値上げ効果で高値更新! 出遅れ株も後を追う! 次の主役もお見逃しなく【今月の高値更新】
《株価の新高値は、銘柄にとっての「自己ベスト」。その記録を新たに更新することは、“伸びしろ”の表れかもしれません。直近で高値更新を果たした銘柄から、いまの相場の流れを読み解きます》
3月からの上昇相場で日経平均株価は、押し目が出てもすぐに持ち直す強さが続いています。日経平均株価は6月19日に33772円を付け、34000円をうかがう場面もありました。ただ、その後はさすがに利益確定の売りも入り、いったんは調整ムードとなりました。
しかしながら、こうした相場展開では、“出遅れ”の銘柄が買われて高値を付ける間に、他の銘柄が上昇のエネルギーを貯める……というように、主役が入れ替わりながらも強い展開が続きます。
では、こうした相場で、高値を更新して相場の牽引役となっているのは、どのような銘柄でしょうか?
・「高値更新」とは?
相場解説などで頻繁に使われる「高値更新」とは、読んで字のごとく、ある期間内の高値を更新したという意味です。ここに「昨年来」「年初来」「上場来」など期間を表す言葉が添えられて、「年初来高値を更新」などと言われます。また、新たについた高値を「新高値」と呼びます。
【株価の高値更新】
- 上場来高値……株式市場に上場して以来の高値。買い方の強い物色が株価に現れているといえる
- 昨年来高値……1〜3月に使われ、前年の1月1日から直近までの期間が対象
- 年初来高値……4月以降に使われ、その年の1月1日から直近までの期間が対象
新高値と、あわせて新安値の銘柄も取り上げながら、それぞれの共通点に着目し、強気相場の特徴をひもといてみたいと思います。
値上げで収益力強化からの高値更新
インフレや人件費高騰で苦戦する企業も多いのに対し、値上げによって収益力を強化できた企業は、株式市場でも評価が高まっています。
- ダイキン工業<6367>
- コマツ<6301>
- 日立建機<6305>
- 東洋水産<2875>
- ニチレイ<2871>
空調機器のトップメーカーのダイキン工業<6367>は、6月19日に29745円を付けたのち、7月に入って3日には31330円を付けて上場来高値を更新しました。
冷媒とエアコンの技術を強みに、省エネのインバーターエアコンを新興国や欧州を展開し、業績が拡大。株価は過去10年でおよそ10倍になるなど、成長が続いています。高品質やブランド価値を背景とした値上げにより、今期も最高益更新が予想されています。
建設機械大手のコマツ<6301>も、原材料である鋼材の価格上昇などを値上げで吸収し、収益性が改善しています。株価は6月29日に3911円、7月3日に3975円を付けて年初来高値を更新しました。同業の日立建機<6305>も、6月19日の4094円に続いて7月3日には4144円を付け、年初来高値更新です。
食品メーカーでも、値上げが評価される企業が散見されます。即席麺や冷凍食品などの東洋水産<2875>は、年初から“じり高”基調が続いており、6月28日に上場来高値6695円を付けました。6月に、生麺・チルド商品などを最大で約2割値上げしました。
冷凍食品メーカーのニチレイ<2871>も“じり高”が続いています。国内では、家庭用冷凍チャーハンなどの市場が成長していることにあわせて、米飯の新工場の稼働を開始しました。海外でも、新製品の投入や効果的なプロモーションにより、シェアが拡大しています。
出遅れの中小型株にも関心
日本株への関心が高まる中、中小型株にも物色が広がっています。東証グロース市場に上場する銘柄で構成される東証グロース市場指数は、6月21日に1100ポイントの高値を付け、年初来高値を更新しました。
新興株の状況を表す指数として、報道などでは東証マザーズ指数も依然としてよく使われています。こちらも同じく6月21日に年初来高値871ポイントを付けましたが、2020年10月の高値1368ポイントから比べると、まだ4割ほど下回っています。
グロース市場では、時価総額が比較的上位の銘柄も買われています。
- JTOWER<4485>
- サイバーセキュリティークラウド<4493>
- FFRIセキュリティ<3692>
- カバー<5233>
6月に騰勢を強めた銘柄としては、JTOWER<4485>が挙げられます。6月21日に7900円まで買われて、年初来高値を更新。携帯電話の通信キャリア向け通信インフラのシェアリングサービスを提供しており、5G関連としても注目されている銘柄です。
生成AI(人工知能)ブームでネットワークのセキュリティー関連にも関心が向かい、サイバーセキュリティークラウド<4493>とFFRIセキュリティ<3692>は、6月19日にそろって年初来高値を更新しました。
