株式投資で最もやってはいけない過ちとは? 一流の投資家が説く、過ちの扱い方

朋川雅紀
2025年8月16日 12時00分

《株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 実は、どちらにも「共通点」があります。30年以上の実績をもつファンドマネージャーが「一流の投資家」の条件を明かす【情熱の株式投資論】》

過ちから学ぶ

人間である以上、誰でも過ちを犯すものです。

成功する投資家とそうでない投資家との違いは、犯した過ちの扱い方にあります。良い投資家は自分の犯した過ちを記録し、そこから学ぼうとしますが、悪い投資家は同じ過ちを何度も繰り返し、そこから何も学ぼうとしません。

たとえば、株価が勢い良く上昇している銘柄に飛び乗って何度も損を出した場合、賢い投資家であれば、株価が大きく上昇している銘柄を追いかけて買うのは高確率な戦略ではない、ということをやがて悟るものです。

しかし、上値を追い続ける投資家にとっては、勝算(確率)が低いことなどはどうでもいいことかもしれません。必ず儲けにつながると信じて疑わず、そのチャンスを絶対に逃すまいとします。

何か間違ったことをしたなと思ったら、立ち止まって考えることが重要です。

どういった過ちを犯したのか、同じような過ちを二度と繰り返さないためにはどうすればいいのか、なぜそういった判断を下したのか、本当はどうすればよかったのか、といったことをじっくり考えてみるのです。

正しいことをした場合も同じです。間違ったことをした時のように、立ち止まって考えるのです。その都度ちょっとだけ「立ち止まって考えてみる」ことを習慣づけることで、投資から最大限のものを引き出すことができます。

投資における過ちとは

過ちとは、市場の見通し(方向性)を読み間違えることではありません。このことは誤解しないで欲しいのですが、市場の読みは、ざっくり確率5割の世界です。半分は当たらないと思ってください。

結果論では無いのです。結果として儲けることが出来たかどうかは関係ありません。

投資判断に関わる「プロセス」が正しく行われたかどうかが重要なのです。たとえその取引が損につながったとしても、適切なプロセスを経た判断であれば、それは過ちとは呼ばないのです。

反対に、たとえ儲けにつながった取引でも過ちを犯したと言えることもあります。

事前に決められたルールやプロセスを破ったり無視したりすることが問題なのです。マーケットから囁かれた甘い言葉についフラフラと吸い寄せられて取引をしてはいけないのです。

過ちから学ぶメリット

過ちを犯して、そこから学ぶことも投資の一部です。株式投資における過ちから学ぶメリットは数多くあります。以下に主な点を挙げます。

(1)同じ過ちを繰り返さなくなる

これは最も基本的なメリットです。プロセスを分析し、教訓を学ぶことで、将来同じような状況に陥った際に適切な判断を下せるようになります。

よくある過ちとして、

・十分な分析をせずに投資する

過去の株価チャートだけを見て投資したり、友人やネットの情報だけを鵜呑みにして投資したりした場合、市場の変動や企業の業績悪化によって損失を被る可能性があります。

・感情に左右された取引をする

株価が急騰している時に「もっと上がるかもしれない」と欲を出して買ったり、反対に、急落している時に「もっと下がるかもしれない」と恐れて売ったりすると、本来得られたはずの利益を失ったり、損失を拡大させたりすることがあります。

・リスク管理を怠る

自分のリスク許容度を超えた投資をしたり、分散投資をせずに特定の銘柄に集中投資したりすると、大きな損失を被る可能性があります。

(2)投資スキルが向上する

過ちから学ぶことは、投資スキルを向上させるための貴重な機会となります。

・市場の動き

市場がどのように変動するのか、どのような要因が株価に影響を与えるのかなどを、実体験を通して学ぶことができます。

・投資戦略

様々な投資戦略の有効性やリスクを、自身の経験を通して判断できるようになります。

・自己分析

自分がどのような投資で成功しやすいのかを理解することで、自分に合った投資スタイルを確立することができます。

(3)精神的に強くなる

投資で思い通りの結果が出ないとストレスとなりますが、それを乗り越えることで精神的に強くなることができます。

・リスクへの耐性

損失を経験することで、リスクに対する許容度が高まり、多少の株価変動に動じなくなります。

・冷静な判断力

困難な状況でも冷静に判断し、適切な行動を取れるようになります。

・自己肯定感

過ちから学び、成長することで、自分に対する自信を高めることができます。

(4)将来の成功につながる

過去の過ちは、将来の成功のための糧となります。過ちから学び、改善を続けることで、長期的な投資で成功する可能性を高めることができます。

ただし、過ちから学ぶためには、以下の点に注意する必要があります。

・過ちを認め、反省すること

自分の過ちを正当化したり、他人のせいにしたりするのではなく、素直に認め、反省することが大切です。

・原因を分析し、教訓を導き出すこと

なぜ過ちを犯したのか、何が問題だったのかを徹底的に分析し、具体的な教訓を導き出すことが重要です。

・教訓を活かし、行動を改善すること

教訓を頭の中で理解するだけでなく、実際の投資行動に活かし、改善していくことが不可欠です。

《参考記事》【株の失敗談】人には言えない恥ずかしいミス10連発

株式投資はリスクを伴うものですが、過ちを恐れずに、そこから学び、成長していくことで、長期的な成功につなげることができるでしょう。

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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