来るか、年末ラリー! プロが期待を寄せる業種・銘柄と、気になるマネーゲームの行方
《日々相場と向き合うプロトレーダーは、いまどんな銘柄に注目しているのか? オンライン株式スクール「株の学校ドットコム」講師の窪田剛さんが、3つのランキングから11月相場を振り返る【ランキングで見るプロの注目銘柄】》
11月相場を振り返って
マネーゲーム!!
いやぁ、歴史に残るマネーゲームが繰り広げられた11月となりました(本稿執筆時点では、まだ続いている)。それは後半で詳しくお話しするとして。
それよりも「年末ラリーあるか!?」ということのほうが、今後は重要かなと思っています。
10月相場の記事で「底入れ感」があると書いたのですが、11月もその流れを引き継いで、日経平均株価は一時28,000円を回復し、28,500円にタッチする場面もありました。終値こそ28,000円を割り込んでしまいましたが、ここ2か月だけで見ると上昇の兆しがあります。
これが継続するなら買い。そうじゃないなら売り、もしくは様子見。年末に向けてもう一発、大きな上昇を期待させてくれる、そんな1か月となりました。
マネーゲーム……じゃなかった。年末ラリー楽しみだぜ!
11月相場で上がった株・下がった株
そんな2022年11月の株式相場を、売買代金と値上がり率・値下がり率のランキングで振り返ってみたいと思います(太字はピックアップ銘柄)。
・2022年11月の売買代金トップ20
順位 | コード | 銘柄 | 売買代金 |
1 | 6920 | レーザーテック | 6.59兆円 |
2 | 9984 | ソフトバンクグループ | 3.01兆円 |
3 | 8035 | 東京エレクトロン | 1.30兆円 |
4 | 9983 | ファーストリテイリング | 9051億円 |
5 | 7203 | トヨタ自動車 | 8842億円 |
6 | 6758 | ソニーグループ | 8448億円 |
7 | 7974 | 任天堂 | 8420億円 |
8 | 8306 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 7520億円 |
9 | 8316 | 三井住友フィナンシャルグループ | 7463億円 |
10 | 9101 | 日本郵船 | 7116億円 |
11 | 6861 | キーエンス | 6839億円 |
12 | 9107 | 川崎汽船 | 6453億円 |
13 | 4385 | メルカリ | 6408億円 |
14 | 8058 | 三菱商事 | 5629億円 |
15 | 9104 | 商船三井 | 5336億円 |
16 | 6098 | リクルートホールディングス | 4813億円 |
17 | 8031 | 三井物産 | 4794億円 |
18 | 9227 | マイクロ波化学 | 4634億円 |
19 | 4523 | エーザイ | 4627億円 |
20 | 9433 | KDDI | 4590億円 |
・2022年11月の値上がり率トップ20
順位 | コード | 銘柄 | 値上がり率 |
1 | 5807 | 東京特殊電線 | +156.7% |
2 | 7859 | アルメディオ | +139.6% |
3 | 7273 | イクヨ | +136.4% |
4 | 9227 | マイクロ波化学 | +116.7% |
5 | 4594 | ブライトパス・バイオ | +111.1% |
6 | 3966 | ユーザベース | +110.2% |
7 | 4422 | VALUENEX | +90.8% |
8 | 4448 | Chatwork | +85.4% |
9 | 2195 | アミタホールディングス | +83.3% |
10 | 3082 | きちりホールディングス | +82.0% |
11 | 6338 | タカトリ | +77.1% |
12 | 6632 | JVCケンウッド | +71.2% |
13 | 3904 | カヤック | +62.1% |
14 | 7794 | イーディーピー | +59.5% |
15 | 1757 | 中小企業ホールディングス | +59.0% |
16 | 3625 | テックファームホールディングス | +58.5% |
17 | 7386 | ジャパンワランティサポート | +56.3% |
18 | 6918 | アバールデータ | +56.2% |
19 | 5132 | pluszero | +55.8% |
20 | 6614 | シキノハイテック | +55.6% |
・2022年11月の値下がり率トップ20
順位 | コード | 銘柄 | 値下がり率 |
1 | 4541 | 日医工 | -56.0% |
2 | 8139 | ナガホリ | -39.8% |
3 | 4393 | バンク・オブ・イノベーション | -39.2% |
4 | 4255 | THECOO | -38.9% |
5 | 9258 | CS-C | -36.0% |
6 | 3825 | リミックスポイント | -32.0% |
7 | 4178 | Sharing Innovations | -29.6% |
8 | 7198 | アルヒ | -27.9% |
9 | 6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | -26.3% |
10 | 7366 | LITALICO | -25.7% |
11 | 7036 | イーエムネットジャパン | -25.5% |
12 | 9318 | アジア開発キャピタル | -25.0% |
13 | 5986 | モリテック スチール | -25.0% |
14 | 2345 | クシム | -23.8% |
15 | 3903 | gumi | -23.5% |
16 | 2489 | アドウェイズ | -23.3% |
17 | 9248 | 人・夢・技術グループ | -22.2% |
18 | 3681 | ブイキューブ | -21.2% |
19 | 2170 | リンクアンドモチベーション | -20.9% |
20 | 4499 | Speee | -20.3% |
11月相場でプロが気になった銘柄
このランキングの中から、私・窪田が気になった銘柄をピックアップします。
・売買代金ランキング
【第1位】レーザーテック<6920>………6.59兆円
【第3位】東京エレクトロン<8035>……1.30兆円
後半に足踏みしてしまったものの、前半は10月からの力強い上昇を引き続き見せてくれました。後半の足踏みは息切れじゃなく、年末そして来年に向けた調整期間とみることもできます。
年末もしくは2023年に向けて、花開くか半導体! 注目です。
【第8位】三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>……7520億円
【第9位】三井住友フィナンシャルグループ<8316>…………7463億円
メガバンク2行がランクイン。でも11月は、メガバンクだけでなく地銀も含め、銀行が全般的に力強く推移しました。業績が好調で自社株買いを発表したり、世界的な金利上昇による今後の業績期待も高く、「あれ、もしかして2023年は銀行の年か?」と思えるような上昇となりました。
ちょっと銀行は見ておく必要があるかも?