月足チャートで見ると、JTOWERも含めて、数年前の高値からはまだまだ下の水準ではあるものの、グロース市場の見直しを受けて、短期での「見直し買い」が入っています。
最近人気のVチューバー関連も買われました。カバー<5253>はVチューバー事務所のホロライブプロダクションなどを運営しています。3月に新規株式公開(IPO) したばかりの若い銘柄ですが、初値は公開価格750円の2倍以上となる1750円を付けるなど上々の滑り出しでした。
その後も折に触れて買われ、6月20日に3170円を付けて上場来高値を更新しています。
消費回復で小売・外食も健闘
インフレにより原材料高や人件費が高止まりし、小売・外食の収益を押し下げています。しかし、企業によっては値上げやオペレーション変更などで収益を確保する動きも見られ、そうした銘柄に買いが向かっています。
- サイゼリヤ<7581>
- ゼンショーホールディングス<7550>
- マツキヨココカラ&カンパニー<3088>
- ツルハホールディングス<3391>
値上げしないことを宣言し、コアなファンも多いサイゼリヤ<7581>。株価は、年初から右肩上がりに上昇し、6月23日に年初来高値3780円を付けました。円安や原材料高で、4月に今期の利益予想を下方修正しましたが、売上高は上振れとなったこともあり、その後も買いが続いています。
「すき家」「はま寿司」「ロッテリア」のゼンショーホールディングス<7550>も年初から買われており、5月に今期も過去最高益となる見通しを発表すると上昇トレンドに拍車がかかりました。株価は、サイゼリヤと同じく6月23日に6514円を付け、7月に入ってからも上場来高値を更新しています。
小売ではドラッグストアも買われています。インフレからの生活防衛のため日用品の安いドラッグストアでの買い物機会が増えているためと見られます。
マツキヨココカラ&カンパニー<3088>は、6月22日に上場来高値8310円を付けました。「くすりの福太郎」などを展開するツルハホールディングス<3391>も、昨年の売り基調から一転、買いが入って6月26日に年初来高値11070円を付けています。
企業は設備投資に意欲満々
コロナ禍で先送りになっていた企業の設備投資が再開しています。さらに、AIや自動化のニーズが高まっていることも、企業の設備投資意欲を後押ししています。2023年度の企業の設備投資計画は前年比17%増の31兆6332億円となっており、初めて30兆円台に乗りました。
こうした流れを受けて、株式市場でも設備投資関連がにぎわっています。
- オムロン<6645>
- ファナック<6954>
- オークマ<6103>
- DMG森精機<6141>
自動化ロボットや制御機器のオムロン<6645>は6月16日に年初来高値9329円を付け、年初来高値となりました。FA(ファクトリーオートメーション)の制御機器で世界トップクラスのファナック<6954>も、6月19日に年初来高値5334円を付けています。
機械株も買われており、機械を作る機械である工作機械の大手メーカーであるオークマ<6103>は6月21日に、DMG森精機<6141>は6月15日に、それぞれ年初来高値をつけました。
相次ぐ高値更新の裏で新安値の銘柄も…
こうした流れの中で、反対に、新安値を更新してしまった苦境の銘柄もあります。
- スノーピーク<7816>
- コニカミノルタ<4902>
アウトドア用品ブランドのスノーピーク<7816>は株価の右肩下がりが続いており、6月21日に年初来安値1798円を付けました。
コロナ禍で急速に伸びたアウトドアブームにやや減速感が出ており、取引先の在庫が積み上がっています。5月に発表した第1四半期(2023年1~3月期)の連結決算で営業利益が73%減と振るわなかったことも嫌気されています。
複合機メーカーのコニカミノルタ<4902>は6月16日に458.2円を付けています。5月に今期の業績予想を下方修正し、売られる展開となりました。ヘルスケア事業の精密医療分野で買収した米企業の業績が振るわず減損損失を計上し、さらに、通期の配当予想を無配としたことが売りにつながりました。
相場の波をつかもう!
相場活況で新高値銘柄が増えています。
新高値を付けた銘柄に注目していると、少なからず、相場の方向性が見えてきます。6月下旬からはやや調整ムードも見られますが、日本株相場に対しての前向きな見方は国内外で続いていますので、うまく相場の波をつかむことができれば、大きな利益につながるかもしれません。