総裁選で買われた株・売られた株 新安値の半導体株は今後どうなる?【9月の高値更新】
《株価の新高値は、銘柄にとっての「自己ベスト」。それは〝伸びしろ〟の表れと言えるのかもしれません。最近ベストを更新して伸びしろを見せているのは、どんな銘柄か。直近で高値をつけた銘柄から相場の流れを読み解く【高値更新を追え!】》
9月相場を牽引した銘柄は?
9月は変動幅の幅の大きい相場展開となりました。
アメリカの景気後退への警戒感やハイテク株安などを受け、日経平均株価は9日に35,000円台まで調整。しかしその後は、米FOMCや日銀会合など中央銀行のイベントを無難に通過すると再び買いの勢いが増し、ダウ平均株価などの最高値更新が続きました。
日本株も半導体などが復調し、27日の自民党総裁選に向けて金融緩和など積極財政派の高市早苗氏が優勢との報道もあり、日経平均はおよそ2か月ぶりに39,000円を上回るまでに。
しかしながら、決選投票の末に、金融引き締めに積極的な石破茂氏が新総裁に選出されると、週が明けた30日の日経平均株価は1,900円超の下落となりました。結局、日経平均株価は3か月で続落し、前月末に比べて728円、1.88%の下落で終えました。
こうした中で高値を更新して相場の牽引役となったのは、どのような銘柄か。9月相場で新高値・新安値をつけた銘柄を振り返り、その共通点を探ります。
・高値更新とは?
相場解説などで頻繁に使われる「高値更新」とは、読んで字のごとく、ある期間内の高値を更新したという意味です。ここに「昨年来」「年初来」「上場来」など期間を表す言葉が添えられて、「年初来高値を更新」などと言われます。また、新たに付いた高値を「新高値」と呼びます。
【株価の高値更新】
- 上場来高値……株式市場に上場して以来の高値。買い方の強い物色が株価に現れているといえる
- 昨年来高値……1〜3月に使われ、前年の1月1日から直近までの期間が対象
- 年初来高値……4月以降に使われ、その年の1月1日から直近までの期間が対象
ゲームショウで関連株に関心
9月下旬にかけてはゲーム関連銘柄が軒並み新高値となりました。26~30日に開催された「東京ゲームショウ」を前に、投資家の関心が集まったためです。例年この時期にはゲームショウ開催を手がかりにゲーム関連株が盛り上がることも多く、9月のアノマリー(経験則)的な値動きとなりました。
2024年の東京ゲームショウは、44の国と地域から過去最多となる985社が出展。「ニンテンドースイッチや「プレイステーション5」などのハードに加えて、「Steam」などPCゲームのプラットフォームでも出展数が昨年より伸びを見せました。
カプコン<9697>は26日に上場来高値3470円まで上昇。足元では「モンスターハンター ストーリーズ」「ストリートファイター6」「バイオハザード Re:6」など人気タイトルの販売が伸びています。コロナ禍からの回復やインバウンド効果で「プラサカプコン」などのアミューズメント施設事業も好調です。
バンダイナムコホールディングス<7832>は27日に年初来高値3407円まで値上がりしました。
10月発売予定の「ドラゴンボール Sparking! ZERO」や来年初予定の「テイルズ オブ グレイセス エフ リマスター」など大型新作タイトルへの期待が広がっています。トイホビー事業では「ガンダムシリーズ」のプラモデルなど中高年向けの商品の販売が伸びています。
自民総裁選で政策関連に物色
27日に行われた自民党総裁選を手かがりに、9月は政策関連銘柄にも物色が広がりました。
高市氏が推進していたサイバーセキュリティー関連として、グローバルセキュリティエキスパート<4417>は27日に年初来高値6890円を更新。24日にイスラエルのサイバーセキュリティーツール「ULTRA RED」の取り扱い開始を発表したことも好感されています。
そのほか、FFRIセキュリティ<3692>も27日に年初来高値です。
