ランキングで振り返る2020年相場 プロが今後に期待する銘柄・心配する銘柄とは

2020年の株式市場をランキングで振り返る
2020年は、新型コロナウイルスのパンデミックによる株価暴落、それをカバーするための金融緩和マネーによる大幅上昇、それによるバブル後の高値奪還……という激動の一年でした。日経平均株価は始値23,319円、安値16,359円、高値27,602円、終値27,444円と推移しました。
この激動の中で、どんな銘柄が大きく動いたのか。1年間の株価データをもとに、次のような5つの「トップ100社ランキング」を作成してみました(各ランキングは記事末尾に掲載)。
- 売買代金トップ100(2020年の売買代金の総和)
- 値上がり率トップ100(2019年終値と2020年終値の比較)
- 値下がり率トップ100(2019年終値と2020年終値の比較)
- 瞬間的上昇トップ100(2019年終値と2020年高値の比較)
- 瞬間的下落トップ100(2019年終値と2020年安値の比較)
これらのデータから見えてきた「2020年相場」について、業種・テーマを軸に振り返ります。
(参考記事)2020年6月〜12月の月間ランキングはこちら
2020年に上昇した業種・テーマ
・IT、DX
リモートワーク、テレワーク、ワーケーションといった言葉が日常会話になるほど、人々の生活や仕事の仕方が大きく変わりました。その中で、システムを提供している企業やうまく対応した企業が大きく上昇し、そういった企業が多く上場しているマザーズ市場も全体的に大きく上昇(897ポイント→1196ポイント:+33%)しました。
- Jストリーム<4308>:値上がり率1位(+625.9%)
- すららネット<3998>:値上がり率5位(+477.2%)
- ブイキューブ<3681>:値上がり率8位(+361.8%)
- GMOグローバルサイン・ホールディングス<3788>:値上がり率19位(+247.6%) など
・EC
緊急事態宣言など、外出を控えることの多かった一年。買い物をしにショッピングモールへ行く代わりに、ネットで買い物をする人、ネットで販売を始めるお店が一気に増えました。また、それに伴う物流分野でも伸びるところがありました。
- BASE<4477>:値上がり率6位(+456.1%)
- ロコンド<3558>:値上がり率61位(+143.0%)
- SGホールディングス<9143>:値上がり率73位(+128.6%)
- 鈴与シンワート<9360>:値上がり率33位(+207.1%) など
・巣ごもり消費
外出ができない分、ゲームや出前(ECも)が伸びました。ミシンや手芸など、家で楽しむための商品を扱っている企業の株価も大きく上昇したのが印象的でした。
- 任天堂<7974>:売買代金2位(14.7兆円)
- ソニー<6758>:売買代金3位(12.4兆円)
- カプコン<9697>:値上がり率77位(+121.1%)
- 出前館<2484>:値上がり率43位(+178.6%)
- GMOペパボ<3633>:値上がり率64位(+139.4%)
- 藤久<9966>:値上がり率84位(+117.4%)
- 蛇の目ミシン工業<6445>:値上がり率89位(+113.4%) など
・医療
世界中の人がマスクをするようになったり、ワクチン開発に注力する企業が出てきたり、病院に行くと感染リスクが高まるということで、今までは認められていなかった遠隔医療が始まったり。皮肉ですが、ウイルスのおかげで人類の医療に対する姿勢が、規制を超えて進歩した一年となりました。
- エムスリー<2413>:値上がり率38位(+194.7%)
- ケアネット<2150>:値上がり率3位(+513.0%)
- メドレー<4480>:値上がり率18位(+250.3%)
- メドピア<6095>:値上がり率9位(+349.0%)
- 川本産業<3604>:値上がり率12位(+327.7%) など
2020年に下落した業種・テーマ
・外食
4月から2か月間、緊急事態宣言によりレストランなどが一斉に営業自粛という事態になりました。その後も時短営業や家で食事する人が増えた結果、スーパーやドラッグストアの業績は良くなったものの、オフィス街では閉店が続出し、片や住宅街のお店は活況になるなど、二極化が進みました。