【第14位】三菱商事<8058>……5629億円
【第17位】三井物産<8031>……4794億円
(第41位・伊藤忠商事<8001>、第52位・丸紅<8002>、第64位・住友商事<8053>)
いわゆる五大商社です。世界でいちばん有名な投資家、ウォーレン・バフェット氏がこれら五大商社を買い増ししたというニュースとともに注目が集まり、株価も上昇しました。
何度も言っているのですが、誰が買ったとか、注目しているとか、お勧めしているとか……そういったきっかけで株を買うのはやめてくださいね。
きっかけとしてそうした情報があったとしても、きちんと自分で調べて、自分のタイミングで売買の判断をすること。そうしなければ、いつまでたっても「勝ち続ける」ことはできません。あなたが商社を買って損しても、バフェットは何もしてくれません。
もちろんそれは、どんな相手でも同じです。他人に依存せず、しっかりと自分自身で判断していけるように、ぜひこのコラムを利用してください。
・値上がり率ランキング
【第13位】カヤック<3904>……+62.1%(851円→1,380円)
子会社のウェルプレイド・ライゼスト<9565>が11月30日に上場。買い注文が殺到し、上場初日には値段がつきませんでした。
なぜピックアップしたかというと、「新しい業種は注目される=株価が上がりやすい」ということを知っておいてほしいからです。ウェルプレイドライゼストはいわゆる「eスポーツ」の関連銘柄です。ゲーム大会の企画や制作、その周辺事業を行っています。
「eスポーツ」という言葉自体は数年前からありますし、ゲーム会社はソニーや任天堂、カプコンやコーエーテクモにスクエニ、バンナムなど、たくさんあります。
でも、「ゲーム」ではなく「eスポーツ」という新しいジャンルって、なんだかワクワクするし、何か起こりそうな気がするじゃないですか。こういうワクワク感みたいなものは、注目も集まるし、こうやって大きく株価が上がることがよくあるんですよね。実際の業績なんて関係ないです。
同じような例は、昔からよくあります。
- 「SNS」のmixi<2121>
- 「Vtuber」のANYCOLOR(エニーカラー)<5032>
- 「eスポーツ」のウェルプレイド・ライゼスト<9565>とカヤック<3904>
きっと今後も、「宇宙」とか「カーボンクレジット」とか、ワクワクを内包するようなジャンルの企業が上場するときには、その会社はもちろんのこと、今回のように親会社も注目されやすくなります。
覚えておきましょう。
・値下がり率ランキング
【第1位】日医工<4541>……-56.0%(466円→205円)
36円で株式市場から退場するというニュースにより、48円まで一気に大きく下落しました。36円で買い取られることが決まっているので「理論的」には36円より高い金額になるはずはないのです。でも、48円を付けた後、月末にかけて一気に上昇しました。5倍くらいの上昇!
これ、要はただのマネーゲームで、買っている人の理由はただひとつ、「自分よりも高く買ってくれる人に売りつけるため」。完全なるマネーゲームと化したのが、この日医工です。
上場廃止や破綻などで、無価値なのに「注目度が高く株価が大きく動くかもしれない」という可能性に値段が付き、理論値など関係なく「より高く売る」ためだけに、こういうことが起こります。
しっかり稼ごう! ただし、地に足をつけて
今まさにマネーゲームが繰り広げられているわけですが、こうした完全なるマネーゲーム(=騙し合い)が起こるのもマーケットのひとつの側面です。綺麗事ばかりではないし、そこから目を背けることはすべきではないとも思います。
デッド・キャット・バウンス(=死んだ猫でも高いところから落とせば弾む)、つまり「価値のない株でも大きく反発する」という格言があるくらい、こうしたことは頻繁に起こる現象であり、これが人間の本質なんだと思います。
私たちは株を売買していますが、その相手は「人間」なんです。
人間というのは、注目されるものに群がるし、新しいものにワクワクするし、知らないものに過度に恐怖を覚えます。そういった人間がつくりだすマーケットには、いつだって価格の歪みがあるし、それと同時に、チャンスがあふれています。
それらをしっかりと認識して、マーケットという大海原でしっかり稼いでいこうじゃありませんか。
最後になりましたが、日医工には絶対に近寄らないこと! ただし、これは歴史に残る値動きになるかもしれないし、人間の剝き出しの本質を学べますので、ぜひとも離れたところから今後の成り行きを見守ること。
1日で◎倍!なんて絶対に継続しない博打です。このコラムを読んでくださっている方には、マネーゲームなんかではなく、しっかりと地に足をつけて、運用をしてほしいと心から願っています。
(株の学校ドットコム講師・窪田 剛)