7月・8月の相場はどうなる? コロナ禍の夏相場で起こる異変とは
コロナ禍で迎える2020年の夏相場。市場の動きはどうなるのか、そして、株価はどうなるのか。不透明なことが多い相場ですが、季節ごとの「パターン」を理解しておけば、それに合わせて備えておくことができます。7月と8月の相場は、コロナの影響でどんな異変を見せるのか──
7月相場は買いが入りやすい
7月上旬の日本の株式市場は需給環境が良くなる傾向にあります。4~6月期の決算や配当の再投資などがあるからです。
決算発表は7月20日ごろから本格化し、31日にピークを迎えます。そして8月14日ごろに終了します。そのため、決算発表を期待した買いが入りやすい時期なのです。
そして、株式の配当金は、会社の決算後3か月以内に開催される株主総会で決議されると支払われます。3月期決算企業の多くは、6月中・下旬に株主総会を開催するので、支払い時期は6月末から7月頃になるのです。
「サマーラリー」は来る?
アメリカでは「サマーラリー」というアノマリーがあります。7月4日の独立記念日(インデペンデンスデー)から9月の労働者の日(レーバーデー)までの期間、多くの投資家がバカンスに入る前にボーナスなどで株を買うため、株価が上昇しやすい現象のことです。
アメリカでは、夏休み前に優良株を買いだめして夏休み入りすると、夏休み明けに株価が上がることがよくあったので、サマーラリーは起こりやすいと考えられているのです。
8月相場のパターンに異変?
欧米では8月に長期の夏休みを取る運用者が多く、商いが細りやすい傾向にあります。そして、1998年のロシア危機とロングターム・キャピタル・マネジメントの破綻、2007年のサブプライムローン問題などが起こったことから、「8月は危機の月」といわれています。
2019年も、トランプ大統領が対中制裁関税の第4弾発動を表明したことや、米10年債国債利回りと米2年国債利回りの逆転(逆イールド)が発生したことで、日経平均株価は8月に657円下落しました。
日本の機関投資家も、決算発表が終わるお盆の時期には夏休みを取る運用担当者が多く、薄商いになる傾向があります。また、輸出企業がお盆前にドルを円に変えて夏休みに入ることが多く、それによって円高に進みやすくなることも、株価の上値を抑える原因にもなるのです。
「夏枯れ」とは?
夏の薄商いの期間を「夏枯れ」といいます。海外では夏期休暇、国内ではお盆休みや夏休みといった時期と重なることから、市場参加者が減少して取引量も減ってしまうことに由来する言葉です。
取引量が減るとちょっとした材料にも敏感に反応し、上下に動きやすくなることからリスクが高まるといわれています。ただ、インターネット取引により個人投資家の参入が増えているので、以前ほど顕著ではなくなっています。
コロナ禍で「夏枯れ」はなくなる?
新型コロナウイルス感染拡大によるテレワーク(在宅勤務など)の普及で、個人投資家の取引が増えています。6月第4週における現物株取引の個人投資家の比率は26%。外国人投資家が休暇を取るクリスマス時期を除くと異例の高さとなっています。
在宅勤務でデイトレードなどの日中取引が増えており、投資家の質は変化していると考えられるのです。例年、夏休みはバカンスなどで株式取引の商いは薄くなるのですが、2020年は夏休みでも自宅にいる人が多くなることが予想され、株式の取引は例年ほど減少しないかもしれません。
7月・8月の日経平均株価はどうなっているか
それでは、実際の日経平均株価のパフォーマンスを見てみましょう。過去10年間の7月と8月の月間パフォーマンスは、以下の通りです。
・過去10年の日経平均株価7月のパフォーマンス
平均騰落幅:83円
平均騰落率:0.76%
年 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 | 終値−始値 | 騰落率 |
2010年 | 9,296.86 | 9,807.36 | 9,091.70 | 9,537.30 | 240.44 | 2.59% |
2011年 | 9,878.69 | 10,207.91 | 9,824.34 | 9,833.03 | -45.66 | -0.46% |
2012年 | 9,103.79 | 9,136.02 | 8,328.02 | 8,695.06 | -408.73 | -4.49% |
2013年 | 13,746.72 | 14,953.29 | 13,562.70 | 13,668.32 | -78.4 | -0.57% |
2014年 | 15,179.64 | 15,759.66 | 15,101.49 | 15,620.77 | 441.13 | 2.91% |
2015年 | 20,291.05 | 20,850.00 | 19,115.20 | 20,585.24 | 294.19 | 1.45% |
2016年 | 15,698.02 | 16,938.96 | 15,106.52 | 16,569.27 | 871.25 | 5.55% |