オンライン飲み会、ZOOM飲み会なんて言葉も生まれるほど、外食に対する人々の意識が変わったのではないでしょうか。
- ペッパーフードサービス<3053>:値下がり率3位(−78.3%)
- コシダカホールディングス<2157>:値下がり率8位(−73.0%)
- クックビズ<6558>:値下がり率13位(−68.5%)
- DDホールディングス<3073>:値下がり率20位(−66.0%) など
・旅行
外出ができたないため、航空会社や鉄道、旅行代理店は需要が消滅してしまいました。貨物需要はあるものの、人の移動がなくなってしまったのも2020年の特徴です。GoToキャンペーンやGoToイートなどの需要喚起策もありましたが、厳しい一年となりました。
航空各社や鉄道各社などは、株価の下落率(値下がり率)でトップ100にランクインすることはありませんでしたが、需要消滅の金額はとても大きかったでしょう。
- ANAホールディングス<9202>:売買代金53位(2.2兆円)
- 東日本旅客鉄道<9020>:売買代金39位(2.8兆円)
- ベルトラ<7048>:値下がり率28位(−63.6%)
- 旅工房<6548>:値下がり率52位(−56.7%) など
・アパレル
買い物に行かないということも原因ですが、家で仕事をするからスーツを買わない、お洒落をするより家で快適な服を着たいなど、身につけるものにも変化が起きました。紳士服などは売られ、反対に、ユニクロ(ファーストリテイリング)などの普段着は需要を取り戻して上場来高値をつけるなど、こちらも二極化の進んだ業界となりました。
- 青山商事<8219>:値下がり率24位(−65.0%)
- 三陽商会<8011>:値下がり率49位(−57.2%)
- AOKIホールディングス<8214>:値下がり率68位(−54.3%)
- ファーストリテイリング<9983>:売買代金4位(11.9兆円) など
・エンターテイメント
コンサートやフェス、ライブなど、まさに「密」こそが価値であるイベントのほか、スポーツジム、結婚式などもほぼなくなってしまいました。
音楽イベントに関しては、配信によるチケット販売も一部ありましたが、まだまだ規模は小さく、スポーツジムは「感染しそう」というイメージが先行していまだに戻っていません。結婚式に関しても「やらなくてもいいか」という人たちも増えており、今後の戻りも不安です。
- トゥエンティーフォーセブン<7074>:値下がり率9位(−72.0%)
- タメニー<6181>:値下がり率27位(−64.5%)
- テイクアンドギヴ・ニーズ<4331>:値下がり率58位(−55.6%)
- ぴあ<4337>:瞬間的下落率88位(−66.2%)
- オリコン<4800>:瞬間的下落率37位(−71.6%) など
でも、個人的にはエンタメこそが生きる力であると信じているため、2021年の復活を心から願っています。
激動の一年を振り返って
2020年は「激動」という言葉がぴったりの、本当に大きな変動のあった一年でした。また、同じ業種だったとしても、世の中の変化に上手く対応できたところとそうでないところで、株価が大きく二極化していきました。
2020年にうまく対応できた企業は、今後も上手く変化に対応し、長期間にわたって株価も上昇していく可能性が高そうです。
これらのランキングは意外と見かけることが少なく、じっくりと振り返ることで、とても価値のあるデータになると思います。ぜひ何度も見返して、今後のトレードに活かしてください。
(株の学校ドットコム講師・窪田 剛)
2020年トップ100社ランキング
【2020年の売買代金トップ100】
【2020年の値上がり率トップ100】 *2019年終値と2020年終値の比較
【2020年の値下がり率トップ100】 *2019年終値と2020年終値の比較
【2020年の瞬間的上昇トップ100】 *2019年終値と2020年高値の比較
【2020年の瞬間的下落トップ100】 *2019年終値と2020年安値の比較
(データ提供:CMBトレード塾)