また、27日当日に原発再稼働に前向きな高市氏の優勢が伝わった場面では、助川電気工業<7711>が急騰し、一時ストップ高の2367円まで値上がりして年初来高値を更新しました。原子力・火力発電所の温度制御装置などに強みを持っており、核融合発電関連銘柄としても期待されています。
しかしながら総裁選の結果を受けて、これらの銘柄は30日には反動安となっています。
これに対して、石破新総理が「防災省」の創設を目指すなど提唱していた防災関連では、消防ポンプ車最大手のモリタホールディングス<6455>が30日に年初来高値2232円まで上昇しました。災害対策として安否確認サービスなどを手がけるトヨクモ<4058>も、20日に年初来高値2281円を更新です。
中国の景気刺激策で復調
9月は中国の景気回復をテーマに、香港市場などで消費関連株が大きく上昇し、日本市場でも中国向けの売上高比率の高い銘柄が上昇する動きとなりました。下旬以降には、中国当局が金融緩和や住宅ローン金利の引き下げといった景気刺激策を相次いで発表しています。
育児用品大手で中国市場に強みをもつピジョン<7956>は27日に大きく上昇し、年初来高値1739円を更新。株価は、中国の消費低迷や原材料費による業績の押し下げで2018年高値の6650円から長らくダウントレンドにあったこともあり、中長期目線での投資家も関心を持っていそうです。
ベビー・育児用品大手の西松屋チェーン<7545>は20日に年初来高値を上回りました。中国やアジアなどでプライベートブランド(PB)商品の卸売りやECサイトでの直販を手がけています。
節約志向で買われた内需株
根強いインフレに対して消費者の節約志向が続く中、ディスカウントストアや100円ショップも買われました。
18日、米FRB(連邦準備制度理事会)が4年半ぶりに政策金利を0.5%へ大幅利下げを決定した一方で、日銀は追加利上げに前向きな姿勢をとっていることで、日米の金利差が縮小。ドルを売って円を買う動きにより円高が進行したことも、内需株にプラスに働きました。
業務用ディスカウントストア大手の神戸物産<3038>は20日に上場来高値4715円まで値上がり。11日発表の5~7月期決算は売上高が前年同期比11%増、営業利益が14%増と2桁の増収増益でした。「オニオンソテー」や「芳醇贅沢マンゴー」などオリジナルPB商品の強化、新規出店効果なども追い風でした。
100円ショップ「Watts」などを展開するワッツ<2735>は17日に年初来高値859円まで上昇しました。6日に発表した8月の月次既存店売上高は前年同月比で10%増と好調な結果。前年同月比での増加は11か月連続となります。
半導体株の一角が新安値
7月以降の相場調整で上昇を主導してきた半導体関連銘柄の一角が9月は売られ、新安値をつけるまで下落しました。半導体製造装置大手のディスコ<6146>は9日に年初来安値の31730円をつけました。同社は半導体のチップを切り離す切断装置や表面の研磨装置で強みを持っています。
半導体製造装置世界大手の東京エレクトロン<8035>も9日に年初来安値の20450円まで下落。ICパッケージで世界トップクラスのイビデン<4062>も11日に年初来安値を下回るなど、冴えない値動きが続きました。
ただ下旬にかけては、半導体メモリ大手の米マイクロン・テクノロジーが市場予想を上回る好決算を発表したことを受けて、大型株を中心に戻り相場になりました。おかげで売られていた銘柄にも押し目買いが入っています。
総選挙と米大統領選の秋本番へ
10月に入り、ようやく本格的な秋の訪れが感じられるようになりました。ここから秋本番に向けては、日銀や米FRBの金融政策、アメリカ大統領選の行方が焦点となりそうです。10月27日とされている衆議院の解散総選挙によって海外投資家の関心も高まりそうです。
今後はどんな銘柄が活躍するのか? 引き続き、高値更新・安値更新の銘柄を中心にウォッチしながら、相場の潮目を探っていきたいと思います。