新しいビジネスを興した会社や、ゲームアプリの開発で有名になった会社、あるいは、もともと知名度は申し分なく、満を持して上場する大企業など様々です。

そうした企業が株式市場に登場することで、類似企業の株価が動意づいたり、その新規上場する企業の株を購入する資金を作るために、換金対象として別の企業の株が売られて株価が下がる、といったこともしばしば起こります。

メルカリ上場のマザーズ全体への余波

2018年の大型上場となったメルカリは前評判が高く、上場申請が発表されて以降、類似企業や上場先のマザーズ市場に所属する企業に対する換金売りも散見され、マザーズ銘柄の多くは軟調な展開となっていました。

2018年6月の上場後は、肝心の業績が予想以上に悪く、同社の株価下落とともに、マザーズ市場銘柄は下落基調をたどりました。

これは、自分が保有する銘柄とは関係のない企業のイベントで、株価が動いてしまった格好の事例と言えます。ちなみに、同社は2020年8月に初の四半期営業黒字を達成したことで、株価は復調しており、過去と同様に他のマザーズ銘柄の株価も復調に転じています。

必要な情報は自分で取りに行く

その他のミクロイベントとしては、個別企業による何らかの発表事項などがあり、会社ホームページだけでなく、新聞をはじめとしたメディアに掲載されることになります。

これらは毎日のことですので、予め察知することはできませんが、事後的にネットで検索して情報を整理することで、その後の続報への対応もできるでしょう。

このように、株価に影響を与える可能性のある情報のほとんどは、今では誰でも簡単にアクセスできるようになっています。その作業をしなかったばかりに無駄な損失を出してしまうことのないように、自分のリスクは自分で管理するという気持ちを持つことが大切です。

株式市場特有のイベントにも要注意

経済指標の発表など地域経済全体に関わるマクロイベント、個別企業に関するミクロイベントの他にも、株式市場特有のイベントというものがあります。

〈参考記事〉最も株高・株安になりやすいのは何月? 意外と知らない株式相場のパターンとは

その例として挙げられるのが、SQ(先物・オプション特別清算日)や、配当などの権利付き最終日株式分割信用期日、あるいは、取引所からの個別銘柄に対する規制発表、規制解除などです。

SQは株価指数デリバティブ(派生商品)に関わるイベントで、市場全体の需給に関係するのは年4回の「メジャーSQ」(3、6、9、12月の第2金曜日の前日)です。様々な仮需に係る需給の解消日ともいえ、その直前の週または当該週に相場が乱高下することがあります。

個別企業では、配当株主優待または株式分割の権利を得るために保有が必要な権利を得ることのできる最終売買日(=権利付き最終日)も確認しておきましょう。これは期末であること多いです。

また、正確な期日の確定はできませんが、信用取引にかかる6か月期限の集中日もあります(売買高が急激に増加した場合、その後6か月経過するまで重い株価形成が続くことが多い)。短期的な株価変動の要因になる株式需給に関わるイベントですので、注意しておいて損はありません。

明日はどんなイベントがあるのか?

このように、さまざまなイベントが控えているのが株式市場というものです。投資をするにあたっては、この先どのようなイベントがあるのかを確認した上で臨むことを心がけましょう。

タイムテーブル(相場カレンダー)は各種サイトで見ることができますし、その内容についても、証券会社などのアナリストによる予想値が出ているので、自分で難しい分析をしなければいけないわけはありません。可能であれば、他社との比較や予想の市場平均なども見ておけば十分でしょう。

各種のイベントが株価や相場にどんな影響を与えるかは、実際にイベントが起きてみないとわかりません。時には、まったく影響がないこともあります。

そうであったとしても、他の多くの市場参加者が知っていることを自分もちゃんと知っておくこと、また、自分以外の人はどんな目で相場や銘柄見ているのかを把握しておくことは、とても大切です。

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[執筆者]鳳ナオミ
鳳ナオミ
[おおとり・なおみ]大手金融機関で証券アナリストとして10年以上にわたって企業・産業調査に従事した後、金融工学、リスクモデルを活用する絶対収益追求型運用(プロップ運用)へ。リサーチをベースとしたボトムアップと政治・経済、海外情勢等のマクロをとらえたトップダウンアプローチ運用を併用・駆使し、年平均収益率15%のリターンを達成する。その後、投資専門会社に移り、オルタナティブ投資、ファンド組成・運用業務を経験、数多くの企業再生に取り組むなど豊富な実績を持つ。テレビやラジオにコメンテーターとして出演するほか、雑誌への寄稿等も数多い。現在は独立し、個人投資家として運用するかたわら、セミナーや執筆など幅広い活動を行う。また、日本初のデジタルマネー格付け及びインデックスを提供する「JDRpro.」の開発運用責任者も務める。
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