2017年 | 20,056.32 | 20,200.88 | 19,856.65 | 19,925.18 | -131.14 | -0.65% |
2018年 | 22,233.80 | 22,949.32 | 21,462.95 | 22,553.72 | 319.92 | 1.44% |
2019年 | 21,566.27 | 21,823.07 | 20,993.44 | 21,521.53 | -44.74 | -0.21% |
・過去10年の日経平均株価8月のパフォーマンス
平均騰落幅:−372.98円
平均騰落率:−2.61%
年 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 | 終値−始値 | 騰落率 |
2010年 | 9,574.64 | 9,750.88 | 8,807.41 | 8,824.06 | -750.58 | -7.84% |
2011年 | 9,907.04 | 10,040.13 | 8,619.21 | 8,955.20 | -951.84 | -9.61% |
2012年 | 8,622.04 | 9,222.87 | 8,513.20 | 8,839.91 | 217.87 | 2.53% |
2013年 | 13,674.50 | 14,466.16 | 13,188.14 | 13,388.86 | -285.64 | -2.09% |
2014年 | 15,511.54 | 15,628.78 | 14,753.84 | 15,424.59 | -86.95 | -0.56% |
2015年 | 20,540.21 | 20,946.93 | 17,714.30 | 18,890.48 | -1,649.73 | -8.03% |
2016年 | 16,415.31 | 16,943.67 | 15,921.04 | 16,887.40 | 472.09 | 2.88% |
2017年 | 19,907.08 | 20,113.73 | 19,280.02 | 19,646.24 | -260.84 | -1.31% |
2018年 | 22,642.18 | 23,032.17 | 21,851.32 | 22,865.15 | 222.97 | 0.98% |
2019年 | 21,361.58 | 21,556.69 | 20,110.76 | 20,704.37 | -657.21 | -3.08% |
7月は上昇しているものの、8月には急落している年が多くなっていることがわかります。8月は仕掛け的な売りに警戒が必要だといえるでしょう。
猛暑になると株価もさらに熱く
気象庁の3か月予報によれば、2020年の7~9月の平均気温は「全国的に高い」見込みです。2020年も猛暑日が増えるでしょう。
気温が上昇すると、アイスクリームや清涼飲料水、ビールの売上が伸び、消費が活発になります。またエアコンなどの売上増加も見込まれます。そのことから、気温上昇は景気に対してプラスの影響があると考えられています。
ただし、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大で外出を減らしている人が多いので、例年ほどの売上は期待できないかもしれません。
「麦わら帽子は冬に買え」
気温の上昇に伴い売上が伸びる企業の銘柄を「サマーストック銘柄(猛暑関連銘柄)」と呼び、ビールやエアコン関連株などが該当します。また、暑い日は家でゆっくりDVD鑑賞する需要も高まるので、「インドア関連」も注目です。
しかし、実際は夏になってから買うのでは手遅れです。「麦わら帽子は冬に買え」という相場格言がありますが、これは、いずれ株価が上昇するであろう好材料の株式を、まだだれも買っていない安い時期に買い占めておけば、株価が上昇したときに大きな利益になるという意味です。
・代表的なサマーストック銘柄
【ビール・飲料】
- アサヒグループホールディングス<2502>
- キリンホールディングス<2503>
- 伊藤園<2593>
【エアコン】
- ダイキン<6367>
- 富士通ゼネラル<6755>
- ビックカメラ<3048>
【インドア需要】
- WOWOW<4839>
- ゲオ<2681>
【日傘】
- ムーンバット<8115>
猛暑となった場合、株価の上昇度合いは大きくなりますが、反対に冷夏の場合には売り圧力がかかることになります。
コロナ禍の夏相場に注目
日経平均株価の過去10年間の値動きを確認すると、7月はサマーラリーで堅調ですが、8月は夏枯れで下落傾向にあります。ただ、2020年はコロナ禍で夏休みも自宅にいる人が増えると予想されるので、取引がどの程度まで活性化するか、それとも例年どおりなのか、しっかり注視したいところです。
2020年の夏も暑くなることが予想されているので、猛暑関連銘柄の動きにも注目が集まりますが、これから参戦するのではなく、これらが実際にどう動くのかを観察し、来年以降に向けた学びの夏としたほうがいいかもしれません。