マザーズからの1部昇格で株価はどうなる? 成長物語の「その後」を追いかける
《成長株の証しであるマザーズから、一流企業の証しである東証1部へ──。そんな成長物語をたどる銘柄が毎年のように誕生しています。そうとなれば、気になるのは、その後の株価。スピード昇格を果たした銘柄から見えてきた「取り扱いのコツ」とは》
マザーズから夢の東証1部へ!
東証マザーズに上場した銘柄のうち、一定の条件を満たした株は1年後には東証1部への市場変更を申請することが可能です。
東京証券取引所においてマザーズは「成長企業のための市場」という位置付けとなっており、長期間ここに留まらないよう1部や2部市場への昇格を促す動きがあり、昇格条件も緩くなっています。
【東証マザーズから東証1部昇格の主な条件*】
- 株主数2,200人以上
- 時価総額40億円以上(ジャスダックでは250億円以上)
- 流通株式比率35%以上
- マザーズ上場から1年以上が経過
東証1部に昇格することは企業にとっては最高のステイタスであり、また、株価も上昇しやすいといわれています。1部銘柄になるとTOPIX組み入れによる買いが見込めることに加えて、マザーズ銘柄は保有できなかった機関投資家の買いの対象となるため、長期的な株価の上昇が期待できるのです。
*注:2020年11月1日に要件変更されました(時価総額は250億円に引き上げ)。詳細はJPXホームページをご参照ください。
・2019年8月末までにマザーズから1部昇格を果たした銘柄
2018年は28銘柄、2019年は8月末までの時点で15銘柄が、夢の東証1部への昇格を果たしました。
(参考記事)東証1部昇格は最高のステイタス! そんな「出世株」で儲けるには?
1部昇格によって株価はどう動くのか
マザーズから東証1部に昇格する際の株価の動きをキャリアインデックス<6538>で確認しましょう。
・キャリアインデックス<6538>
東証1部への昇格を目指す企業は、昇格に必要な要件を満たすために様々な施策を打ち出します。そのシグナルを察知し、株価は昇格期待で先に上昇します。
そして、市場変更が承認されたと発表されると株価は高値を付け、その後は材料出尽くしで下落、1部上場後は機関投資家などの買いなどで再び株価が上昇する、というパターンが多く見られます。
キャリアインデックスの場合も、2017年12月7日の1部上場承認発表後から株価は急落し、14日に上場した後に再び上昇しています。
(Chart by TradingView)
いざ昇格……その後の株価の行方
昇格時の株価の動きを確認したところで、「ヤル気満々の新興企業がマザーズから東証1部にスピード出世し、さらに成長を遂げていく」という成長ストーリーを確かめるべく、マザーズ上場から2年以内に東証1部へ市場変更した出世株の「その後」を追ってみましょう。
・MS-Japan<6539>
弁護士、公認会計士、税理士などの士業や一般事業会社の管理部門に特化した人材紹介業の企業です。成約スピードとマッチング力に強みをもち、転職サイトも運営しています。
2016年12月15日マザーズ上場。2017年12月15日に東証1部へ市場変更しました。収益拡大に伴う形で株価も堅調な推移となりましたが、2018年9月に上場来高値をつけた後、大きく下げてしまいました。
(Chart by TradingView)
・アカツキ<3932>
スマートフォン向けソーシャルゲームの企画・開発・運営を手がける企業です。主力サービスにオリジナルコンテンツの「サウザントメモリーズ」、バンダイナムコと協業の「ドラゴンボールZドッカンバトル」があります。
2016年3月17日マザーズ上場。2017年9月14日に東証1部へ市場変更しましたが、利益成長鈍化への懸念から、株価は市場変更発表に上場来高値をつけた後は下落の一途を辿りました。
(Chart by TradingView)
・鎌倉新書<6184>
葬儀やお墓など「終活」全般に関わるポータルサイトを運営している企業です。サイトを通じて利用者への葬儀や遺産相続に関連する情報提供を行うと同時に、葬儀社と利用者をマッチングさせることで販売支援を行なっています。
2015年12月4日マザーズ上場。2017年7月21日に東証1部に市場変更しました。知名度の向上による利用者拡大やサイトの改善により事業の拡大が続き、高値に対する警戒感から調整を繰り返しながらも、株価は右肩上がりとなっています。
(Chart by TradingView)
・インソース<6200>
企業等の人事部向けに、講師派遣型研修や公開講座の事業を運営する企業です。豊富で多彩な研修コンテンツが強みです。
2016年7月21日マザーズ上場。2017年7月21日に東証1部に市場変更しました。「働き方改革」が追い風となって事業が拡大、1部変更後の底値から一貫して右肩上がりとなりました。2018年は頭打ちとなっていましたが、2019年に入って再び上昇を見せています。
(Chart by TradingView)
出世株の扱いは柔軟に
マザーズから東証1部昇格後の株価の動きはまちまちですが、マザーズ出身銘柄のなかには、その「成長性」こそが評価され、PER(株価収益率)が100倍以上の銘柄もあります。そうした銘柄においては、成長ストーリーに陰りが見えたり鈍化したりすれば、一気に株価が急落するおそれがあります。
こうした銘柄を手がける際には、四半期ごとの決算に気を配りつつ、程よく値上がりしたところで利益確定するといった柔軟な姿勢で臨むことが大切になりそうです。